藤村シシンぶろぐ

2009. 3. 22       【結果編・後半】ホワイトデーは死の香り！黒川からの３倍返し 〜ハーデスが愛した××〜 | 黒川さん登場回 | ※前日の日記からの続きです！！    一応、折りたたんでおきますので、続きは、「続きを読む」をクリックしてどうぞ。    →続きを読む     →後編。  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・    「アポロンが愛した男、死んで植物になった」…！    …まさか…！！ああっ、まさか！！    「アポロンが愛した男、死んで植物になった」…！！    あああ―――違うっ！！ヒヤシンスだけじゃない！！  それはヒュアキントスの神話だけじゃない―ー！！  間違えた…！！うわぁっうわああああーー！！間違えたァアア――ッ！！！    ああっ、今、思い出した！！  アポロンと糸杉の神話を！……      ……ケオス島の美少年キュパリッソス。  この少年をアポロンはことのほか愛した。    ある日キュパリッソスは、自分の大切な牡鹿を  誤って自分の手で殺してしまう。    少年はその亡骸のそばで嘆き続けた。  少年を愛するアポロンが、どんなにか慰めの言葉をかけたことだろう！  死んだ者より自分の体を大切にすることだ、とどんなに諭したことだろう！  しかしキュパリッソスは耳を貸さなかった。    キュパリッソス「僕はこのまま永遠に嘆いていたい！永遠に悲しみに暮れていたい！！」    ――アポロンは彼の願いを聞き届けた。  少年の額にかかっていた髪が、硬い梢となり、体は星空を仰ぐ高い幹へと変わる。  アポロンはため息をつくと、悲しげにこう言った。    アポロン「これから先、お前は墓のそばに立ち、永遠に死者を悼み続けよ。…お前への哀悼は私がしよう。」        キュパリッソス――ギリシャ語で「糸杉」。      …どうして！どうして私は今までこんな大切な神話を思い出せなかったんだ！？  「アポロンが愛した男」！…植物になったのはヒュアキントスだけじゃない！キュパリッソスもじゃないか…！！    ああーーー！！どうして！！ああーどうしてだーーっ！！  お前は大バカ者だ――っ！！藤村シシンーーッ！！    …とにかく、確認のため黒川に電話！！      黒川『…そうです、それは糸杉ですよ。』    あなたは、僕の前で何度か「糸杉が欲しいんだ」、と言っていましたね。  「ハーデス様のご神木だから」と。  だが、あなたは一度も「アポロンが愛した少年だから」とは言わなかった。    …そこで僕は思ったんです。  もしかして藤村さんは…忘れているのではないか…？  糸杉＝ハーデスの木、という想いがあまりにも強すぎて、  打ち消されてしまっているんじゃないか…？    糸杉はアポロンが愛した木だということを。      黒川『あなたのハーデスへの愛が、アポロンに対する感覚を曇らせた！！本当にハーデスよりもアポロンが大切なら、その神話を忘れるはずがない！    言ったでしょう、あなたは絶対にハーデスを取る、と！  そして、あなたは僕とのゲームが始まるずっと前から、アポロンよりもハーデスを選んでいた！！』      ギャァアアアアーーー！！！！  謀ったなァアアア―〜黒川ぁあああ”ーーっ！！  ヒヤシンスはミスリーディングだったんだな！！  ギリシャ神話は私の専門だ！その専門分野で私に！！そんなブラフを仕掛けてくるなんて…！！        黒川『フフフ…藤村さん、僕の勝ちですね！！』    …ちょっと待って。やっぱそれは違う。    冷静になって考えたら…私は間違っていない。  というのも、もし古代ギリシャ人がこれと同じゲームを仕掛けられても…やっぱりアポロンではなく、ハーデスを選んだはずだからだ！！    そもそも、アポロンと糸杉の神話は、古代ローマ時代以降に盛んに語られたもの。  古代ギリシャ人自体はその神話をあまり好まなかった。  なぜならば、糸杉とは嘆きの木。ギリシャのアポロンは決して嘆かない。    ”アポロンが好まれるのは歌と踊り。  嘆きと悲しみはハーデスの受け持ち。”  ――この詩の一編が示すように！      その上、ギリシャでのアポロンとキュパリッソス（糸杉）の繋がりは極めて薄いものだ。  