藤村シシンぶろぐ


 

2009. 11. 3
      【決戦前夜】私の誕生日決戦・前夜
〜恐怖はヘルメスの匂い〜

…前回の「黒川が我が家に来襲編」の後篇を待って下さっている方にはすみません… 
どうやらタイムリミットが来てしまったようだ…。 
 
そう、明日、
11月4日は…私が黒川に呼び出しを受けている日…!!―― 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 
山田「…で、お前、ホントなのか?黒川に『誕生日に明けの水星(アポロン)が欲しい』っつったってのは?(※9月28日の日記参照→)』 
 
西野「俺たちの周りでもウワサになってんぞ。『あの黒川に「惑星」で勝負を挑んだ命知らずの女がいる』、って。そんなのロナウジーニョにサッカーで勝負を挑むようなもんだろ。」 
 
――…やっぱり?ロナウジーニョって結構強いの?サッカー? 
 
山田「…で、黒川とはいつ会うんだ?」 
 
私「…それが…私の誕生日は11月8日なのですが、なぜか渋谷に11月4日、と指定してきて…」 
 
山田と西野は顔を見合わせると、 
 
山田+西野
「「ヘルメスの誕生日!!」」 
 
――やっぱり!?そう思う!? 
『明けの水星』は古代ギリシャでは「アポロン」と呼ばれてたけど、 
『水星』自体は「ヘルメス」だ…。 
そして月の4日はヘルメスの誕生日…!! 
 
 
山田
「…藤村。悪いことは言わない。今すぐ黒川の手の届かない遠くへ逃げろ。「惑星」!「ヘルメス」!そんなのアレックス・ロドリゲスに野球で勝負を挑んでるのと同じだぞッ!!」 
 
西野「いや、待て山田。もう手遅れかもしれない。多分こいつはもうヘルメスに憑かれてる。
…藤村、お前さっきサイフ無くした、って言ってただろ? 
 
私「え?ええ。でも、置き忘れただけで、あとで親切な人が届けてくれて…そういえば、財布を無くしたのは人生で初めてのことでしたね。」 
 
瞬間、二人が「「た、祟りじゃぁあ〜〜!!」」とおののき、 
 
山田
『サイフを盗る』!そんなのヘルメスのお家芸だろ!!絶対黒川の仕業だぞそれ!!」 
 
 
――大学の女子トイレで落としたのよ!!? 
黒川の仕業なら窃盗犯の前に変質者でしょ!?
 
ってか黒川じゃなくてヘルメス本人だろうが女子トイレに入った時点でただの変態でしょそんな男!!
 
 
 
私「とにかく、私は逃げも隠れもしませんからね!」 
 
『アレックス・ロドリゲスに野球を挑むようなもの』だって!? 
私は野球分からないから、そのなんとかロドリゲスが何者か知りませんけど! 
どうせ多摩川の土手で一人キャッチボールしてるサラリーマンか何かでしょ!? 
 
「フン、ヘルメスでも何でも好きなだけ投げてくればいい!!アイツのへなちょこヘルメス球なんざ私が左手一本でバックネット叩きこんでやりますよ!!」 
 
山田
「いや、バックネットに叩きこんだらファールだから!お前さては野球のルール知らないだろ!?」 
 
 
西野「とにかく藤村。4日が無事終わるまで、
ヘルメス関係の場所や物には気をつけろ。墓場と水銀には近づくな。」 
 
 
別にその二つには日ごろから好き好んで近づいちゃいませんよ!! 
 
 
私「もー水銀とか言うから怖くなってきたじゃないですか…。はあああ…本当に「ヘルメス」で何を仕掛けてくるつもりなのか…。」 
 
山田「まあ、俺たちは神話とか全然専門じゃないからさ、ヘルメスの事はほとんど知らないけど…、ひとつ、これだけは覚えてる。…お前、紀元前414年の
『ヘルメス像破壊事件』を知ってるな?」 
 
私「ええ。アテナイのほとんどのヘルメス像が一晩で破壊された事件ですよね。」 
 
――そこから続く山田先輩の言葉は… 
私にとって、とても印象的な言葉だった。 
 
山田「…あの事件がきっかけで、将軍アルキアビアデスはスパルタに寝返った。それでアテナイはスパルタに負けたんだ。」 
 
私「……」 
 
山田「歴史の大局を支配していたのはアポロンの神託だ。 
   
でも、時に、遠く離れた偉大なアポロンの言葉よりも、 
   身近な道ばたに突っ立ってる小さなヘルメスが 
   歴史を変える一撃になることがある。
 
 
   
…お前も気をつけろよ。絶対に侮るな。道ばたのヘルメスを。」 
 
 
 
――ああ、本当にその通りだよ。私は絶対にあなどったりしない。道端のヘルメスを!! 
 
…11月4日。明日。黒川がヘルメスで何をしかけて来るのかは分からない。だが今夜、私がやるべきことはただ一つ! 
何をするかって?知れたことよ!!
 
 
 
 
――今から一夜漬けでヘルメスのすべてを叩き込む!! 
 
テスト前の高校生のごとく! 
「水兵リーベ僕の船」!「鳴くよウグイス平安京」!!「身の上に心配あるので参上しました」!! 
 
…この要領で今夜、ヘルメスのすべてを丸暗記だ!!
 
 
黒川の愛するピタゴラスは… 
ヘルメスの息子と謳われた哲学者だった。
ヘルメス最後の息子にして、北の国のアポロンその人だと。 
ピタゴラスは明けの明星と宵の明星が同一のものだということを初めて発見した人であり、 
ヘルメスに不死の魂をもらった人だった。 
 
 
――そんな男が専門の黒川に対して「明けの水星(アポロン)」なんてどう考えても勝ち目がないが!! 
実際、各方面から「藤村先輩、ご愁傷さまです。」、「せめて楽に死ねますように…」といった弔電が舞い込んで来てるが!! 
 
その黒川との圧倒的な実力差を加味したとしても! 
私はこう言わせてもらいたい、 
 
負けるのは私じゃない。あの男だ!!
 
 
……さあ、お前の一番得意な球を投げて来い、黒川!! 
貴様がフォークを投げようが、消える魔球を投げようが、トラベリングをしようが
必ず私が全弾打ち返す!!
 
 
 
 
――そんなわけで、これから明日の朝までヘルメスの勉強といきたいと思います。 
というか、本当にヘルメス勝負になったら分が悪すぎる…!本当にイチローに野球を挑むのと同じ! 
サッカーしようぜ、サッカー!!
という感じで…ああ…怖い! 
 
本当に明日が怖すぎていろいろと投げっぱなしで申し訳ないのですが、せめて付け焼刃でも死角は少なくしておいた方がいい。ということで、今夜は明日に備えたいと思います。 
明日また結果なり途中報告なり、多少のことを書きに戻って来れると思います。 
 
ああ…
ヘルメスと、アポロン…で仕掛けて来る、ということなんでしょうか。 
すげー怖い…でも負けたくない…!絶対に負けたくない…! 
 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
拍手ありがとうございました! 
そしてコメントもどうもありがとうございます。お返事はメニューの「re」の所です。
(〜10月20日分まで) 
その他お返事やメール等少々お待ち下さい! 
..20:11
  
 

 

2009. 11. 4
      【前篇:誕生日の復讐】手のひらの上の戦争
〜リミットは11月7日!黒川の謎かけ〜

――…かつて古代ギリシャ人は、水星を二つの名前で呼んでいた。  
夜に見える水星を「ヘルメス」、 
そして明け方に見える水星を「アポロン」と。  
 
黒川「それに相応しく、今回の戦いは
沈むヘルメスの下で始まり、昇るアポロンと共に終わりましょう。 
――二か月前、あなたは横浜という巨大な舞台を使って僕を打ち負かした。…ならば僕は、
小さな箱の中に全てを収める。 
 
 
 
――さあ、その箱を開けて下さい、そして僕とゲームを始めましょう――。」
 
 
【前篇:誕生日の復讐】手のひらの上の戦争 
〜リミットは11月7日!黒川の謎かけ〜
 
 
――そんなわけで、昨日の予告の通り!たった今黒川に会ってきました…!! 
あああ!もう…もう…っ!!山田先輩があれだけ言ってくれたのに…
「道ばたのヘルメスには気をつけろ」と…!! 
「で?どっちが勝ったの!?」…って話ですが……「まだ分からない」んだ!今もまだ戦っている!!ああ、私は今も戦ってるんだ…あの悪魔と…!!
 
 
くっそぉおおー私自身も、今置かれている状況を正確に把握したいので、 
一体どういうことなのか、順を追って説明させて頂きたい…!―― 
 
 
――11月4日、午後1時。 
 
 
 
私は黒川の呼び出しを受け、東京は日本橋にいた。 
本当は渋谷で待ち合わせの予定だったが、直前に、 
 
黒川「すみません、僕、お昼から急にバイトが入ってしまいました。なので、
渋谷じゃなくて日本橋の三越前に1時でもいいですか?」 
 
…との連絡が入ったためだ。 
 
 
待ち合わせの三越の正面玄関、ライオン像前。 
少し早く着いた私は、ここまでのなり行きを思い起こしていた――。 
 
黒川『…あなたが欲しいと言うものは、なんであろうと誕生日に必ず僕がご用意します。』 
 
私『なら私はアポロンが欲しい。古代ギリシャ人が「アポロン」と呼んだ光…すなわち、暁の空に凛然輝く「明けの水星(アポロン)」が欲しい! 
…でも、黒川さんには無理です。』
 
 
…「明けの水星」!さあ、用意できるものなら用意してみろと!!【9月28日の日記参照】 
 
 
黒川「…お待たせいたしました。」 
 
顔を上げると、こんな高級デパートの前だというのに、 
相変わらず気持ち悪い文章が書かれた真っ黒のTシャツ姿の黒川…! 
 
