エペメリス・シシナス・フジムラス


 

2009. 11. 10
      【後編:結果報告】手のひらの上の戦争
〜「アポロンの祭儀を本気で・黒川Ver」、ハーデス様からの勝利〜

――もしもあそこで終わっていたら。 
 
もしもあの完璧な「明けの水星」で終わっていたら! 
 
完全に私の負けだったのに……黒川さん…!!
 
 
――そんなわけで、
黒川からのプレゼント・「明けの水星」が何だったのか 
という話は前回のご報告の通りです。 
 
…だけど、この話はここで終わらない。 
この話には私自身まったく予期していなかった続きがあったのだ――!!
 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
【11月8日15:25】 
 
……プルルル、…ガチャ、 
 
私「あ?もしもし?黒川さん?プレゼント届きました!『明けの水星』、どうもあり…」 
 
黒川『――遅い!!あんまり遅いから風邪ひいちゃうとこでしたよ!』 
 
――へ?「風邪」…??? 
 
黒川『貴女からの電話をお待ちしておりました。
実はもう一つ僕からプレゼントがあるんです。それを今から実演してさし上げましょう。』 
 
私「は…!?プレゼント?実演…!?何?どういうこと?」 
 
黒川『…藤村さん、あなた前に何度か
アポロンの祭儀を本気でやったことがある、と仰っていましたね。』 
 
私「…え?ええ…」 
 
黒川『だが、アポロンは降臨しなかったし、神託も聞こえなかった。それは何故だか分かりますか?』 
 
――何故って…。 
本当にアポロンが出てきたり神託が聞こえたりしたら 
医者の処方箋がいるでしょうが。私に。
 
 
黒川『…その理由はこうです。アルテミスの神殿に女しか入れないように、
アポロンの祭儀も男しか執り行うことができなかったからです!!』 
 
私「……」 
 
――……ちょっと待って、この流れ… 
何かすごく嫌な予感がしてきたのですが……。
 
 
黒川『残念なことにあなたは女だ。アポロンを呼び出せるはずがない。だが僕は男です!!僕なら召喚できる!アポロン本人を!! 
 
――そんなわけで!今からあなたに代わって僕が!アポロンの祭儀を執り行いたいと思います!!』
 
 
 
――私の嫌な予感、見事的中!! 
 
 
黒川『…フフフ、そんなわけで僕はさっきから花冠かぶって白装束であなたの電話を待っていたというわけです。』 
 
「…
「白装束」?黒川さん、白い服なんて持ってましたっけ?」 
 
黒川『持ってません。なので今は白のトランクス姿です。』 
 
――じゃあ何!?今頭に花かぶってパンツ一丁って事!!? 
被選挙権のあるイイ歳ぶっこいた大人が部屋で何やってんの!!?
 
 
 
(だからさっき「風邪ひいちゃう」って言ったのか…!)そ、そんな馬鹿げた姿でアポロンの祭儀を!?黒川さん!お願いですから考えなおして下さい!!」 
 
黒川『…フフフ…いざアポロンの姿を拝めるとなると、怖いんですね?藤村さん?』 
 
怖いのは今のお前の姿だよ!! 
っていうか電話口で声しか聞こえないのが惜しい―ー!! 
見てえーー!!そのパンツ一丁花かんむり姿――!!
 
 
 
黒川『今、部屋に貴女に渡したのと同じアポロンの祭壇を用意しました。』 
 
 
↑これね。 
 
黒川『――といっても、僕は実際の祭儀にはあまり詳しくないんですが…まず最初に同席者に向かってこう言うんですよね?
「この祭儀の場にいるのは誰か!?」』 
 
私「
『多くの善良な市民!!』――って思わず決まりの返しをしてしまったが!!そうじゃなくて!黒川さん!考えなおして下さい!!」 
 
黒川『祭儀が始まったら主催者以外は口をはさめませんよ。…次は?
祭壇の周りに水をかけるんですよね?』 
 
「!違う!まずは火を焚いて!!」 
 
――ってなんで私は協力してるんだ…!
 
黒川が「分かりました」と答え、数秒後、電話口から、 
 
…カチッ、カチカチカチ…ボワ!! 
 
――この音は…コンロ? 
神聖なアポロンの火を、貴様…コンロで?
 
 
私「……その後、
水、麦の順で祭壇にふりかけて…」 
 
黒川『……「麦」?麦は僕の部屋にはありませんね…しょうがない、この小麦粉で代用して、あとは水をかける…』 
 
ドザーーッ!ドザドザ!ジャバジャバジャバ!!
 
 
「うわー!?そんなに掛けなくてもいい――ッ!!手で振りかけるだけでいいの!!水と小麦粉ってパンでも作るつもりか貴様!?」 
 
ええい、もう私が言うまでお前は何もするな!!
 