この二人が同じ祭儀で祭られていたといういかなる伝承もない。  ヒュアキンティア祭で共に祝われていたアポロンとヒュアキントスとは違う！    私「だから、「糸杉」と言われて、アポロンが思いつかないのは当然だ！！古代ギリシャでは、糸杉は第一にハーデスに捧げられた木だったんだから！！    ―私は全然負けてない！むしろ勝った！！私は勝ったのだ！！」      黒川『な…！！あなたって人は…どこまで往生際が悪いんですか！？』    私「……」    黒川『だいたいあなたは…！』    私「……。」    黒川『……藤村さん…？』    私「…。………」    黒川『……もしかして……泣いてるんですか…？え…っ！？ええ…っ！！？す、すみません！僕のせいですか！？」      あのねえ…ここで泣かなかったら私、人間じゃないよ。    だってこれ…      糸杉だよ。  こんなものを本当に送ってくる人がいるの…？    「この前せっかく黒川さんに月桂樹もらったし、神話に出てくる植物コンプリートしたいんだよね。ハーデス様の糸杉は絶対ムリだけどさ〜」    …確かに、私はお前の前でそう言った…。    だけど、本当に送りつけてくる奴がいるか！？  糸杉だよ！！？  ああ…っもう、私どうにかなりそうよ！！      っまさか本当に私の家にハーデス様の糸杉が来るなんて！！  あああ…こんな…！こんなことが…！！    本当に、私の家のピンポンを鳴らしたのはハーデス（糸杉）だった。  私に引導を渡したのは…ハーデスその人だった！！  私にとって、これ以上の喜びはない！これ以上の幸せは！！      私「うわぁあ〜〜ん！！黒川さん――っ！！やってくれましたね…っ！！本当に…あなたって人は…！！あああ…ありがとう！！本当にうれしいっ！！」    黒川『いえいえ！ホワイトデーは三倍返しが基本でしょう！』    ホントこいつこのまま行くと次はペルセポネー様の神獣のコウモリとか送りつけてくるんじゃねぇの！？    私が夜目を覚ますと天井にびっしりコウモリが…  ってことになるんじゃねぇの！？  先に言っておくけど私、ペルセポネー様と違って、  「コウモリって、ハーデスに似ててなんかカワイイ」  とかいう審美眼持ってねぇかんね！！？      黒川『そうですか。では次はアポロンの神獣のグリフォンを送ります。』    あーもうこれが冗談なのか本気なのか分かんねぇーから怖ェんだよ、黒川は…！！      それとね、糸杉とアポロンで思い出したことがあるんだが…。  ギリシャに旅行に行った時にさ、  デルフォイのアポロンの聖域に…すさまじくデッカイ糸杉が立ってたんだけど…    ↑根元のアポロン神殿の柱と比較してみてくれ。とんでもなくデカイことが分かる。    …あのさ、今回頂いた糸杉はこんなにデッカくなりませんよね！？  なんか葉っぱのシルエットがアポロン神殿のヤツにソックリなんだけど、これ違うよね！？    品種名「スカイロケット」って、すっごく天に向かってニョキニョキ伸びそうな名前だけど、違うよね！？      黒川『僕もなめられたものですね。…僕が何の意味もなく「スカイロケット」を選んだと？まさか！    ―一番アポロン神殿に生えてた奴に形状が似ててなおかつグングン伸びるらしいからそれにしたんですよ！！』      ……お前、ホンット覚えておけよ。次の８月のお前の誕生日。  私とお前、どちらかが倒れるまでこの戦いは収まりつかないからな！！        そんなわけで本当に、本当にありがとう、黒川さん！！    そして…ごめんね、アポロン…      私、負けちゃった…  アポロンが愛したひとを忘れてしまっていたなんて…。    ギリシャに行った時…  今でも墓場の周りには必ず糸杉が立っていた。  でもそれは糸杉がハーデス様の木だからじゃなかった。    アポロン「キュパリッソス、これから先、お前は墓のそばに立ち、永遠に死者を悼み続けよ。…だが、お前への哀悼は私がしよう。」    アポロンのこの言葉があったからだった！！  ああ…！本当にごめんっアポロン！！    黒川ほどの男に打ち負かされるなら本望だが、  約束する、アポロン、あなたが愛した人にかけて、  絶対に次は負けない！！        ↑最後に集合写真！！  糸杉と月桂樹、ミント、水仙の夢のコラボ…！！  ここまで来るとむしろヒヤシンスも欲しい！！（笑）      …そんなわけで、ここまでお付き合いくださった方、本当にどうもありがとうございました！  報告を楽しみにして下さっていた方には、遅くなってすみません！！  いや〜まさか本当に糸杉が来るとは思っていなかったので…  そして、今この糸杉をどこに置くかでとんでもなく困っている…。  やっぱり大地に植えた方がいいのかな…。      以下、ちょっと書き切れなかったことのまとめです。    ◆黒川は、私が「バレンタインにチョコをあげますよ」と言った時点で、お返しは糸杉にしようと決めていた。  最初は、ストレートに「ハーデスのご神木です」と言って送るつもりだったが、私のチョコが実はテオファジーだったことを受けて、作戦変更。    黒川「ちょっとイジワルして『アポロンが愛した人です』と言って渡すことにしました。」    私、最強に余計なことしたわ…。      ◆↑にも書いたように、宅配便の「お届け先欄」の記入ミスで、私が荷物を受け取る前から「どうやらこれはヒヤシンスじゃないぞ…」と分かってしまっていた、ということを黒川は本当に残念がっていた。  黒川「真剣勝負に水を差されましたね…！」    でもあのミスが無かったら、私はいきなり糸杉とご対面するハメになって絶対死んでたよ！！むしろグッジョブだよ！！天の助けだ！！      ◆アポロンと糸杉の神話…なんかこの神話不思議だな〜と改めて思いました。ギリシャ人は、アポロンをなるべく嘆きや悲しみから遠ざけようとする傾向があるから（ex.「死者に捧げよう、別れの酒を。金色の髪のアポロンが決して奏でぬ悲しみの歌を」）、この神話が本当にギリシャでメジャーだったとしたら驚き。  …負け惜しみだけど！！（笑）チックショウ、絶対ローマ人の創作入ってるよ、この神話！！      ◆「アポロンが愛した人」当てゲーム、本当は質問の回数を５回にするつもりだったらしい。  黒川『本当にあなたを甘く見なくてよかった。５回…いや、４回でも僕の負けでしたね。』    そうだね…！４回目の「それはヒュアキントスか？」の質問に「ノー」と答えてくれていたら、いくら私でも糸杉のことを思い出していたよ！  あーっクッソー紙一重だったな！！本当に黒川の作戦勝ちだ…！！      ここまで読んでくださってありがとうございます！  私の興奮や驚きが少しでもお伝えできていればうれしいです！！    そうそう、昨日そらのはなこさんとその彼氏さんに六本木周辺で遊んでもらいました！その話も書きたかった…私のあのクソっぷりを…。  本当にありがとう＆ご迷惑かけてすみません。これに懲りずにまた私と遊ぶんだ！！  冥界合同本…もちろん私は善処するさ！（笑）めちゃくちゃ善処するに決まってるじゃないか！変な言いがかりはよしてくれ！！        拍手、コメントどうもありがとうございます！！  いつもお返事が遅くなってしまってすみません。  3月20日の記事にお返事書きます！少々お待ちを！！ 　    <<BACK 21日 【結果編・前半】ホワイトデーは死の香り！黒川からの３倍返し〜”アポロンが愛したひと”〜

藤村シシン 古代ギリシャ・ギリシャ神話研究家。 高校で出会ったアニメ『聖闘士星矢』がきっかけでこの道へ。東京女子大学大学院（西洋史学専攻）修了。 ◆著書『古代ギリシャのリアル』（実業之日本社）。◆ NHKカルチャー講座講師。◆2020年オリンピック採火式NHK生中継内、古代ギリシャ語同時翻訳。 ◆平成28年 東京国立博物館『特別展・古代ギリシャ』公式応援サポーター。 ◆UBIソフト『アサシンクリード・オデッセイ』公式コラボ ◆古代ギリシャナイト主催。 など。 お仕事のご依頼： euermo★gmail.com （*をアットマークに変えて送って下さい） 書籍『古代ギリシャのリアル』発売中。 ★よく出てくる宿敵「黒川君」については →【黒川wiki】をご参照下さい。 各種リンク twitter （基本的にここにいます） 「藤村一味」まとめ （古代ギリシャ、 呪術ナイトなどのトゥギャッターまとめ） 古代ギリシャナイト 歌って踊って喋って祭儀する、古代ギリシャ総合エンターテイメントです twilog （ツイッターのログ） （ピクシブ） 私のサイト（ギリシャ神話の創作とか） 2009. 