「……なんだ、良かった…!」 
 
昨日の話、てっきり私は黒川が『ヘルメス』で仕掛けてくる、と思っていたので、 
 
「全裸で頭に羽を付けて、右手にはステッキの
ヘルメスコスプレで走ってくるんじゃないか、と危惧していたからさあ!!」 
 
黒川「ええッ、そんなことするわけないじゃないですか!」 
 
だよね、ほんとホっとしたわ! 
と、私が安堵のため息を付くのと同時に、 
 
 
黒川「…へえ。『今日11月4日はヘルメスの日』。そこまで読めていて、 
 
……なぜあなたは、この日本橋にノコノコやって来たのですか?」
 
 
 
私「…、えっ…?」 
 
瞬間、体中の血の気が引いた。 
 
黒川
「11月4日。4はヘルメスの数。僕がヘルメスで仕掛けてくる。…そこまで分かっていながら、なぜ何の疑いもなくこの三越前にいるのでしょうねぇ、あなたは?」 
 
……え、え…? 
 
黒川
「…前回の横浜戦で、貴女は『9月13日、横浜』という日付と場所を使って僕を陥れたのではありませんか。同じことをされる、とは思いませんでしたか? 
 
なぜ疑わなかったのです?
『11月4日、日本橋』を。」
 
 
ええっ…!?ど、どういうこと…!!? 
思わず周りを見回すが、特に何の変哲もない! 
本当にただの日本橋・三越前! 
 
 
黒川「――…かつて古代ギリシャ人は、水星を二つの名前で呼んでいた。  
 夜に見える水星を「ヘルメス」、 
そして明け方に見える水星を「アポロン」と。  
 
…それに相応しく、
今回の戦いは沈む水星の下で始まり、昇る水星と共に終わりましょう。」 
 
 
「『水星』!?何言ってるんです!?今は真昼ですよ!水星なんてどこにも出ていません!」 
 
黒川
「…いいえ、ここは確かに『ヘルメス(水星)』の下です!」 
 
――そう言って黒川が指さした先。 
それを目で追った私が見たのは… 
 
 
 
……そんな……嘘でしょ…… 
 
 
 
……ああああっーー!嘘でしょぉおおおーーーッ!!?? 
 
 
 
ヘルメス…!! 
ヘルメス・クリュソラピス!! 
(黄金の杖を持つヘルメス)
 
 
 
黒川「日本橋は金融と商業の街!!どちらもヘルメスの領域…ここはヘルメスの街です!」 
 
 
↑良く見たら駅にもヘルメスの名前がついた像とかがゴロゴロしてた!!
 
 
ああっそうよ!『僕、お昼から急にバイトが入ったので、渋谷じゃなくて日本橋でもいいですか?』 
…この言葉の時に気付くべきだったのよ!! 
アイツのバイト先、日本橋の近くでも何でもねえよ!!
 
 
 
「……うわぁあああっ黒川ぁああああああッ!!!だましたなぁあああーーーッ!!!」 
 
黒川「…フフ。だが、こんな仕掛けで倒れてもらっては困る。本当の戦いはこれからです!」 
 
――そう言って彼が差し出したのは… 
 
 
 
……箱…!? 
 
 
黒川「二か月前、あなたは横浜という巨大な舞台を使って僕を打ち負かした。…でも、それならば僕は…小さな箱の中に全てを収めよう。 
  
――さあ、その箱を開けて下さい、
そして僕とゲームを始めましょう。本当の戦いをね。」 
 
…ゴクッ。 
 
私は、どんなモノが飛び出して来ようと絶対に驚かない、と決意し、 
恐る恐るこの箱を…開けた――。 
だが、その箱の中は…私の予想の中のどんな物とも違っていた。 
 
 
 
 
「……!?…何も入ってない…!?」 
 
黒川「…いいえ。その箱の中には二つの物が入っています。すなわち、『謎かけ』とそれに対する『答え』が。」 
 
私「…!?」 
 
黒川
「その空の箱自体が僕のあなたに対する謎かけです。 
 
さあ、解いてみて下さい!その箱に掛けられた『謎かけ』を!!」
 
 
 
…つまり、私にこの空き箱だけで『謎かけ』の内容を推測し、 
それに対する『答え』を導き出せ、と――!?
 
 
「そんなの…!無茶でしょ…!?
内容すら知りえない謎かけの答えを言え、なんて――!?」 
 
私はもう一度箱を見る。 
…ただの箱よ!ただの白い箱よ…!! 
 
黒川「…もちろん、今すぐ解け、とは言いません。貴女がそれを解けたら誕生日プレゼントも渡したいですから…そうですね、期限は11月7日の23時45分までです。」 
 
私「…え?私の誕生日は11月8日なのですが…『7日』?でも、3日間もくれるんですね?」 
 
――そう聞くと黒川は高らかに笑った。 
 
黒川「3日も、だって?藤村さん、これは人類が2000年かけてやっと解いた問題です。それを貴女にたった3日間で解いてもらおうというのですよ。」 
 
!!? 
 
黒川「さあ、奇跡を起こして見せて下さい。3日後、楽しみにしてます。…それじゃあ、もう僕は行きますね、バイトがあるので。」 
 
 
――ってバイトはホントにあるのかよ!!? 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 
…これが今日のお昼の出来事。 
 
そして今は…考えているわよ。 
 
 
 
もちろん、この箱が何なのかを!! 
この箱にかけられた「問い」が何なのか、そしてその「答え」とは何なのかを――!! 
 
私(分からない…!何もかも分からない…!) 
 
ただの箱よ。何度見ても何の変哲もない白い空き箱よ! 
これに「問い」と「答え」なんかあるの!? 
 
 
私(…冷静になれ…!まずは思いつく事を挙げてみよう…。) 
 
箱…四角い箱…… 
 
――4はヘルメスの数。四角形はヘルメスの形。 
そして六面体……ヘルメスは世界で初めて「サイコロ」を発明した。 
ヘルメスはアポロンのように遠い未来を視ることはできなかったが、 
サイコロを使うことで近い未来を視ることができた…。 
 
私(…
『沈む「ヘルメスの下で」始まり』。この言葉どおり確かにヘルメスづくしだ…。じゃあ『昇るアポロンと共に終わる』というのは…?) 
 
アポロン。 
 
アポロンと箱……。アポロンと空の箱…。 
…いや、何も思いつかない。彼がこの箱と何が関係があるの…? 
 
ああもう情報もヒントも少なすぎるわよ!私にはこの空の箱しか与えられていない!! 
 
 
私(…いや、待って!そうじゃない…。ヒントはまだある…「11月7日」…!) 
 
私の誕生日は11月8日。 
それをわざわざ11月7日、23時45分に指定してきた、ということは…。 
 
私(……「7はアポロンの数」?ってこと?あっ…!もしかして…!!) 
 
 
私は急いで定規を取り出して、 
箱の大きさを測った。 
 
 
 
――やっぱり!!「7センチ」!! 
やっとアポロンとの繋がりを見つけた!! 
 
「7」!「7はアポロンの数」だ!!
 
 
 
 
――なんていう手に私が引っかかるとでも思った?黒川? 
 
黒川!お前が専門のピタゴラス教においては、 
7はアポロンの数じゃない!7は…
 
 
(…アテナの数だ…!!) 
 
ピタゴラス教において、全ての数字は意味を持っている。 
7は素数。何も生み出さない数字。処女神アテナに捧げられた数…! 
 
私(もしこれがピタゴラスに関わっている事だとしたら、アポロンじゃなくてアテナの可能性がある…。) 
 
 
…冷静に黒川の思考を追おう。 
11月7日。黒川は私に3日間も時間をくれてる。 
ということは、私が今知っていることではない。今私が知りえない知識、調べなくては分からないこと。 
 
――黒川が「私が詳しくない」と思っている分野。 
なら神話や歴史じゃない。哲学や錬金術…? 
 
でもそんなにコアな事なら、3日程度じゃ答え出せないわよ私!!? 
 
私(……ちょっと待って。私、箱の外見ばかりに気を取られていたけど…
もしかして重要なのは箱の中か…!?) 
 
 
 
そうだ。「何も入ってない」わけじゃない… 
正確には…そう、「空気」が入ってる!! 
 
古代ギリシャの哲学者は「四大元素」をその性質を持つ神様の名前で呼んでいた! 
すなわち、 
 
「火」はゼウス、 
「土」はヘラ、 
「空気」はハーデス、 
「水」は……水は誰だったか忘れてしまいましたが(ごめん、確か女の神様)、 
 
…そう、この箱の中には「ハーデス(空気)」が入ってる!! 
 
