藤村シシンぶろぐ


 

2009. 10. 5
      【後編:黒川誕生日の死闘!】『木の壁』を探せ!
〜黒川ポッターと糸杉のかんおけ〜

※昨日の日記の続きです。 
 
(→続き)…今、この日記をまとめている間も私は思う。 
 
 『横浜はアテネの姉妹都市』、 
 『約2,500年前の同じ時期に下されたアポロンの神託』、 
 『アテネの木の壁の予言』と『船』…、 
…そしてこれらすべてが
『今日、昼の3時間だけは日本丸の帆が開かれる』というイベントを指し示していること―― 
 
私は思った!これは私の最高の芸術だと!! 
だがこの時初めて、私は己の作戦の最大の欠陥に気づいたのだった。
 
すなわち、 
 
(…黒川からは私の居場所が分からないが…私からも黒川が今どこにいるか分からない――!!) 
 
【後編:黒川誕生日の死闘!】『木の壁』を探せ!  
〜黒川ポッターと糸杉のかんおけ〜
 
 
 
 
しまったー…!!黒川のポケットにさりげなくGPS付き携帯忍ばせとけば良かった――っ!! 
 
私(ただここで待っているだけだから楽だと思ったけど…!) 
 
今、ここに立ってみて初めてわかる! 
いつ黒川がここに来るかもわからない。いや、永遠に来ないかもしれない…――船がゆっくりと浸水していくようなこの恐怖感!! 
 
私(あいつ…今どこにいるんだ…!) 
 
私はその恐怖に30分と耐えられなかった。 
そしてついに最大の過ちを犯してしまったのだ。 
 
(…黒川さんに電話をかけてみよう…!!) 
 
…ピッ、ピッ、プルルル、プルルル… 
 
 
私「……あ、もしもし、黒川さん?今どこにいますか?」 
 
黒川「今は、コスモワールドという遊園地の中にいます。」 
 
私「コスモワールド…」 
 
 
                 ↑コスモワールド 
 
…対岸だ…!!この男、対岸にいる…!!! 
 
私「…へ、へえ?なんでそこに?」 
 
曰く、 
「木の壁」→「木の船」→「あの遊園地の中に、
木の船に乗って急降下するアトラクションがある!」→「これだーっ!入場料タダだし!!」 
 
黒川「で、ままよ!!と思ってそのアトラクション(→)に一人で乗って、ずぶぬれになりながら『違った…。良く見たらこれ船じゃなくて丸太だった……この先何の手がかりもねえよ…』と思っていたところです。」 
 
 
――いるわけねえじゃん!!そんなところに!!
 
 
 
私「……(…全然違うところ見てるな…)」 
 
黒川
「…その反応…。全然違うところ見てるってことですね、僕?しかもわざわざ電話で居場所を確認してきた、ということは僕が見える位置にはいない、というわけかな?」 
 
「!!」 
 
黒川「…フフフ…待っていれば必ず焦れて電話をかけてくると思いましたよ。」 
 
お前…まさか…わざと…!!? 
わざと私に電話をかけさせたのか!?ずぶ濡れのくせに!? 
 
黒川「藤村さんの悪い癖はそこですね。すぐ油断するところ。」 
 
私「そ、そういう余裕は私を見つけ出してからかましたらどうですか!?」 
 
黒川「もうすぐ見つけ出しますよ。……あなたの電話口からは風の音がしますね?
ということは、屋外だ」 
 
私「!!」 
 
プツッ!! 
 
思わず電話を切る!! 
 
――黒川怖ぇええええーーー!!!! 
ちょっと油断しただけなのに!!こんな一瞬で!私からヒントをむしり取って行くなんてー…!!ああああ黒川ぁあああーーッ!! 
ああ、いいわよ!
お望みどおり我慢比べと行こうじゃないの!! 
私はもう何もしない!! 
 
 
私はこの場所でただ待つ!もう二度と電話はかけない!!二度と!! 
 
と、芝生の上で体育すわりを決め込む私! 
 
時計の針が2時を指し、長針と短針が重なって…
2時10分、2時15分、 
2時20分……
 
 
 
私(……今どこだよあいつ…) 
 
…2時40分、 
 
私(やっぱり横浜のどこかにいる私を探し出してくれ、なんて土台無理な話だったよな…でも黒川さんならやってくれると思っていたんだ…。) 
 
……2時45分、 
 
私(……黒川さん…!) 
 
そしてもう諦めかけた
2時50分。 
ついに電話が鳴った! 
 
――プルルルルル… 
 
「!!…もしもし!?黒川さん…!?」 
 
 
黒川
「……はぁ、はぁッ!はあーっ!!まんまと、ひっかけられましたよ…ッ!!はあっ、そうだ、『横浜』と、指定したのは、僕だが、はあっ、『待ち合わせ日時』を決めたのは、僕じゃ、ない!…あなただった!!」 
 
…ってか息切れで何言ってるかほとんど分からないんだけど! 
 
