藤村シシンぶろぐ


 

2009. 10. 30
      【横浜続編:前半】黒川が我が家にやってきた
〜ドア越しの攻防!決死の「アポロン・クリュサウロス」作戦〜

※10月5日の日記から若干続いてます。 
 
――9月13日、午後6時。私は黒川と共に、私の実家の前にいた。 
…それではここで問題です。 
 
これから紳士をお招きする淑女たる私の部屋に、あってはならぬギミックは以下のうちどれか。
 
 
 1.大量のホモ小説 
 2.大量の同人誌 
 3.大量の私が描いたホモ漫画
 
 
 
――答え:全部。 
 
(しまったー…!!私の本棚…アリストテレスの『倫理学』の隣に『ケダモノは砂漠のプリンス』が突き刺さってる――!!どうする…!?どうやって隠す!?この大量のホモ小説と同人誌を!!? 
 
ケダモノが実は砂漠の王子だろうがアリクイだろうが、今はそんなの問題じゃない! 
問題はいかにして黒川にバレない場所に砂漠のケダモノを隠すかよ!! 
ああッアリストテレス先生!知恵を貸して…! 
この短時間で大量のホモ小説を隠蔽し!この最悪の危機を切り抜ける知恵を―――!!
 
 
 
【横浜続編:前半】黒川が我が家にやってきた 
〜ドア越しの攻防!決死の「アポロン・クリュサウロス」作戦〜
 
 
――そんな訳で、横浜での死闘の続きです。 
黒川さんと日本丸の前で待ち合わせた後、市内を観光し、 
「海のエジブト展」を軽くしゃぶったところで時間がまだあったので、 
 
私「黒川さん、私の家すぐそこですから、ちょっと寄って行きませんか?」 
 
黒川「!?いいんですか!?友達の家に遊びに行くなんて僕、小学生の時以来なんですけど…!!」 
 
私「はは、黒川さんらしいですね。」 
 
黒川「ちょ、ちょっと待って下さい、ご実家ですよね?ご家族の方もいらっしゃいますよね?ど、どうしよう、僕、すごい普段着だし…
変じゃありませんか!?」 
 
――変か変じゃないかで言えばそりゃあ変ですけど…全体的に…。 
…と、そんな話をしているうちに私の家へ。 
 
 
私「どうぞ上がってください。あ、私の部屋そこの階段上ったところにあるので、先に行ってて下さいね。私、紅茶淹れてきます。」 
 
黒川「お、お邪魔いたします!じゃあ、先部屋行ってます!藤村さんの部屋楽しみですねー!やっぱり女性らしく
レースのカーテンとか!かわいい縫いぐるみとか、乙女雑誌とかあるんでしょうか…」 
 
と、黒川のセリフを遠くに聞きながら、 
 
私(レースのカーテン、ぬいぐるみ、乙女雑誌!?無いよそんなもん!アイツがっかりするぞ…私の部屋、古地図とフルチンのアポロンと
ホモ小説しか…) 
 
…と、思ったところで、そう、私は私の犯した最大の過ちに気がついたのだ。 
 
 
「ホモ小説」。 
 
 
――しまった…!! 
今まで女の子しか部屋に来た事無かったから失念してたけど… 
…大量のホモ小説と同人誌が転がってる…私の部屋…!! 
 
(まずいーーーッ!!あれを黒川に見られたら絶対にマズいーーッ!!)
 
 
紅茶を放っぽり、急いで黒川の後を追い階段を駆け上がる私! 
そこで私の目に、黒川が私の部屋のドアノブにゆっくりと手を掛ける光景がスローモーションで… 
 
「やめろぉおおおーーー!!そこに手をかけたら殺すからなお前!!!」 
 
黒川「エッ?」 
 
「そのドアノブを回したらお前の尿道に鉛筆削りのカスを詰めるーーーッ!!!」 
 
黒川「エエッ!!?」 
 
一瞬黒川がひるんだ隙に、 
急いでドアの前に割り込んで、 
 
私「…すみません、黒川さん!!部屋の中に見られたら恥ずかしい…え〜っと、
ラブレターとかポエムとか日記とかがあるので、ちょっと片付けさせて下さいね!」 
 
黒川「えっ!?ラ、ラブレター!?ポエム!?」 
 
「…そ、そう!そういうのって、
夢見る乙女のトップシークレットでしょ?だから、3分待って下さい!3分!!」 
 
黒川「ちょ、ちょっと…!」 
 
…そのまま急いで部屋に入り、後ろ手で鍵をかける。 
 
部屋の中。 
 
――ラブレター。ポエム。日記…。 
 
そんなんじゃねえよ…ホモ小説だよ大量の…!!! 
 