ちょっと勘弁してよ!
ヘルメス、アポロン、アテナ、ハーデス、まんべんなくみんなに関係あるじゃねえかよ!!
 
 
…いや、違う!きっと考え方が間違ってる…!待って、今分かっていることを客観的に整理してみよう――! 
 
・箱は白い方眼紙で作られている。大きさは7×7×7。 
・中身は空。 
・この箱一つに対して、何らかの「問い」と「答え」がある。 
・「その問いは人類が2000年かかって解いた問題」。 
 
・私が欲しいと言ったのは「明けの水星(アポロン)」。 
・だから「沈むヘルメスの下で始まり、昇るアポロンと共に終わる」。 
・リミットは11月7日。23時45分。 
 
 
――う〜ん…やっぱり
アポロン…に関係あるかもしれない。 
ここまで7を重ねられると…。 
でも私、知らない…!アポロンと箱…!アポロンと中身の無い箱…!!そんな神話あった!? 
 
でも、アポロンだろうがヘルメスだろうが、…問題は! 
この一つの箱に対して…「問い」と「答え」があるという事!! 
「問い」と「答え」が…!! 
 
そこが一番引っかかるし、分からない…!!
 
 
 
それは…一体誰に関する問いなの!? 
誰の、何に対する問いなの!? 
 
それとも何か見落としてる!?私!?何か重要なヒントを…!? 
うわぁああああーーっ分からないわよーーッこんなのーーー!!! 
 
なんていう問題を出してくるんだ、黒川!! 
でも、答えを出してみせるわよ!11月7日までに!!!
 
 
ああ、本当に!!この箱は一体何なんだ!!? 
 
 
―そんなわけで、字数制限のため続きは↓のコメント欄にて!
  
 

◆補足◆
…ということで、今もってこの箱が何なのかは分かりません。

もし、ここまでの流れで答えが分かった方がいらしても、それは私には内緒にしていて下さい。私一人の力で!あのクソ野郎をぶちのめさなければ意味がないんだ…!!

オフのみんなからは「どう〜?黒川にコテンパンにやられたでしょ〜?」とか、「まだ生きてる?」とかいう弔電が届きましたが、

だから私は勝つんだって!!あと3日もあるのよ!?それでどんな文献も調べていい、ってんなら絶対に勝つでしょうが!!
……そんな訳で、答えが分かったらまた日記を書きに来ます。

ああ、日本橋初めて行ったのに、こんなことになるとは……。あっ、そうか!
前回、「横浜に初めて来た黒川」。そこで「日付と場所を使って攻撃した私」。
それに対して、今回「日本橋に初めて来た私」。「日付と場所を使って攻撃した黒川」――!!

なるほどね!私に意趣返しをしたわけか!!!?
うわぁああああーーーッ今気付いて腹立ってきた!!なんだアイツ!!絶対負けねえ!!絶っっ対負けたくねえ!!



…拍手ありがとうございます!コメントも大変うれしいです!!お返事少々お待ちを!
..11/5 1:07(Thu)

 

2009. 11. 6
      【途中経過】手のひらの上の戦争

※前回の話からちょっと続いてます。 
 
――今日大学に来たら、哲学の先生から、 
 
先生
「…藤村君、聞いたよ。○○大学の黒川君と、何か面白い戦いをしてるんだってね?」 
 
「エエッ!?誰からその話を!?」 
 
先生「黒川君本人から。」 
 
――そう、この先生は私も黒川も 
お世話になっている先生だったので、 
 
先生「それで、
『藤村さんが白い箱を持って何か聞きに来ても、絶対に答えないで下さい』と言われたよ、黒川君に。」 
 
私「……!!」 
 
先生「…そんな訳で、私からは君に何のヒントも与えられないんだ。ごめんね。」 
 
――いや…先生…!! 
先生のその言葉こそが最大のヒントじゃないですか…!!
 
 
「…黒川がわざわざ哲学が専門の先生の口止めをした、ということは…やっぱりあの箱は哲学に関係している、ということでしょ!? 
 
…しかも、もし先生の最大の専門が関係しているとしたら、 
それは……
 
 
「プラトン…!!」 
 
 
――先生はいたずらっぽく笑いながら、 
 
先生「まあ、公平な私としては、黒川君だけを贔屓するわけにはいかないからね。」 
 
あああーーーッ!!先生ーーッ!!ありがとうございますーーー!! 
ふふふ…貴様のその根回しの良さが仇になったな、黒川よ…!!
 
 
先生「…気を付けなよ、藤村君。
プラトンにも解けない問題はあるんだからね。」 
 
 
 
――私はそのまま急いで図書館に走った! 
もちろん、プラトン関係の文献を調べるために!! 
 
プラトン…!!哲学者プラトン!アポロンと誕生日が一緒の男!! 
ああ!プラトンが関係あるとしたら、これは…!…この箱の持ち主はおそらく…!!
 
 
(アポロンだ…!!) 
 
 
 
アポロン…!!この箱を使ってプラトンに何らかの謎かけをしたのね!? 
 
アポロンのプラトンに対する「問い」!! 
だがそれは
「人類が2000年かけてやっと解いた問題」
 
 
(…先生が「プラトンにも解けない問題がある」と言っていたことにも合致する…!!) 
 
さあ、追い詰めたわよ!! 
黒川を!アポロンを!!
 
 
あとは…そう、タイムリミットに間に合うかどうか…! 
 
タイムリミットは11月7日。明日まで!! 
今日一日に!私は全てをかける!!
 
 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
――そんなわけで、前回
「私の力だけで解くからヒントは要らない」と言っておいて、早速先生にヒントもらっちゃうという体たらくですみません…!だが!これは不可抗力だ!アポロンが私に授けてくれた神託だ!ということでお許し下さい! 
 
拍手ありがとうございます! 
コメント、大変嬉しく拝読しております。 
お返事はメニューの「re」のところです。
(〜11月4日まで) 
..19:29
  
 

 

2009. 11. 7
      【実況中!】 手のひらの上の戦争
〜私の出した答え、黒川の本当の狙い、そして〜

※昨日の日記から続いてます。 
 
【11月7日21時】 
――本当にお前は恐ろしい男だ、黒川。 
 
「この”箱”の謎を解いて下さい」、そう言ってお前は私にこれを渡してきた…。 
 
 
 
だから今の今まで私はまんまと勘違いさせられていたわ…そう、これが『箱である』と!!
 
 
違う…!これは『空き箱』なんかじゃない! 
重要なのはこれが『立方体』であるということだったのよ!! 
 
――結論から言おう!これは、この『白い立方体』は、 
 
 
 
アポロンの祭壇だ…!!
 
デロス島のアポロンの祭壇だ!! 
 
なぜこれが方眼紙で作られているのか、なぜ中身が空なのか、7×7×7、そしてこの立方体に対して『問い』『答え』がある…。それは「人類が2000年かかって解いた問題」―― 
 
今やその全てがはっきりした!黒川は…あの男は…!!
 
 
かつて最も難解と謳われたアポロンの神託を!この立方体を使って私に問いかけてきたのよ!! 
 
ああ、お前は本当に恐ろしい男だ黒川!! 
そしてアポロン!! 
 
まさか、ああっ…まさか!アポロンが歴史や哲学、音楽や美術の教科書のみならず、まさか数学の教科書に載っているとは…!! 
さすがの私も思わなかったわよ…!!
 
 
順を追って話そう!私の導き出した「答え」を!!―― 
 
【実況中】 手のひらの上の戦争 
〜私の出した答え、黒川の本当の狙い、そして〜
 
 
――かつて、古代アッティカ(アテネがある地方)でひどい疫病が蔓延した。 
そこでアテナイの人々は、デロス島におもむき、疫病の神であるアポロンに問うた。 
 
『どうすればあなたのお怒りを鎮めることができるのか。』。 
 
するとアポロンはこう答えた。 
 
アポロン
『私の祭壇を形を保ったまま倍の大きさにしろ。最も美しい方法で。』 
 
――デロス島のアポロンの祭壇は当時、 
縦横高さがすべて等しい立方体だった。 
そこでアテネの人々は、その祭壇の
各辺を二倍して祭壇を作りなおした。 
 
 
 
――だが、もちろんこの方法だと体積は8倍になってしまう。 
アポロンの怒りは一向に収まらなかった。 
 
アポロン
『私は、長さを2倍にしろと言ったのではない。大きさ(体積)を二倍にしろと言ったのだ!!それも、「最も美しい方法」で!!』 
 
↑こういうこと。 
 
――もう完全にアポロンは私のこと愛してるならじゃあヴィトンのバッグ買ってよ!!」…とムチャ言って彼氏を困らせるカノジョみたいだが、 
 
これには彼氏もといアテナイ人は頭を悩ませた。 
「立方体をその形を保ったまま2倍の大きさにする。」そんなことが可能なのか? 
しかも…
「最も美しい方法で」 
 
当時、幾何学における最も美しい解法は「作図」。 
定規とコンパスだけで答えを出す、というもの。 
 
難しい式や高度な機械を使ってはならない…それがアポロンの要求だった。 
 
ギリシャ各地から高名な数学者がやってきてこの問題を解こうとした。 
その中にはあのプラトンもいた。 
 
だが、誰ひとりアポロンのこの問題を解けた者はいなかったのだ。 
 
 
――歳月が流れ、デロス島が廃墟となって、アポロンの崇拝が忘れ去られた後も、誰ひとりとしてこの問題を解けるものはいなかった。 
 
そう、
1837年、数学者ワンツェルがこの問題を解くまでは――! 
 