黒川
『9月13日、午後1時』…!!まさか!この待ち合わせ時間に、…はぁ!意味があるとは思いませんでしたよッ!ハァ!!」 
 
「!!」 
 
 
 
黒川
「『日本丸の帆をひろげよう、9月13日』!!…これでしょ!?ハァッ!やっと分かりました!!やっと…ッ!!!ハァッ、ハァ!ゴホッ!!ハ…オエエッ!!オエェエエエエッ!!」 
 
こいつはこのまま行き倒れるんじゃないか?
 
というくらいの疲労困憊っぷりだったので、 
 
私「…分かっていただけだだけも嬉しいです!3時に間にわなくても結構ですので、ゆっくり歩いて来て下さい。」 
 
黒川
「バカ言うなッ!!まだ10分あるッ!!今駅の近く!ソッコーで行きます!!首洗って待ってろ!!!」 
 
私「…そうは言うけど…」 
 
――ブツッ!!ツーツーツー…・・ 
 
……そうは言うけど、黒川さん…! 
駅の近くからだと↓ 
 
 
 
――700メートルくらいはあるぞ!! 
しかも、これは平坦な道のりじゃない!途中ちょっとしたやぐらがあるのよ…!!そう、
 
 
 
 
日本で一番高い建物こと、ランドマークタワーが!! 
いわゆるドルアーガの塔でしょ?アイツにとっては!?
 
 
私(あいつ、この中で迷い死ぬ可能性あるわ…!) 
 
黒川は来たんですけどご遺体です、という最悪の状況を覚悟しながら、 
私は地平線の彼方を見つめ続ける! 
 
 
――そして3時を10分ほどまわったころ。 
 
 
――地平線の彼方に見える真っ黒のシミ。 
それがゆっくりと大きくなっていって、 
こちらに近づいてくる人影になる。 
真っ黒のTシャツ、 
そしてその胸元に、気持ちの悪いギリシャ語で!! 
『地獄の門はいつでも開いている』!!
 
 
 
 
(来た…!!やっとあの男が来た…!!) 
 
 
 
ケクロプスの丘と聖なるキタイロンの狭間に抱かれる土地、ことごとく敵の手に陥るとき、 
 
 
 
「…『遥かに見はるかしたまうゼウスにより賜りし『木の壁』に寄り添え』…」 
 
 
 
黒川『この木の壁こそ、アテナよ、ゼウスが汝と汝の子らを救うべく授けし唯一不落の砦となろう!!』」 
」 
 
私&黒川
「「『ああ、聖なるサラミスよ!デメテルの種が取り入れられる時、汝らは打ち倒す!軟弱なる敵どもを』――!」」 
 
黒川
「ああ!!やっと見つけた…!!」 
 
そのまま勢い安堵でくずおれそうになる黒川を私は両腕で支える。 
まだだ!まだ倒れるのは早い、黒川…!! 
 
私「――ずいぶん遅かったですね、黒川さん。」 
 
黒川「一体、どういうつもりです!!?一体、どうしてこんな…」 
 
 
………横浜観光はお楽しみ頂けましたか? 
 
黒川「…は?」 
 
私「したかったんでしょ?横浜観光。」 
 
この2時間で、黒川さんは横浜のさまざまな場所を目を凝らして見たでしょう。 
それは、私に案内されてだだらに観光するよりも何倍も濃密な時間だったはずだ! 
 
「…どう?横浜はいい街でしょ?
アポロンの奇跡をもう一度起こせるくらいに!!」 
 
黒川「…っあなたという人はぁああ〜〜〜ッ!!今回だけは僕の不戦勝だと思ったのにぃいいい!!こんな追い詰められた状況で逆転の一手を打ってくるなんて…!!ああっ、本当にあなたという人は…!!」 
 
…がっくりうなだれる黒川。 
 
黒川
「…ああ、僕は…!!青空に映える日本丸の白い帆を見て!!そしてその前に佇むあなたを見て…!!ああ、僕は…!本当に、本当に英雄アイアコスが来てくれたのかと思ったんですよ…!!」 
 
私「えっ?」 
 
――そう、アイアコスは神話上ギリシャで最も神々に愛された人間だった! 
 
だからこのサラミスの海戦の時、わざわざギリシャ人は、 
アイアコスの故郷から彼の聖像を持ってきた!! 
そして彼の像を船に乗せてペルシャと戦ったのよ!! 
 
黒川
『出航しよう!アイアコスよ、あなたを運んできた幸運な東風が、西風に変わったらすぐにでも』…!!ああ、本当に!いにしえの言い伝えのように、アイアコスが、勝利をもたらしに冥界から戻ってきてくれたのかと…!!」 
 
……それは恐縮な話だが、だとしたら黒川さん。 
アイアコスはお前に勝利をもたらすために来たのではない。 
お前を裁きに来たのだ!! 
 
 
「…実は、もう一つ黒川さんに誕生日プレゼントがあります。」 
 
黒川「…え」 
 
…お前を打ち滅ぼすためなら、 
私は地獄の果てまでも駒を進める…!!
 