 
 
 
私「…次は、その火に犠牲獣をかけて下さい!アポロンの場合は
です。」 
 
黒川『牛?そんな高級食材が一人暮らしの学生の部屋にあるわけないでしょう。』 
 
私「…じゃあ豚でも鶏でもなんでもいいです。とにかく肉を…」 
 
黒川
『…僕はここ3日くらいキュウリしか食べてません。キュウリじゃダメですか?』 
 
アポロンはカマキリか何かか!!? 
食べないよキュウリなんか!!
 
 
ああっもう!しょうがない…!私が用意する!! 
ちょうどウチの昨日の夕食のおかずが唐揚げだったんだ…!! 
 
 
↑アポロンだからサービスでソーセージもつけちゃう! 
 
私「…犠牲獣は火であぶらなければならない。そんなわけで、私が唐揚げをチンしている間、他にやるべき事をやって下さい。」 
 
黒川『…他にやるべき事、とは?』 
 
「決まってます!――”歌って”!!」 
 
黒川
『…ア、アァアアア〜〜♪アポローンの君〜〜♪』 
 
「”踊りながら”!!」 
 
黒川
『アァアアア〜〜♪アポローンの君〜ア〜〜〜♪』 
 
――ドッタン!!バッタン!! 
 
 
…お、お願い…ッ黒川さん…!! 
 
今すぐこの電話をテレビ電話に切り替えてくれ…!!! 
 
見たい…!!猛烈に見たい…!! 
パンツ一丁で頭に花を咲かせた男が、歌いながら舞い踊る、致命的に馬鹿げた姿を――!!
 
 
 
「ぶわはははははーーーッ!!!」 
 
黒川『笑わないでくださいっ!こっちは真剣なんですよ!!―
ンア〜〜♪アポロ〜ン♪』 
 
ヒィーーッ!!もうだめ…!! 
腹筋が…!腹筋が壊れる…ッ!!
 
 
 
私「…つ、次は…アポロンへの言葉です…!!
”アポロンの職能”と、”自分とアポロンの関係”を言って下さい…!!」 
 
黒川
『――フォイボス・アポローンよ!髪うるわしきレートーの輝ける御子、月桂樹の間から宣り告げる神よ!! 
――僕は、あなたの祭壇をデロスに建てし英雄テセウスの子孫、…とは何の関係もない赤の他人ですが!!あなたにお願い事があってお呼びたていたした!!』
 
 
私「最後に
”アポロンへのお願い事”を!」 
 
 
――黒川は一体何をアポロンに言いたいんだ? 
と思ったら… 
 
 
黒川
『…今日は僕の!僕の大切な友人の誕生日です!!』 
 
私「!!」 
 
黒川
『…僕の友人は!最近いろいろと悩んでいるようですが!!どうかフォイボス・アポローンよ、あなたの予言の力で言って下さい、「何も心配ない」と!! 
 
彼女はいつも「私は神話に不誠実なことをしてしまった」とか! 
「神話にまっすぐ向き合えない」とか言っているが!! 
 
アポローンよ、彼女が愛するアポローンよ! 
あなたのその確かな言霊でどうか彼女に伝えてほしい!! 
「いつでも私がついている」と!「何も心配することはないんだ」と!!』
 
 
「………!!」 
 
く、黒川さん……!! 
 
 
黒川「………」 
 
私「……」 
 
黒川「……」 
 
私「……」 
 
黒川「……すみません、やっぱり、アポロンは来ませんでしたね。」 
 
 
――そりゃあパンツ一丁で歌い踊ってるド変態男の六畳一間になんかアポロンが来るはずないよ。 
 
黒川「…う〜ん…何がいけなかったんでしょう?」 
 
――むしろいけなくなかった要素が一つでもあった?今までのくだりで? 
米粒に寄って来るスズメじゃあるまいし、エサをまけばやって来るわけじゃないよ、アポローンの君は! 
 
 
私「それに古代ギリシャじゃ11月も8日を過ぎれば冬ですから、アポロンはギリシャを去っています。
いくら電話かけたってアポロンは圏外ですよ。」 
 
黒川
『それを最初に言って欲しかった。』 
 
私「…だけど…」 
 
 
―ああ、だけど、ずっと今まで言えなかった言葉を 
言わせて欲しい!!
 
 
「…フォイボス・アポローンよ!いつも変なTシャツ着てる私の大切な親友に!こう伝えて下さい!! 
『ありがとう』と!『本当にありがとう』と!!『大好きだ』と!!」
 
 
私は伝言板じゃないんだが… 
というアポロンの言葉が聞こえそうですが、
 
とにかくちょっと恥ずかしくなって私はそのまま電話を切った。 
 
うわあああ嬉しかった!ああ〜本当にうれしかったーーっ!! 
本っ当に嬉しかった…!!! 
 
 
…だが、喜んでる場合じゃない。 
プレゼントはもう一つあった。そう、ハーデス様から来たこの黒い箱が――!! 
 
 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
【11月8日15:50】 
 
――そう、ハーデス様こと、「SECRET BASE」の星彦さんからやってきたこの箱―ー! 
 