 
 
…話をこの立方体に戻そう! 
そう、黒川は私にこの小さな立方体を通してこう問いかけているのよ! 
 
『私(アポロン)の祭壇(立方体)をその形を保ったままで二倍の大きさにしろ。「最も美しい方法」で!』 
 
――最も美しい方法とは「作図」! 
そう、だから黒川の立方体は方眼紙で作られていて、しかも、 
 
 
 
展開できるのよ!!!
 
 
(中身が「空」なんじゃない!「展開」するために「箱」の形をとっているんだ…!!) 
 
 
そして黒川。いや、アポローンの君。 
2000年間もお待たせいたしました!! 
今あなたが問いかけた問題に答えを出そう!!
 
 
 
『私の祭壇をその形を保ったままで二倍の大きさにしろ。「最も美しい方法」で』 
 
 
――2000年前のこのアポロンの言葉に対する、 
19世紀の数学者の答えはこうだ!!
 
 
 
「――その答えは『不可能』です。アポローンの君!!「与えられた立方体を、作図によって倍にすることはできない」!!」 
 
 
――どうだ!!? 
アポロンよ、そして黒川よ!!これだろう!?お前が求めていた答えは!? 
 
…でも、この答えが合っているかどうか、吟味しているヒマはないわよ!! 
 
なぜなら、
 
 
(もうすぐ23時45分だ――!!) 
 
そう。黒川は11月7日の23時45分に
「答えを聞きに電話をする」と言っていた。 
 
さあ、黒川よ、私の携帯を鳴らせ!! 
私の答えは完璧でしょう!?これで絶対に間違いはないはず!!
 
 
(今回もまた!私の勝ちだ!!) 
 
23時40分!! 
 
さあ、黒川!勝負だ!! 
 
私の携帯を鳴らせ!!
 
 
 
黒川との電話が終わったら、勝敗をこの下に追記します! 
 
..23:42
 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 
【11月8日 00:10】 
 
……憎しみで…… 
 
憎しみで人が殺せたら……!!! 
 
ぎゃぁあああああああああ〜〜黒川ァアアアアアーーーッ!!うわぁあああああ〜〜〜!!
 
 
あああ私は…!私は!
黒川の意図の半分も読み解けていなかった……!! 
 
黒川にとっては、私が『箱』の謎を解こうが解けまいが… 
そんなことはどうでも良かったのよ!!
 
 
本当に警戒しなければならなかったのは…『11月7日、23時45分』…!!この日付の方だったなん…ーーーっぐぎゃああああああ黒川ぁああああーーっアアアーーッ!!!!
 
 
ああ…この日付の意味をカモフラージュするために…! 
「11月4日=ヘルメスの日」、だから「11月7日=アポロンの日」…!この先入観を私に植え付けられば!箱の謎などどうでも良かったのか…黒川…!あああああーーーーッ!! 
 
すみません…!!
「11月7日、23時45分に何が起きたのか」とか… 
もう色々あるんですが…! 
もうとても今語れる状況じゃない…!! 
 
うわああああーーーッ!意味が分からない!! 
ちょっと待って…おかしい!絶対におかしい!こんなこと不可能よ!! 
 
だってそうでしょ!?私の誕生日が11月8日あること!そして私が「明けの水星(アポロン)」を欲しいと言ったこと…!!それは黒川が決めたことじゃないのよ!? 
 
なのに…『11月7日、23時45分』!! 
ああ、どうして!?どうしてこんな完璧な作戦が立てられたんだ!? 
どうして――!?
 
 
 
(…ああ、私…負、け……) 
 
黒川『…おっと。こんなところで戦意を喪失されては困ります。
僕の罠はもうひとつ残っています。』 
 
私『…!?』 
 
黒川
『僕の望みはね、藤村さん。11月4日にヘルメスであなたを負かし、11月7日にアポロンであなたを打ちのめし、そして11月8日に「明けの水星」であなたを殺すことです。』 
 
!!?どういうこと…!?まさか…まさか…もう一段階あるってこと…!!? 
そんなのもう無理よーーっ!!もう私、からがらよ!命からがら!!
 
 
黒川
『――ですが、もしあなたが僕に負けを認め、一生僕に逆らわない、と。永遠に僕のしもべになる、というのならここで止めて差し上げます。』 
 
 
――…なんだって? 
 
黒川
『…だが、もちろん僕は知っています。あなたは決してミュトス(ギリシャ神話)以外の男には仕えない。だから止めの一撃を放つしかない。 
 
――あなたの家に誕生日プレゼントを送りました。明日の朝一番に届きます。』
 
 
『な!!??』 
 
黒川フフフ。怖いでしょう?何が来るか分からない。きっと今夜は眠れないでしょうねえ…せいぜい一晩、苦しんでくださいよ。』 
 
――なんなの!?何なの!?どういうことなのーッッ!!? 
 
黒川『…でも、そんなあなたはあまりにも哀れだ。だから特別に何を送ったかお教えしましょう。 
 
−−中身はあなたの欲しがっていた「明けの水星(アポロン)」です。』 
 
 
――はあ!?どういうこと!?「水星」!!? 
 
 
黒川
『…ピタゴラス曰く。人の魂は死後、ハーデスの元で207年間苦しみ続けてから転生するそうです。』 
 
私「…!?」 
 
黒川
『…それじゃあ、さようなら、藤村さん。また207年後にね。』 
 
 
 
――そう言って電話を切られた。 
 
ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って!!どういう事!? 
私の家に水星が来るってどういうこと!!? 
 
もう家族みんなをたたき起して 
 
「みんな逃げてぇええーーー!!!明日この家の上に水星が降ってくるぅううおおおーーー!!!」
 
 
そう叫ぶしかないか!!? 
あああっ、どうしよう…
あああーー!!!! 
どうすればいいの!?誰か助けて!!誰か!!誰か!!誰か助けて!! 
何なのーーあああっ!!うわあああ…耐えられない!こんな恐怖…!!
 
 
…ちょっと待って…整理させて…全然今自分の置かれている状況が理解できない…!! 
何を語ればいいの今?何をすればいい私は!? 
誰に助けを求めればいい…!! 
 
ああ、そして…
明日私の家に何が来るの!!? 
 
色々落ち着いたら、そして朝になったら、黒川の荷物が来たら… 
 
…また追って下に追記します…!!(※命があったらの話)
 
 
..1:00
 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  
 

 

2009. 11. 8
      【続:実況中】 手のひらの上の戦争
〜日付と日時の意味、届いた荷物、そして〜

【11月8日01:30】 
 
…はあ、落ち着いてきた…。 
もう、前の記事とのテンションの差を見てくれよ…。 
どれだけ私が落ち込んでいるか分かるだろ…? 
 
――勝った、と思った。 
 
11月7日、23時45分に鳴った電話を取るまでは。
 
 
「黒川にとっては、私が『箱』の謎を解こうが解けまいが…そんなことはどうも良かった。 
本当に警戒しなければならなかったのは…『11月7日、23時45分』…!!この日付の方」 
 
――まずは前回のこの意味を説明させてほしい。 
『11月7日、23時45分に何があったのか』を! 
 
【続:実況中】 手のひらの上の戦争 
〜日付と日時の意味、届いた荷物、そして〜
 
 
 
――11月7日、23時45分に鳴った黒川からの電話。 
もちろん内容は「謎は解けましたか」。 
 
私は勝利を確信し、前回書いたアポロンの祭壇の話(数学の用語で「立方体倍積問題」というらしい)を黒川に説き、最後にこう言った、 
 
私「…だから、黒川さん。あなたの問いに対する私の答えは
『不可能』です。どう?私の勝ちでしょ?」 
 
 
――黒川は、ちょっと笑ってから… 
11月4日、私が日本橋にノコノコやって来た時と同じことを、私に聞いた。 
 
黒川
…どうしてあなたは僕の電話を無防備にとったのです?前回、横浜で、あなたは日付と時間を使って僕を打ち負かしたのではありませんか。 
『11月7日、23時45分』この日時に、どうして疑いを持たなかったのです?」
 
 
私「…えっ?」 
 
――瞬間、全身に鳥肌がたった。 
 
黒川「11月7日。この日付に何の心当たりもなかったんですか?」 
 
…まさか…7はただアポロンの数字、 
というだけじゃないのか…!?
 
 
黒川
「あなたは中世史をもっと勉強した方がいい。 
 
   ――藤村さん、半年前の5月に、あなたはアポロンとプラトンの誕生日に僕を祝ってくれたましたね。 
5月27日。確かに古代においてはそれがアポロンとプラトンの誕生日です。 
 
でもね、知らなかったでしょう? 
 