 
私「ヘルメス=ゲオルグの本は手に入らなったのですが、黒川さんが欲しがっていた本を。」 
 
――そう言って、先日例のラッピングを施した本を差し出す。 
 
 
 
黒川「…!糸杉…。これは…、僕が送った糸杉の枝…!!?」 
 
私「…
『糸杉のかんおけ』です。」 
 
黒川「…あ、あ…っ、」 
 
私「
『古代ギリシャの哲学者は、死後、糸杉のかんおけで埋葬されることを恐れていた。』…黒川さん、それがなぜだかご存じですか?」 
 
黒川
「……『ゼウスの王笏が糸杉でできていたから』…!!ああ…っもちろん知っています…っ 
ああっ、だってそれを言ったのは…… 
 
僕が最も崇拝する、ピタゴラスその人なのですから……!!!」
 
 
 
 
――その場にガックリと崩れ落ちる黒川。 
 
 
……勝っ…た…!! 
ああ、勝った…!!あの追い詰められた状況から一転、私は、勝った…!!
 
 
黒川「………」 
 
 
 
――ああ、お願いだ、黒川さん!もう立ち上がるな!! 
正直もうアポロンもネタ切れなのよっ!! 
ここで立ち上がってこられたら、もう次のお歳暮とかバレンタインとかで攻撃に使えるアポロンの弾がこっちには残ってないのよ!! 
黒川さんだってそうでしょ!?
 
 
だからこのまま終わらせてくれ、お願い…!!もう立ち上がらないでくれ…!!
 
 
 
黒川
………藤村さんの誕生日って、11月でしたよね……」 
 
 
――だが彼は再び立ちあがって来たのだ。 
地獄の奥底から…! 
 
黒川
「……今回はあなたの得意分野であるところの、歴史のアポロンの真髄をたっぷり味わわせて頂きました。お礼に、次は僕の得意分野の真髄をご覧にいれましょう。」 
 
……ゴクッ。 
 
黒川
「…ご自分の誕生日までにたっぷり予習をしておくことだ。象徴哲学と神聖幾何学をね…!!」 
 
 
象徴哲学に神聖幾何学!!? 
 
もう字ヅラからしてまったく勝てる気がしねぇえええ!!
 
 
 
私「……すみません、黒川さん…やっぱり、怒ってますか?」 
 
黒川「…ええ。あなたのご期待に答えられなかった僕自身に対して。」 
 
私「え?」 
 
黒川「…船の帆、すっかりたたまれてしまいました。」 
 
 
 
黒川「…あなたは僕に2時間も猶予をくれた。なのに、僕は時間内に来ることができなかった…本当にくやしいです。」 
 
そして深々と頭を下げると、 
 
黒川
「2時間以上もお待たせして本当にすみませんでした!そして最高の誕生日プレゼントをどうもありがとうございました!!」 
 
……私、黒川さんの弱点、もう一つ発見したわ。 
いい人すぎるところ!!
 
 
 
――日記の文字制限8000字が迫ってきているので、 
補足は↓のコメント欄にて!
  
 

◆補足◆

…そんなわけで、「横浜待ち合わせ編」いかがだったでしょうか。そう、よく考えたらこれまだ横浜で待ち合わせただけだぞ!!って話だよ!

それと、挿入した日本丸の写真、帆がたたみかけ〜たたみ終わりの状態のものが多いですが、
これは、ほとんどの写真を黒川さんが来た後に撮ったからです。
それを見て改めて思いましたが…やっぱり私は信じていた!黒川さんが時間内に来ると!!(笑)

黒川さんが来た後でも帆は張られている
何の疑いも無く私は思っていた…。
でも、それは黒川さんに甘えすぎたな、と今になって感じます。

だって、横浜に一度も来たことがない人間がよ!?わずかな手がかりを頼りに人一人探せ、ってそりゃあ土台無理な話だろ、よく考えたら!
よく2時間ちょっとでたどり着いたよ!ほんとに!!

…そんな訳で、まだまだこの日の話は続きを書かせてもらいたいと思います。だって黒川の聖闘士星矢に対するツッコミの数々を書かなきゃ一生後悔するだろ!?私!!という感じで!書きたいことは山ほどあるのですが!!

でも、次回の日記はちょっと違う話になるかと思います。
と、いうのも……実は私、先日最高のアポロングッズを買いました。そしてそれが水曜日に届く!!

次回はぜひそれを!我が家にアポローンの君が降臨する様を、いや、私自身がアポロンになる様をご覧いただきたい!!
もう「アポロンといったらコレだろ!?」というアレなんだ!!!
..10/6 2:00(Tue)



藤村シシン
古代ギリシャ・ギリシャ神話研究家。
高校で出会ったアニメ『聖闘士星矢』がきっかけでこの道へ。東京女子大学大学院(西洋史学専攻)修了。

◆著書『古代ギリシャのリアル』(実業之日本社)。◆ NHKカルチャー講座講師。◆2020年オリンピック採火式NHK生中継内、古代ギリシャ語同時翻訳。 ◆平成28年 東京国立博物館『特別展・古代ギリシャ』公式応援サポーター。 ◆UBIソフト『アサシンクリード・オデッセイ』公式コラボ ◆古代ギリシャナイト主催。 など。

お仕事のご依頼 euermo★gmail.com
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書籍『古代ギリシャのリアル』発売中。




★よく出てくる宿敵「黒川君」については
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