3. 22 【結果編・後半】ホワイトデー.... 2009. 3. 21 【結果編・前半】ホワイトデー.... 2009. 3. 20 拍手のお返事 2009. 3. 14 【中編】ホワイトデーは死の香.... 2009. 3. 10 上野の森にハーデス様が…！（.... ← 2009年 3月 → Sun Mon Tue Wed Thu  Fri Sat 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 - - - - ------------ 漫画・セリフ小説 (31) アポロン (23) お仕事関係 (8) 黒川さん登場回 (88) その他 (251) ------------ 2023年 12月 ------------ 2022年 12月 ------------ 2021年 12月 ------------ 2020年 12月 ------------ 2019年 12月 ------------ 2018年 12月 2018年 10月 ------------ 2017年 12月 2017年 11月 ------------ 2016年 2月 ------------ 2015年 12月 2015年 5月 ------------ 2014年 5月 2014年 4月 2014年 2月 ------------ 2013年 11月 2013年 10月 2013年 9月 2013年 3月 ------------ 2012年 11月 2012年 9月 2012年 8月 2012年 7月 2012年 6月 2012年 5月 2012年 3月 2012年 2月 ------------ 2011年 12月 2011年 11月 2011年 9月 2011年 8月 2011年 5月 2011年 3月 2011年 2月 2011年 1月 ------------ 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 9月 2010年 8月 2010年 7月 2010年 6月 2010年 5月 2010年 4月 2010年 3月 2010年 2月 2010年 1月 ------------ 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 9月 2009年 8月 2009年 7月 2009年 6月 2009年 5月 2009年 4月 2009年 3月 2009年 2月 2009年 1月 ------------ 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 9月 2008年 8月 2008年 7月 2008年 6月 2008年 5月 2008年 4月 2008年 3月 2008年 2月 2008年 1月 ------------ 2007年 11月 2007年 9月 2007年 6月 2007年 5月 2007年 4月 2007年 3月 2007年 2月 ------------ 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 9月 2006年 8月 2006年 7月 2006年 6月 2006年 5月 2006年 4月 2006年 3月 2006年 2月 2006年 1月 ------------ 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 9月 2005年 8月 2005年 7月 2005年 6月 2005年 5月 2005年 2月 2005年 1月 ------------ 2004年 12月 2004年 11月 2004年 10月 2004年 9月 ------------ 漫画・セリフ小説 (31) アポロン (23) お仕事関係 (8) 黒川さん登場回 (88) その他 (251) ------------

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