中世の哲学においては、プラトンの誕生日は11月7日です。」
 
 
 
――今日っ!!!? 
ってことは何!?中世だとアポロンも今日誕生日なの!? 
私が言うのもなんだけど、アポロンはさそり座の男じゃないぞ絶っ対!!
 
 
 
黒川
「そう、今日!!今日こそプラトンの誕生日です!そして、時計を見て下さい!」 
 
――時計!? 
 
私が時計をみると、
ちょうど11月7日から、11月8日に日付が変わろうとしている瞬間で――!! 
 
黒川
「…この言葉をあなたに言いたかった。 
   『アポロン、プラトン、(ここで日付が変わる)、そして藤村さん、お誕生日おめでとうございます!!』」
 
 
――!!!!私を…私の名前を、まさかアポロンとプラトンに並べてくれるなんて!! 
11月7日の輝かしい男たちの誕生日と!11月8日の私の誕生日!!それを…日付をまたいで並べてくれるなんて…!!
 
 
負けた、と思った。 
私にとってこんな嬉しいプレゼントは無い、と思った…!! 
アポロン、プラトン、そして藤村よ!?やばいだろ!!これは…やばいだろ…!! 
 
もう私、11月8日生まれたんじゃなくて、 
11月8日に生まれさせられたんじゃないの?黒川に?
 
 
 
――というレベルで…これは…!! 
半年前から…こうすることを決めてたんだろうか黒川は…!! 
 
(…すごい…!!こんな完璧な作戦があるの…!?) 
 
「明けの水星」、水星はアポロンとヘルメス…! 
最初の11月4日、日本橋のヘルメスの下で勝負を始めたこと! 
そして「箱」の謎…期限が11月7日だったこと! 
そして最初の「11月4日=ヘルメス」を使って「11月7日=アポロン」をミスリードしたこと…!! 
 
(一つのことが何重にも意味を持っている…でも決して相反していない…全部が奇麗に調和してる…!!) 
 
こんな完璧な作戦…!! 
 
だけど黒川は!これではまだ不足だと言う!!
 
 
 
――そう、前回書いたとおり、
「プレゼントはこれだけじゃない」 
明日、というかあと6時間くらいしたら…黒川のプレゼント・「明けの水星」が私の家に来る…!!! 
 
本当に今夜は眠れそうにない!!
 
 
ああ、悔しくて、恐ろしくて、不安で、そして嬉しくて!! 
 
今夜は眠れそうにないよ!!
 
 
 
 
そんな訳で、明日何が届いたのかは追記…! 
 
 
..2:16
 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 
【11月8日 14:30】 
 
――本当に昨日は一睡もできませんでした。 
 
…その間に色々考えたんですけど……、おそらく私は、黒川の誕生日プレゼントによって命を落とすことになるだろう。 
 
それなら私は!せめてサイトを更新してから死ぬ!! 
 
――そんなわけで!ここで人生最後のサイト更新をさせて頂きたい!!
 
 
11.8 
ギリシャ神話>まんが>「新婚初夜」(アポロン×アルテミス)
 
 
 
――今私が一番描きたいものは何かを考えた結果…、 
もうこれしか浮かばなかったのよ…!! 
 
本当に今日一晩中描いて!今描き終わったんだ!! 
さあこれで思い残すことはない…心おきなく死地へと旅立てる…!!
 
 
(私…覚悟を決めたぜ……!!) 
 
 
黒川のプレゼントは午前中には届く、って言ってたから 
もう来てるな…! 
 
断頭台への行進のごとく、一階へ降りて行き、父に、 
 
私「――私に荷物来てなかった?」 
 
父「おお、来てたけど…
なんか二人の人から来てるよ。」 
 
――ん!!?「二人の人」!? 
 
 
「お、送り主は!?だ、誰と誰!?」 
 
「え〜と…アポロン様とハーデス様から。」 
 
 
――誰だよ!!? 
いや、もちろんその二人は知ってるけど!でも誰だよ!!?
 
 
アポロン!!ハーデス!!? 
どうなっちゃってんの!?
どういう選挙区だよ!?私どっちも選べないわよ!!
 
 
 
――ちょっと待って、おそらく
「アポロン」で送ってきたのは黒川だろ… 
でも「ハーデス」っていうのは…どこのどいつだ…!!? 
 
そこで初めて、私は自分の携帯にメールが入っていることに気づいた。ハーデス様からの 
 
『愛しきペルセポネー、そなたの元に我が眷族より、黒き箱が届く。』 
 
 
――それはハーデス様、もとい日頃お世話になっている「SECRET BASE」の星彦さんからのメールだったのだ…!! 
 
…ええっちょっと待って…! 
黒川さんと星彦さんは別に裏で示し合わせたわけじゃないでしょ!? 
偶然!?偶然二人して宅急便を今日!!「アポロン」、「ハーデス」で私に送ったって事!?
 
 
(…殺しに来てる…!!なにか得体のしれない巨大な存在が私を殺しに来てる――…!!) 
 
 
パッと袋の中身をのぞいたら、 
 
黒川さんのは白い箱、 
そして星彦さんのは黒い箱―――。
 
 
 
(…ゴクッ。) 
 
――一体全体、これから何が始まるんだ…? 
どういう方法で私を絶命させるつもりだ、アポロン!?ハーデス!?
 
 
 
 
さあ、いよいよ!!その中身を開けます!! 
 
中身は追記!! 
..15:19
 
 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  
 

はじめまして!いつも楽しく拝見しています。
続きが気になって、昨夜からもう何度も…(笑)。
黒川さんのファンになってしまいそうです!(笑)。
藤村さんがご無事でありますように…!
..11/9 23:01(Mon)

 

2009. 11. 9
      【前編:結果報告】手のひらの上の戦争〜「明けの水星」の正体〜

――…今こうして喋っているのは私こと藤村シシンですけど、ビジュアル的に想像してほしいのは道路に落っこってるセミの死骸ですよ…。 
 
やられたよ。完全に。
 
 
――「実況する」とか言って、すごく遅くなってしまったわけですが…つくづく私は思い知らされた…。「実況」なんてものは、興奮していても、心のどこかに冷静さがある時にしかできない。 
真に興奮した忘我の境地では!どんな言葉も出てこない!! 
 
――何が届いたと思う? 
ああ、あの日!11月8日に!!…黒川から一体何が届いたと思う!?
 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 
【11月8日15:20】 
 
(…これは…どういう事なの…!?) 
 
 
 
――何もかも同じ!! 
黒川から届いた包みに入っていたのは…!そう、『箱』!この3日間、私が何度も見て、触って、そしてこれが何かを考えてきた――『立方体』! 
色も、形も、大きさも!何もかも同じ!!
 
 
だが一つだけ前と違ってる! 
それは……
 
 
(…空っぽじゃない…!?中に何か入ってる――!!) 
 
 
ああっどういう事なの!? 
この立方体がアポロンの祭壇である事は…!ただのミスリードだったんでしょ!?
「11月7日23時45分」の意味を隠すための!! 
 
『箱』じゃなくて実は『立方体』、というミスリード、 
そしてその
『立方体』『アポロンの祭壇』だという謎そのものもミスリードだった、 
 
――でもそのミスリードさえもミスリードだという事…!?
 
 
(…お前は…本当に恐ろしい男だ、黒川…!!) 
 
…ああ…何が入っているというんだ…!? 
この『箱』の中に…!!
 
 
 
 
黒川『あなたが欲しがっていた
「明けの水星(アポロン)」を送った。』 
 
私(――黒川はそう言ってたけど…!!「明けの水星」…!?) 
 
…ゴクッ。
 
 
水星の光で焼き尽くされることを覚悟しながら、 
私は… 
 
その箱を開けた。
 
 
「…!!」 
 
…一瞬、光り輝くものが目に入って…
 
 
私「……これは…」 
 
 
――そう、『立方体』の中から出てきたものは… 
 
 
 
また『立方体』!…それも、光り輝く! 
光の立方体…!!
 
 
そして箱の中に黒川からの手紙、 
 
 
『「明けの水星」というには少し輝きが足りませんが。 
  お誕生日おめでとう。』
 
 
 
「あ…ああ…!!」 
 
――「11月4日=ヘルメスの日」を使って「11月7日=アポロン」のミスリードを誘ったこと、 
そして「箱」の謎を使って
「11月7日23時45分」に私に電話をかける口実を作ったこと、 
 
だけどヘルメスの日も!アポロンの祭壇も! 
ただのミスリードのための道具じゃなかった!!
 
 
「うわ…うわああああ…」 
 
なぜなら、私が最初に欲しいと言ったのは「明けの水星」!! 
水星は
「アポロン」「ヘルメス」の二つの名前を持っている、 
 
11月4日はヘルメスの日、7日はアポロンの日、 
立方体はヘルメスの形であり、かつアポロンの祭壇の形…!
 
 
 
 
これこそが『明けの水星』!!『明けの水星』だったのか…!! 
 
「うわああああーーーーッ!!!!」
 
 
…最初から最後まで何もかも一直線に繋がってる!! 
11月4日にヘルメスの下で会った時から、今まで!何もかも!何もかも!! 
無駄な要素が一切ない…!! 
 
上等の織物のごとく、すべての糸が完璧に織り合わさって、 
至上の模様を描き出してる…!!
 