私(もうダメだ…もう今日私、一回死んでるし…!たとえ中身が食べかけのキュウリとかでも嬉しくて死んでしまう…!!) 
 
…そして、ゆっくりと箱のふたに目を落とした私が見たもの。 
 
 
 
――
『蜜のように甘いざくろの実の粒を、ああ、美しきペルセポネーよ、 
   私はそなたに食べさせる。ひっそりと秘めやかに。』
 
 
 
…こ、こんなことを書かれて開けられると思う!!? 
”ザクロの実を食べたら冥界から永遠に戻れなくなる”あのペルセポネーの神話を知っていて!! 
私がこの箱を開けるとでも思うのか!!?
 
 
 
――開けるはずがない、そんな誘いに乗るはずがない。 
 
だが、私はこのペルセポネーの神話を一つ見誤っていた… 
 
ペルセポネーがザクロの実を食べたのは、食べたかったからでも、ハーデスにそそのかされたからでもない。 
禁じられていたから食べたのだ。
 
 
――私は誘惑に負け、その箱を開けてしまった。 
そして中から出てきたのは…… 
 
 
 
赤い6粒の石。 
 
(…ザクロの実…!?でもおかしい!ペルセポネーが食べたザクロの実は7粒だったはず!!1、2、3、4、5、6…6つしかない!あと一粒は!?) 
 
――私が探していた最後の一粒は箱の底にあった。 
が、そのザクロの粒は「石」ではなかった。
 
 
7粒目のザクロは――!! 
 
 
 
サンタ・マリア・ノヴェッラの「ザクロの香水」――!!? 
まじかよぉおおおおーーーー!!!
 
 
ちょっと待って!!こんなの…こんなの本当にハーデス様がペルセポネー様に贈るヤツじゃん!! 
ちょっと待ってよぉおおおーーー!!急いで蓋を開けて匂いを嗅ぐと…! 
あああーーーッこんなのハーデス様の匂いだよぉおおおーーッ!!
 
 
 
そして、添えられたメッセージカードに 
 
  『お誕生日おめでとうございます。 
 「富める者」より祝福をあなたに。』
 
 
 
――ありがとう…、なんか私、目ぇ醒めたわ。 
 
ついさっきまで黒川の行為を賞賛してしまっていたが… 
今冷静に思い返してみれば…
 
 
…黒川…アイツ、パンツ一丁で歌って踊ってたぞ。 
 
何だろう…私は勝負には負けた。だが、人間としてはあいつに勝った。
 
 
あの、最も狭義の意味での変態街道爆進中のあいつから比べれば…私はまだ真人間の部類だ…!! 
 
勝った…!!私は勝ったのだ…!黒川に…!!
 
 
 
ハーデス様、いや星彦さん…!私を目覚めさせてくれてありがとう!! 
 
ああ!楽人オルフェウスは!! 
ディオニュソスに「俺とアポロン、どちらが最も偉大な神か?」 
 
――と問われ、
「アポロンだ」と答えてディオニュソスに惨殺されたが!! 
私はこう答えさせて頂きたい!! 
「ハーデス様だ」と!! 
 
アポロンでもディオニュソスでもない! 
ハーデス様だ!! 
もっとも偉大な神は!!
 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 
字数制限が来たので、後記は↓のコメント欄にて! 
..9:14
  
 

◆補足◆

――そんなわけでどう思う?私は黒川に勝ったの?負けたの?

「明けの水星」までだったら完璧黒川の勝ちでしたよね。
だけど、最終的にパンツで舞い踊った時点でアイツの自滅で、私の逆転勝利だろ!?

ほんと黒川のあの祭儀は何だったの!?そのくだり要らないだろ!!と敵の私ですら思った。
でも、黒川いわく、

黒川『僕の誕生日当日に、アポロンの祭儀をして下さったので、そのお礼に。』

(※8月20日の日記参照)

――本当に意趣返しをするんだな、お前さんは…。という感じです。
そして黒川さんのアポロンごしの私への言葉はきっともっと嬉しいことを言ってくれていた…と思う。でもあまりの事に私は記憶が…飛んでしまいました。すみません。こんな言葉じゃなかったんだよ。もっともっと嬉しい言葉だったんだ。

改めて最高のプレゼントをありがとうございます。
黒川さん、そして星彦さん!!
加えて、星彦さんの箱のハーデス様のお言葉は、ギリシャ語が堪能な「ルーズリーフ」のふたばさんの監修ということで…!ここで厚く御礼申し上げます!!


――そんなわけでいかがだったでしょう、今回の対決。
ああ…長かった…本当に長かった…!!

私の誕生日という大変わたくし事で申し訳ありませんでした。が、少しでも楽しんで下さっていたら、ボコボコにやられた私も本望です。

そして、コメントや拍手をくださった方、どうもありがとうございました!

藤村シシン ..11/10 9:38(Tue)


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ギリシャ神話、古代ギリシャ史、
そしてアポロンを追い求めています。

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