どうする…!?
『砂漠の王子とイケナイvアバンチュール』、『砂漠の太陽と恋に焼かれて』、『ケダモノは砂漠のプリンス』…なぜか砂漠の王子がやたらいっぱい居る私のホモ小説ラインナップを…一体どこに隠す――!? 
 
私(隠せる場所なんかない…!クローゼットや棚の中はパンパンだ…!!) 
 
 
…もうどうしていいか分からず、 
ドアにもたれてボーっとしてるうちに、 
 
 コン、コン
 (←ドアをノックする音) 
 
黒川
「…あの〜…もう3分経ったのですが。まだでしょうか?その、ラブレターやポエムとやらはそんなに大量にあるんですか?」 
 
エッもう3分経った!?
やばい、何にもしてない!! 
どうする!?どう切り抜ける…!!?
 
 
私「……そうだっ!黒川さんは、紅茶淹れるのお上手でしたよね。悪いんですけど、
キッチンで紅茶淹れて来てくれませんか?」 
 
黒川「えっ、いいですけど…」 
 
私「1階のキッチンのテーブルに、ポットと紅茶が出てます。『アポロン』でも『アルテミス』でも、お好きな茶葉を吟味して淹れて下さい。それと、悪いんですけど、お湯が沸いてないんです。沸かして下さいますか?」 
 
黒川「はあ…分かりました」 
 
 
――よし!これで10分は稼げる…!! 
10分…!10分でこの大量のホモ小説をなんとか隠し切る…!!
 
 
私(どこに隠す…!?この短時間のうちに隠せる、絶対に安全な場所…!) 
 
まず私はこの方法に思い至った。 
すなわち、 
 
 
 
ホモ小説をラテン語の本の箱にしのばせ!さりげなく本棚にまぎらわす!! 
 
私(…黒川はラテン語が堪能だ…。だからラテン語の小辞典にわざわざ手を伸ばすことはないはず…) 
 
――ただ問題は、この方法を用いると結果的に本棚に本体と箱、二つのラテン語辞書が存在することになる。 
もしもその神経衰弱に黒川が気づいたら―― 
 
黒川
『…あれ?どうしてラテン語の辞書二つあるんですか?この箱の方の中身は……け、「ケダモノは砂漠のプリンス」!?』 
 
 
――ダメだ、ここはやられる!! 
二冊のラテン語辞書に奴が絶対に気付かない、とは言い切れない!こと黒川に関しては、常に最悪の事態を想定しなければ!
奴は必ずそのナナメ上を行く!!
 
 
 
私(…本棚は危険…!だったら、どこに…クッソ、もう時間もない!!早く!早く隠せる場所…それは…) 
 
それは、ここしかない…!! 
 
 
 
そう、ベッド!布団の中!!
 
 
私(黒川の性格上、人のベッドに腰かけたり寝そべったりすることは無いはず…!) 
 
そこからの私は素早かった。 
本棚の中からホモ小説と同人誌をとにかく抜き取り、それをベッドの中に入れる!入れる!! 
 
 
あらかた見られたらマズいモノを隠し終わった頃、 
――階段をゆっくりと上がってくる足音が。 
それがぴたりと私の部屋の前に止まる。 
 
 コン、コン、コン、…………ガチャガチャ。 
 
ゆったりとしたノックが3回響いた後、ドアノブが回されるが、 
まだ鍵がしまっている。 
 
――てっきり「まだですか?」という声が続くと思ったが、 
ドアの向こうから響いたのは、全く予想もしていなかった言葉だった。 
 
 
 
黒川「『…リディアの王クロイソスは、 
    かつて黄金の太刀帯びるアポロンの守護を得た。』」 
 
――…!? 
 
黒川「『…その滅びの日がやってきた時、 
    彼は黙って奴隷の身に落ちるを良しとしなかった。』」 
 
 
――……これは…
バッキュリデスの…『ディオニュソス讃歌』か!? 
かつてアポロンの守護を得たクロイソスが、焼身自殺するシーンの…!? 
 
黒川
「『…クロイソスは うず高く積み上げられた薪の上、 
    己が身に火を放つ。やおら天を仰ぎ、両手を差し出すと、』」
 
 
 
ドン!(←ドアのノック音) 
 
黒川
「『…ああ…!すべての力になお勝る神よ! 
    あなたの恵みはいずこにあるのか!! 
    レートーの息子よ、いずこにおられるのですか!!』」
 
 
ドン!ドン!! 
 
黒川
「『ああ、あああ!!どこにいる!?黄金の太刀のアポローンは!!』」 
 
ドン!ドン!ドン!! 
 
 
 
――怖ぇええええ〜〜〜〜!!!! 
開けるの怖すぎるだろーーー!!?こんなことされたらーー!!
 
 
 
私「…なるほどね…だけど、お前がそう来るのならこっちにも考えがある!!」 
 
『アポローン・クリュサウロス(黄金の太刀帯びるアポロン)』はどこか、だって!? 
黒川!その言葉!後悔させてやるわ!!
 