 
(こんなことが可能なの…!?ただの人間に!!こんな完璧な作戦が立てられるの――!!?) 
 
 
――そして、最後に私からこの言葉を加えさせてもらいたい…。 
これまで、何度も黒川と戦ってきて、手ひどい攻撃をなんども喰らってきたけど、 
 
月桂樹や糸杉…、黒川さんからのプレゼントで、最終的に私が喜ばないものは何一つとしてなかった。 
 
それは今回のこの綺麗なペンダントでもそう!!
 
 
 
――私にどんな致命的な攻撃を食らわせても、最終的にはこんな優しいものをくれる!! 
 
こんなことをされたら!! 
私はこう言うしかないんだ!!
 
 
 
「…黒川さん……ありがとう……」 
 
 
人生の喜びここにあり!って感じの敗北感だ!! 
 
「黒川さん!!ありがとう!!」
 
 
私は急いでこの言葉を黒川本人に伝えようと、 
電話をかけた。 
 
――だがまさかこの直後、最高のオチが用意されていようとは、私自身まったく予期していなかったのだ。 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 
次回に続く! 
 
..6:03
  
 

 

2009. 11. 10
      【後編:結果報告】手のひらの上の戦争
〜「アポロンの祭儀を本気で・黒川Ver」、ハーデス様からの勝利〜

――もしもあそこで終わっていたら。 
 
もしもあの完璧な「明けの水星」で終わっていたら! 
 
完全に私の負けだったのに……黒川さん…!!
 
 
――そんなわけで、
黒川からのプレゼント・「明けの水星」が何だったのか 
という話は前回のご報告の通りです。 
 
…だけど、この話はここで終わらない。 
この話には私自身まったく予期していなかった続きがあったのだ――!!
 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
【11月8日15:25】 
 
……プルルル、…ガチャ、 
 
私「あ?もしもし?黒川さん?プレゼント届きました!『明けの水星』、どうもあり…」 
 
黒川『――遅い!!あんまり遅いから風邪ひいちゃうとこでしたよ!』 
 
――へ?「風邪」…??? 
 
黒川『貴女からの電話をお待ちしておりました。
実はもう一つ僕からプレゼントがあるんです。それを今から実演してさし上げましょう。』 
 
私「は…!?プレゼント?実演…!?何?どういうこと?」 
 
黒川『…藤村さん、あなた前に何度か
アポロンの祭儀を本気でやったことがある、と仰っていましたね。』 
 
私「…え?ええ…」 
 
黒川『だが、アポロンは降臨しなかったし、神託も聞こえなかった。それは何故だか分かりますか?』 
 
――何故って…。 
本当にアポロンが出てきたり神託が聞こえたりしたら 
医者の処方箋がいるでしょうが。私に。
 
 
黒川『…その理由はこうです。アルテミスの神殿に女しか入れないように、
アポロンの祭儀も男しか執り行うことができなかったからです!!』 
 
私「……」 
 
――……ちょっと待って、この流れ… 
何かすごく嫌な予感がしてきたのですが……。
 
 
黒川『残念なことにあなたは女だ。アポロンを呼び出せるはずがない。だが僕は男です!!僕なら召喚できる!アポロン本人を!! 
 
――そんなわけで!今からあなたに代わって僕が!アポロンの祭儀を執り行いたいと思います!!』
 
 
 
――私の嫌な予感、見事的中!! 
 
 
黒川『…フフフ、そんなわけで僕はさっきから花冠かぶって白装束であなたの電話を待っていたというわけです。』 
 
「…
「白装束」?黒川さん、白い服なんて持ってましたっけ?」 
 
黒川『持ってません。なので今は白のトランクス姿です。』 
 
――じゃあ何!?今頭に花かぶってパンツ一丁って事!!? 
被選挙権のあるイイ歳ぶっこいた大人が部屋で何やってんの!!?
 
 
 
(だからさっき「風邪ひいちゃう」って言ったのか…!)そ、そんな馬鹿げた姿でアポロンの祭儀を!?黒川さん!お願いですから考えなおして下さい!!」 
 
黒川『…フフフ…いざアポロンの姿を拝めるとなると、怖いんですね?藤村さん?』 
 
怖いのは今のお前の姿だよ!! 
っていうか電話口で声しか聞こえないのが惜しい―ー!! 
見てえーー!!そのパンツ一丁花かんむり姿――!!
 
 
 
黒川『今、部屋に貴女に渡したのと同じアポロンの祭壇を用意しました。』 
 
 
↑これね。 
 
黒川『――といっても、僕は実際の祭儀にはあまり詳しくないんですが…まず最初に同席者に向かってこう言うんですよね?
「この祭儀の場にいるのは誰か!?」』 
 
私「
『多くの善良な市民!!』――って思わず決まりの返しをしてしまったが!!そうじゃなくて!黒川さん!考えなおして下さい!!」 
 
黒川『祭儀が始まったら主催者以外は口をはさめませんよ。…次は?
祭壇の周りに水をかけるんですよね?』 
 
「!違う!まずは火を焚いて!!」 
 
――ってなんで私は協力してるんだ…!
 
黒川が「分かりました」と答え、数秒後、電話口から、 
 
…カチッ、カチカチカチ…ボワ!! 
 
――この音は…コンロ? 
神聖なアポロンの火を、貴様…コンロで?
 
 
私「……その後、
水、麦の順で祭壇にふりかけて…」 
 
黒川『……「麦」?麦は僕の部屋にはありませんね…しょうがない、この小麦粉で代用して、あとは水をかける…』 
 
ドザーーッ!ドザドザ!ジャバジャバジャバ!!
 
 
「うわー!?そんなに掛けなくてもいい――ッ!!手で振りかけるだけでいいの!!水と小麦粉ってパンでも作るつもりか貴様!?」 
 
ええい、もう私が言うまでお前は何もするな!!
 
 
 
 
私「…次は、その火に犠牲獣をかけて下さい!アポロンの場合は
です。」 
 
黒川『牛?そんな高級食材が一人暮らしの学生の部屋にあるわけないでしょう。』 
 
私「…じゃあ豚でも鶏でもなんでもいいです。とにかく肉を…」 
 
黒川
『…僕はここ3日くらいキュウリしか食べてません。キュウリじゃダメですか?』 
 
アポロンはカマキリか何かか!!? 
食べないよキュウリなんか!!
 
 
ああっもう!しょうがない…!私が用意する!! 
ちょうどウチの昨日の夕食のおかずが唐揚げだったんだ…!! 
 
 
↑アポロンだからサービスでソーセージもつけちゃう! 
 
私「…犠牲獣は火であぶらなければならない。そんなわけで、私が唐揚げをチンしている間、他にやるべき事をやって下さい。」 
 
黒川『…他にやるべき事、とは?』 
 
「決まってます!――”歌って”!!」 
 
黒川
『…ア、アァアアア〜〜♪アポローンの君〜〜♪』 
 
「”踊りながら”!!」 
 
黒川
『アァアアア〜〜♪アポローンの君〜ア〜〜〜♪』 
 
――ドッタン!!バッタン!! 
 
 
…お、お願い…ッ黒川さん…!! 
 
今すぐこの電話をテレビ電話に切り替えてくれ…!!! 
 
見たい…!!猛烈に見たい…!! 
パンツ一丁で頭に花を咲かせた男が、歌いながら舞い踊る、致命的に馬鹿げた姿を――!!
 
 
 
「ぶわはははははーーーッ!!!」 
 
黒川『笑わないでくださいっ!こっちは真剣なんですよ!!―
ンア〜〜♪アポロ〜ン♪』 
 
ヒィーーッ!!もうだめ…!! 
腹筋が…!腹筋が壊れる…ッ!!
 
 
 
私「…つ、次は…アポロンへの言葉です…!!
”アポロンの職能”と、”自分とアポロンの関係”を言って下さい…!!」 
 
黒川
『――フォイボス・アポローンよ!髪うるわしきレートーの輝ける御子、月桂樹の間から宣り告げる神よ!! 
――僕は、あなたの祭壇をデロスに建てし英雄テセウスの子孫、…とは何の関係もない赤の他人ですが!!あなたにお願い事があってお呼びたていたした!!』
 
 
私「最後に
”アポロンへのお願い事”を!」 
 
 
――黒川は一体何をアポロンに言いたいんだ? 
と思ったら… 
 
 
黒川
『…今日は僕の!僕の大切な友人の誕生日です!!』 
 
私「!!」 
 
黒川
『…僕の友人は!最近いろいろと悩んでいるようですが!!どうかフォイボス・アポローンよ、あなたの予言の力で言って下さい、「何も心配ない」と!! 
 
彼女はいつも「私は神話に不誠実なことをしてしまった」とか! 
「神話にまっすぐ向き合えない」とか言っているが!! 
 
アポローンよ、彼女が愛するアポローンよ! 
あなたのその確かな言霊でどうか彼女に伝えてほしい!! 
「いつでも私がついている」と!「何も心配することはないんだ」と!!』
 
 
「………!!」 
 
く、黒川さん……!! 
 
 
黒川「………」 
 
私「……」 
 
黒川「……」 
 
私「……」 
 
黒川「……すみません、やっぱり、アポロンは来ませんでしたね。」 
 
 
――そりゃあパンツ一丁で歌い踊ってるド変態男の六畳一間になんかアポロンが来るはずないよ。 
 
黒川「…う〜ん…何がいけなかったんでしょう?」 
 
――むしろいけなくなかった要素が一つでもあった?今までのくだりで? 
米粒に寄って来るスズメじゃあるまいし、エサをまけばやって来るわけじゃないよ、アポローンの君は! 
 
 
私「それに古代ギリシャじゃ11月も8日を過ぎれば冬ですから、アポロンはギリシャを去っています。
いくら電話かけたってアポロンは圏外ですよ。」 
 
黒川
『それを最初に言って欲しかった。』 
 
私「…だけど…」 
 
 
―ああ、だけど、ずっと今まで言えなかった言葉を 
言わせて欲しい!!
 
 
「…フォイボス・アポローンよ!いつも変なTシャツ着てる私の大切な親友に!こう伝えて下さい!! 
『ありがとう』と!『本当にありがとう』と!!『大好きだ』と!!」
 
 
私は伝言板じゃないんだが… 
というアポロンの言葉が聞こえそうですが、
 
とにかくちょっと恥ずかしくなって私はそのまま電話を切った。 
 
うわあああ嬉しかった!ああ〜本当にうれしかったーーっ!! 
本っ当に嬉しかった…!!! 
 
 
…だが、喜んでる場合じゃない。 
プレゼントはもう一つあった。そう、ハーデス様から来たこの黒い箱が――!! 
 
 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
【11月8日15:50】 
 
――そう、ハーデス様こと、「SECRET BASE」の星彦さんからやってきたこの箱―ー! 
 
私(もうダメだ…もう今日私、一回死んでるし…!たとえ中身が食べかけのキュウリとかでも嬉しくて死んでしまう…!!) 
 
…そして、ゆっくりと箱のふたに目を落とした私が見たもの。 
 
 
 
――
『蜜のように甘いざくろの実の粒を、ああ、美しきペルセポネーよ、 
   私はそなたに食べさせる。ひっそりと秘めやかに。』
 
 
 
…こ、こんなことを書かれて開けられると思う!!? 
”ザクロの実を食べたら冥界から永遠に戻れなくなる”あのペルセポネーの神話を知っていて!! 
私がこの箱を開けるとでも思うのか!!?
 
 
 
――開けるはずがない、そんな誘いに乗るはずがない。 
 
だが、私はこのペルセポネーの神話を一つ見誤っていた… 
 
ペルセポネーがザクロの実を食べたのは、食べたかったからでも、ハーデスにそそのかされたからでもない。 
禁じられていたから食べたのだ。
 
 
――私は誘惑に負け、その箱を開けてしまった。 
そして中から出てきたのは…… 
 
 
 
赤い6粒の石。 
 
(…ザクロの実…!?でもおかしい!ペルセポネーが食べたザクロの実は7粒だったはず!!1、2、3、4、5、6…6つしかない!あと一粒は!?) 
 
――私が探していた最後の一粒は箱の底にあった。 
が、そのザクロの粒は「石」ではなかった。
 
 
7粒目のザクロは――!! 
 
 
 
サンタ・マリア・ノヴェッラの「ザクロの香水」――!!? 
まじかよぉおおおおーーーー!!!
 
 
ちょっと待って!!こんなの…こんなの本当にハーデス様がペルセポネー様に贈るヤツじゃん!! 
ちょっと待ってよぉおおおーーー!!急いで蓋を開けて匂いを嗅ぐと…! 
あああーーーッこんなのハーデス様の匂いだよぉおおおーーッ!!
 
 
 
そして、添えられたメッセージカードに 
 
  『お誕生日おめでとうございます。 
 「富める者」より祝福をあなたに。』
 
 
 
――ありがとう…、なんか私、目ぇ醒めたわ。 
 
ついさっきまで黒川の行為を賞賛してしまっていたが… 
今冷静に思い返してみれば…
 
 
…黒川…アイツ、パンツ一丁で歌って踊ってたぞ。 
 
何だろう…私は勝負には負けた。だが、人間としてはあいつに勝った。
 
 
あの、最も狭義の意味での変態街道爆進中のあいつから比べれば…私はまだ真人間の部類だ…!! 
 
勝った…!!私は勝ったのだ…!黒川に…!!
 
 
 
ハーデス様、いや星彦さん…!私を目覚めさせてくれてありがとう!! 
 
ああ!楽人オルフェウスは!! 
ディオニュソスに「俺とアポロン、どちらが最も偉大な神か?」 
 
――と問われ、
「アポロンだ」と答えてディオニュソスに惨殺されたが!! 
私はこう答えさせて頂きたい!! 
「ハーデス様だ」と!! 
 
アポロンでもディオニュソスでもない! 
ハーデス様だ!! 
もっとも偉大な神は!!
 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 
字数制限が来たので、後記は↓のコメント欄にて! 
..9:14
  
 

◆補足◆

――そんなわけでどう思う?私は黒川に勝ったの?負けたの?

「明けの水星」までだったら完璧黒川の勝ちでしたよね。
だけど、最終的にパンツで舞い踊った時点でアイツの自滅で、私の逆転勝利だろ!?

ほんと黒川のあの祭儀は何だったの!?そのくだり要らないだろ!!と敵の私ですら思った。
でも、黒川いわく、

黒川『僕の誕生日当日に、アポロンの祭儀をして下さったので、そのお礼に。』

(※8月20日の日記参照)

――本当に意趣返しをするんだな、お前さんは…。という感じです。
そして黒川さんのアポロンごしの私への言葉はきっともっと嬉しいことを言ってくれていた…と思う。でもあまりの事に私は記憶が…飛んでしまいました。すみません。こんな言葉じゃなかったんだよ。もっともっと嬉しい言葉だったんだ。

改めて最高のプレゼントをありがとうございます。
黒川さん、そして星彦さん!!
加えて、星彦さんの箱のハーデス様のお言葉は、ギリシャ語が堪能な「ルーズリーフ」のふたばさんの監修ということで…!ここで厚く御礼申し上げます!!


――そんなわけでいかがだったでしょう、今回の対決。
ああ…長かった…本当に長かった…!!

私の誕生日という大変わたくし事で申し訳ありませんでした。が、少しでも楽しんで下さっていたら、ボコボコにやられた私も本望です。

そして、コメントや拍手をくださった方、どうもありがとうございました!

..11/10 9:38(Tue)

 

2009. 11. 23
      <神話まんが ×3> 家庭の事情。

※超重いです。 
 
家庭の事情:1〜レト家の場合〜 
 
 
 
アポロン「…私、もういいや…ご馳走さま…」 
 
レト「あっ、アポロン!またキュウリ残して!だめじゃない、ちゃんと食べなきゃ!」 
 
アポロン
「嫌だ。こんなもんは鈴虫の食うもんだ!!もう、いつまでも子供扱いしないで下さい、母さん!」 
 
レト
「あなたはどうしてそういつも反抗的なの!お隣のヘルメス君はもっと良い子にしてますよ!」 
 
アポロン
「はぁ!?ヘルメス!?アイツ全然いい子にしてないよ!この前だって親に隠れてエロ本読んでたぞ!!」 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 
――家族が全員女、しかも
処女神が与党というこの最悪の家族構成で、果たしてアポロンはうまくやっていけてるんだろうか…。 
おそらく世界最高レベルのガールズトークに全く入っていけてないんじゃないか!?―― 
 
アパイア「アルテミスお姉さま、ちょっと胸大きくなってません?」 
 
アルテミス「…そうかしら。でも、ヘカテー叔母さんの方が全然大きいわよ。」 
 
ヘカテー「そんなことないよ。同じくらいだって。どれ?ちょっと触らせて」 
 
アルテミス「ちょっと叔母さま!揉まないで!ふふ、くすぐったいわー!」 
 
 
アポロン「………。」 
 
 
でもいつも他の連中から「お前の家族、姉ちゃんも妹も叔母さんも母さんも美人で羨ましいぜー!なんかエロ本の設定に出てきそうなハーレム環境だよな!エローい!」とか言われて「全然そんなことない!!実際私の立場になってみろ!!地獄だぞ!!」 
 
って怒ってそうじゃないか!アポロン!? 
 
 
――ちなみに、一般的に「レトの子ら」はアポロンとアルテミスだけですが、 
今回はせっかくなので、「そこにアパイアも含まれる」というアイギナ島の地方神話を採用しました。 
 
アパイアは
「見えない光」の女神で、アイギナ島でしか信仰されていない女神。 
つまり正直パッとしない無名の女神ですが、実はある点でアテナとポセイドンに匹敵するレベルの重要性をもっていたのだ!! 
 
というのも、古代で夜にエーゲ海の上からギリシャ本土を見ると! 
アテネのパルテノン神殿、スニオン岬のポセイドン神殿、そしてアイギナ島のアパイア神殿の明かりが
三角形を描くように配置されてて、船乗りたちの目印になっていたという…あー見てみたいね!!そんな光景!! 
 