 
「私をその名で呼ぶのなら!あえて受けよう!!」 
 
 
 
私は急いで壁にかけてあった月桂樹の冠を取り! 
それをかぶる! 
 
 
 
そして棚の黄金の剣を取り出すと、 
それを抜刀しながら上手いこと舞いつつ ついに部屋のドアを開ける!! 
 
さあ来い!黒川!! 
 
 
ガチャリ!! 
 
――とくと見よ、月桂冠をかぶり、黄金の太刀をふりかざす完璧なアポロン姿の私を!! 
 
「ようこそ私の部屋へ!クロイソス!!」 
 
ニコッ!!
 
 
 
黒川
「あなたには…つくづく驚かされますよ…!!『黄金の太刀持つアポロン』…!くうッ…!!レースのカーテンにくまさんの縫いぐるみを期待していた僕に対して、葉っぱをかぶり剣を振り回してご登場とは… 
 
どんだけ柔軟に対応できるんですかあなたは!?
いつでも月桂冠と黄金の剣があるもんなんですか、女の子の部屋って!?」 
 
 
――ふっ…これが「アポロン・アルギュロトクソス(銀の弓もつアポロン」や 
「アポロン・キタラロエドス(竪琴を持つアポロン)」だったら私の負けだったわ。 
竪琴や銀の弓は(まだ)私の部屋にないからね! 
でも、今回は高校の文化祭で
等身大の王子様を作った時の剣が役に立った。 
 
今日はアポロンは私に味方しているようだな!黒川よ!! 
 
 
――と、そんな話をしながら、とにかくホモ小説がいっぱい詰まったベッドの周辺にだけはいて欲しくないので、黒川を奥のソファーに促す。 
 
 
 
そして黒川さんが淹れて下さった紅茶(『アポロン』だった)を飲んで少し話をした後に、 
 
黒川「あ、本棚見てもいいですか?」 
 
――来た…!! 
多分ホモ小説は全て片付けた…と思うけど、やっぱり自信がない! 
 
(…砂漠の王子が一人でも残っていたら…私の人生が終わる…!!) 
 
という内心の焦りを隠しながら、 
 
私「もちろん、どうぞご自由にご覧になって下さい。
あ、でもギリシャ関係の文献しか入ってないから、あんまり面白くないかも。」 
 
――嘘ばっかだよ!ウソで塗り固めた人生だよ!! 
さっきまで砂漠の王子がわんさか刺さってたよその本棚に!! 
 
 
そして、黒川さんといくつか本をつまみながら、 
この本は僕も欲しかった、面白かったですか。 
面白かったですよ。と言い合っているうちに、 
 
 
黒川「あの、何かオススメの文献ってありますか?ギリシャ神話関係で。」 
 
「ああ、最高の文献がありますよ。黒川さんにものすごくお勧めしたかった…ええと、これです。」 
 
そう言って差し出したのは、 
 
 
 
 
黒川「……僕のこと馬鹿にしてるんですか?」 
 
お前こそ『聖闘士星矢』馬鹿にしてんのかよ。 
 
私「…騙されたと思って、3分読んで下さい!それで星矢がどんなに魅力的か分かるから!!」 
 
黒川「ほ、本当に…!?」 
 
 
…予言してやるわ。 
私に3分くれれば!お前を聖闘士星矢の虜にできると!! 
 
――恐る恐る、といった体で 
黒川が星矢の最初の一ページを開く。 
 
 
さあ、女神の戦士の話をしよう! 
その拳は空を裂き、その蹴りは大地を割ったという、
 
 
『しかし、もはやその名はギリシャ神話の中にも存在しない幻の少年たち』、 
 
正義と勇気を持ったアテナの聖闘士の物語を!! 
 
 
後編へ続く!  
 

途中の下りってレベルEですか?
..11/3 4:21(Tue)



藤村シシン
古代ギリシャ・ギリシャ神話研究家。
高校で出会ったアニメ『聖闘士星矢』がきっかけでこの道へ。東京女子大学大学院(西洋史学専攻)修了。

◆著書『古代ギリシャのリアル』(実業之日本社)。◆ NHKカルチャー講座講師。◆2020年オリンピック採火式NHK生中継内、古代ギリシャ語同時翻訳。 ◆平成28年 東京国立博物館『特別展・古代ギリシャ』公式応援サポーター。 ◆UBIソフト『アサシンクリード・オデッセイ』公式コラボ ◆古代ギリシャナイト主催。 など。

お仕事のご依頼 euermo★gmail.com
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書籍『古代ギリシャのリアル』発売中。




★よく出てくる宿敵「黒川君」については
【黒川wiki】をご参照下さい。



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