そしてマンガの中のアパイアの言葉、
「クレタ島の変な男に9か月間も追いまわされた」…この「変な男」とは冥界の裁判官・ミノスのことです。こんなのがヘカテー姐さんにバレたら逆さ吊りにされそうだが、 
 
それじゃあ次にこのミノスの家庭の話を。 
 
 
家庭の事情:2〜ミノス家の場合〜 
 
 
 
ミノス「あんなショボイ男がこの俺の娘のムコだなんて絶ぇえええーーっ対許さん!!」 
 
ラダマンテュス「…しかし兄上…相手は
酒神ディオニュソス。不完全ながら、一応神ですよ。敵に回すと後々どんなしっぺ返しが来るか…」 
 
ミノス「ラダマンテュス!
俺はかつてあの海神ポセイドンを何度も敵に回した!だがどうだ、俺を見てみろ!ピンピンしてるだろうが!!」 
 
ラダマンテュス
「してません。我々はもう死んでます。」 
 
ミノス「とにかく嫌なものは嫌なのだ!!
いいか、この俺はな!かつて世界で初めて海軍を組織し!その軍事力でポセイドンをも脅かした男だ!!俺自身も『弓を射る姿はアポロンのごとし』とよく謳われたもんだ!! 
 
その勇敢で雄々しいこの俺に!この偉大な俺の娘のムコにだ!! 
あんな剣も持ったことがない、ロバにも乗れない女々しい馬の骨が来るなんて死んでも許さんッ!!」
 
 
 
みんな
「「「だからお前はもう死んでるんだって!!」」」 
 
 
タナトス「だいたいディオニュソスはペルセポネー様の養い子!だから、ハーデス様もあいつのことは目にかけておられる。いくらショボイからって手荒なマネは許さんぞ!」 
 
ミノス
「黙れ死神ごときが!!前々から貴様ら神には言いたいことがあったのだ!いいか、俺はミノア人だ!ギリシャ人ではない!!だから貴様らギリシャの神どもに仕える筋合いはこれっぽっちも無いわ!!分かったら口を出すな死神風情が!!」 
 
タナトス「う、うわ〜〜ん!ハーデス様ぁああ〜〜!!」 
 
 
ハーデス
(…誰でもいいから…仕事してくれ……) 
 
 
 
――多分ミノスとディオニュソスはタイプが全く違うので、婿・舅同士としては上手く行かないだろうなあ、と! 
ミノスはもちろんミノア人で、ギリシャ人じゃないから、「ギリシャ人」が語る「ギリシャ神話」の中では悪者として書かれがちですが、それでもミノスは相当カッコ良く見える!! 
 
強くて雄々しくて、自信家でさ! 
彼が烈火のごとく怒ったら、もうギリシャのどの都市も逆らえなかった。 
 
そして
ミノスに屈しなかったのはただ一人、アイアコスだけ!という! 
この構図も
「ギリシャ人の代表=アイアコス」と、「異民族の代表=ミノス」の対立のイメージで本当に面白いですね!! 
 
そして、その対立してた二人が今では冥界で仲良く裁判官やってる、という…この流れ!最高だろ!! 
 
この二人を裁判官に選ぶとは、 
ハーデス様の人材採用の目は確かだったと思う!! 
やっぱりいつも人間を裁いてるから人を見る目はあるとみた! 
 
多分当時世界で最も「いい男」だったはずだ!! 
アイアコスとミノスは!!
 
 
…と、話の流れがいつも通りのハーデス讃歌になってきたので、 
 
最後にハーデス様が息子のようにかわいがってるであろう、甥っ子の話を。 
 
 
家庭の事情:3〜アレスの場合〜 
 
 
 
 
…アレスはゼウスとヘラの子、の他に
クロノスとヘラの子、というバージョンがあるので絡めてみました。 
本当にクロノスとヘラの子だったら、ゼウスの言葉
「アレス、私はお前が神々の中で一番嫌いだ。」も、そりゃあそうだろうな、と納得できちゃうな。 
 
アレスは複雑な家庭環境ですが、それと同じくらいかそれ以上にブッ飛んでる環境のハーデス様からしたら、放っておけない甥っ子なんだろうなあ!きっと!! 
 
そして、ちょっとアポロンに話を戻すと、 
 
「あのアレスでさえ、戦いを忘れ、アポロンの琴の音色に聞き惚れる。」とか、「あのアレスも槍や血よりもアポロンの歌を好む。」という文句があるが、こんなのアポロンからしたら最高の褒め言葉だろ!! 
 
どんな美辞麗句を並べられるより、アレスに 
「アポロン、この前の歌の続き聞かせてくれ!気になって眠れねえよ!」とか、「なあ、さっきの歌、もう一回聞かせてくれ!!」とか目をキラキラさせて来てくれた方が、アポロンは嬉しいんじゃないか!! 
 
アポロン
「…アレス、私は貴様のiPodでも何でもないのだ。貴様にしょっちゅう歌ってやるほど私もヒマではない。」 
 
…とかなんとか言いつつ、 
アレスが大好きな歌を聞かせてあげちゃう。 
そんな二人が理想です!! 
 
 
そして、アフロディーテからは 
 
アフロディーテ「…アレス?私を置いてどこに行くつもりなの?」 
 
アレス「アポロンのとこ。アイツの歌の続きがどうしても聞きたいんだ」 
 
アフロディーテ
「は?アポロン?何よ、貴方あんなひねくれ男の歌なんて聞きたいの!?あんなねじれ放題ねじくれて砂糖がかかったパンみたいな男の歌が私といるよりもいいって言うの!?」 
 
アレス「…アフロディーテ」 
 
アフロディーテ「…歌が聴きたいなら…あなたの耳元で、私が朝までずっと歌ってあげるわ」 
 
アレス
「……悪いけど…お前の歌とアポロンの歌とじゃ全然比較にならないよ。」 
 
 
――つってアフロディーテにバリバリ引っ掻かれてて欲しいね!アレス!! 
 
 
そしてアフロディーテも同じ人妻仲間のペルセポネーに、 
 
アフロディーテ
「ちょっと聞いてよ、ペルセポネー!!アレスったら私よりアポロンの方がいいって言うのよ!!浮気よ!完っ全に浮気だわ!!今度こそ別れてやるわーっ!うわーーん!!」 
 
ペルセポネー「…アフロディーテ、落ち着いて…」 
 
アフロディーテ「私、さんざんアレスに尽くしてあげたのよ!!アレスの●●●を×××してあげたり!!アレスの出した△△△を■■■してあげたり!!」 
 
ペルセポネー「えっ!!?」 
 
アフロディーテ
「ハーデスだってあんたに俺の○○を××して欲しいとか言ってくるでしょ!?」 
 
 
――そんな話になって、 
 
ペルセポネー「…(私、ハーデスに○○を××して欲しいとは一度も言われたことないわ…やっぱり私…愛されてないのかも…)」 
 
で、冥界に帰ってから 
 
ペルセポネー
「…ねえ、ハーデス。私、あなたの○○を××してもいい?」 
 
 
…つってハーデスを鼻血の海に沈めるペルセポネー。 
そんな二人が理想です!! 
 
 
――と、なんだか久しぶりにギリシャ神話の話がたっぷりできて楽しかったです! 
 
 
 
そうそう、前回黒川さんにボッコボコにやられてしまいましたが、 
もちろんこのままやられっぱなしの私じゃないぜ。 
 
安心していい。 
今年中にはあの男を消す。
 
 
復讐の「芽」は、すでに私の部屋の中で着々と育っている…まさに文字通りの意味でな…! 
 
フフフ…今後一生、クリスマスツリーを見るだけで恐怖で失禁するほどのトラウマをあの男の魂に刻みつけてやるわ…。
 
 
 
そして、ちょっとオフで頑張りたいことがあるので…と言ってもまあ、オンでもオフでも私が頑張りたいことはギリシャ神話くらいしかないわけですが(笑)、12月上旬まで更新鈍ると思います。 
 
でも拍手のお返事とつなビィくらいはコンスタントに書きますぜー 
 
そんなわけで、 
拍手ありがとうございます!! 
コメントも大変励みになっております。 
お返事は11月8日分まであります。  
 



藤村シシン
古代ギリシャ・ギリシャ神話研究家。
高校で出会ったアニメ『聖闘士星矢』がきっかけでこの道へ。東京女子大学大学院(西洋史学専攻)修了。

◆著書『古代ギリシャのリアル』(実業之日本社)。◆ NHKカルチャー講座講師。◆2020年オリンピック採火式NHK生中継内、古代ギリシャ語同時翻訳。 ◆平成28年 東京国立博物館『特別展・古代ギリシャ』公式応援サポーター。 ◆UBIソフト『アサシンクリード・オデッセイ』公式コラボ ◆古代ギリシャナイト主催。 など。

お仕事のご依頼 euermo★gmail.com
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書籍『古代ギリシャのリアル』発売中。




★よく出てくる宿敵「黒川君」については
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2009. 11. 23 <神話まんが ×3> 家庭の....
2009. 11. 10 【後編:結果報告】手のひらの....
2009. 11. 09 【前編:結果報告】手のひらの....
2009. 11. 08 【続:実況中】 手のひらの上....
2009. 11. 07 【実況中!】 手のひらの上の....

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