藤村シシンぶろぐ


 

2009. 6. 6
      5分でわかるギリシャ神話の恋愛模様
〜ゼウス、ディオニュソス、ハーデス様関係〜

せっかくなので、前回に引き続き、 
妄想を交えつつ「花にかかわるギリシャ神話の話」を。 
 
 
――全能の神ゼウスといえば、
ありとあらゆるものとセックスした男。「俺に5分くれればエーゲ海じゅうの島とセックスしてみせるぜ!!」「女性名詞でありさえすれば、セックス可能!!森羅万象、全ておれの嫁!!」ってレベルのヤリチン!! 
 
…だけど、こんな浮気症の男がよ!?こんなゼウスが、たまーに奥さんのヘラに対して余裕無くなっちゃうのってちょっと良くないか!?―― 
 
●ジギタリス(ゼウス×ヘラ) 
 
 
――神々の女王ヘラは、サイコロ遊びが大好きだった。 
暇さえあれば、雲の上で一人、お気に入りの賽をふる。 
 
ゼウス「…なあ、ヘラ。いい加減サイコロ遊びはやめにして、私ともっとイイ事しないか?」 
 
ヘラ「……」 
 
ゼウス「なあ、ヘラ!!」 
 
ヘラ「…何よ、今はサイコロ転がしてるの!私の一番の楽しみをジャマしないで頂戴!!」 
 
ゼウス
「そんな一人オセロみたいなことしてて何が楽しいんだお前!?ハーデスじゃあるまいし!なあ、このゼウスの妻ともあろう者が、一人サイコロ遊びが趣味、というのはどうかと思うぞ!?」 
 
ヘラ「…いいから、もう少し。」 
 
ゼウス「駄目だ!さあ、こっちに来い!」 
 
ヘラ「…あっ!!」 
 
――いらだったゼウスは、ヘラの手から賽を取り上げてしまう。 
 
ヘラ「なにするの!返してよ!!
それは私の一番大好きな物なのよっ!!」 
 
ゼウス「…なんだと?
お前、この全能の神ゼウスと、たかがサイコロ、どっちが好きなんだ!?」 
 
ヘラ「サイコロに決まってるでしょ!! 
 
ゼウス「そんなことは許さん!」 
 
――怒ったゼウスは、ヘラの賽をジギタリスの花に変えて、 
雲の狭間から地上に打ち捨てた。 
 
ゼウス「サイコロ遊びは二度とするな。…といっても、もう転がすこともできないだろうがな。」 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 
――あれ!?もしかしてこの人、本当に好きな子の前だと素直になれないタイプ!? 
自分は浮気してばっかりなのに、そのくせヘラのことになるとサイコロなんかに嫉妬しちゃうって、ちょっと良くないか!? 
だけど、ヘラも肝心のところニブくて、 
 
ヘラ「あなたは私のすることは何でも気に食わないのね!!」 
 
って言って出て言っちゃう。 
 
周りで見てた連中は、
『いやいや今のは違うだろ…!!たんなる嫉妬だろ…!!』と思いつつ、怖いから口出せない。 
 
ゼウスは、出て行ったヘラと、手の中のジギタリスの花を見つつ、
『俺、なんでヘラの前だと素直になれないんだろ…「サイコロよりも俺を見てほしい」ってなんで言えないんだろ…』って思ってる。 
 
――なーんて感じだったら、私、ゼウスのこと俄然好きになっちゃうんだけど!!(笑) 
でもマジメな話、万年すれ違ってるゼウス夫婦ってすごくいいと思う!! 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 
●ギンバイカ(ディオニュソス vs ハーデス様) 
 
 
――ディオニュソスは、母というものを知らなかった。 
というのも、自分が生まれる前に、母セメレーは、父ゼウスによって焼き殺されていたからだ。 
「だけど母さんに会いたい。会って抱きしめてもらいたい。」 
…この一念で、ディオニュソスは神として認められたあと、 
母を地上に連れ戻すため、真っ先に冥界に向かったのだった―― 
 
ディオニュソス「ハーデス!俺の母さんを返せ!!」 
 
ハーデス「……。」 
 
タナトス「ふざけるなよ!新参の神ごときが!身の程をわきまえろ!!」 
 
ディオニュソス「何だよ、お前ひっこんでろ!!俺は絶対このまま母さんを連れて帰る!さあ、冥界の門を開けろ!!」 
 
タナトス「…ハ、やれるものならやってみろ!いいか、
冥界の門を開く、ということはすなわち、ハーデス様の心を開くということなのだ!!」 
 
ディオニュソス「何ィィッ!?」 
 
タナトス「そんなことは無理もいいとこだ!
このピクリとも笑わないムッツリスケベの心を開く!!?絶対にムリだね!」 
 
ディオニュソス「いや、やってみせる!この劇神ディオニュソスを甘く見るなよぉおお!!」 
 
ハーデス
「…(…なんか勝手に話がどんどん進んでくなぁ…)」 
 
 
ディオニュソス「やい、こらハーデス!絶対俺の力で貴様の心を開いてやるぞ!
お前が一番愛している人に変身してな!…ええい、『変化』!!」←変身はディオニュソスの得技。 
 
ハーデス「!!」 
 
ペルセポネー(ディオニュソス)「…『ハーデス、どうしてそんな怖い顔をするの?いつもみたいに優しい顔をしてほしいわ』」 
 
ハーデス「……」 
 
ペルセポネー(ディオニュソス)
『ハーデス、愛してるわ。世界中の誰よりあなたが好き。』 
 
ハーデス「……、……」 
 
ディオニュソス
「今のはグッと来た。でも中身はディオニュソスだし…」って顔してるな。よし、あと一息!!) 
 
 
ペルセポネー(ディオニュソス)「『一年中あなたと一緒にいたい。地上に春が来なくても構わない。あなたと一緒にいられるなら、永遠に冬でもいいの…』」 
 
 
ハーデス
「………そんなこと絶対言わない…私のペルセポネーは…。絶対に…言ってくれない……。……」 
 
 
タナトス
「おい、むしろハーデス様さらに心閉ざしてるぞ!!何やってんだお前!?」 
 
ディオニュソス「あーダメかあ!チクショー!!ええい、こうなったら
この世のギャグというギャグを言いつくして必ずや貴様の心を和ませてやるわーー!!」 
 
――ディオニュソスの奮闘は続いた。 
が、やはり冥界の主はピクリとも笑わなかったのだ。 
 
 
ディオニュソス「はぁ…はぁ…もうダメ…もうオレ何の持ちネタもない…っ!」 
 
タナトス「バカっ!弱音をはくな!お前はまだやれる!!こんなところであきらめるんじゃないっ!!」 
 
ハーデス「…タナトス…お前、どっちの味方…」 
 
タナトス「ハーデス様は黙ってて下さいッ!!ディオニュソス、ハーデス様は笑いというものをまるで解さない唐変木だ!それより、何かハーデス様が喜びそうな贈り物はないのか!?」 
 
ディオニュソス「…贈り物…」 
 
――ディオニュソスは考えた。 
相手は冥界の主という超権力者、しかも
世界一の金持ちだ。 
総金歯で手の指全部に指輪をはめ、ガハハガハハ笑いながら 
フォアグラをムシャムシャ食ってるようなレベルの男(※イメージ)だ。
 
 
…一方の自分は、神になりたての上、何も高価なものなど持っていない。 
ディオニュソスは考えに考えた末、こういう結論を出した。 
 
ディオニュソス「…あなたに差し上げられるものはこれしかない。」 
 
――差し出したのは、
ギンバイカの花。 
 
ディオニュソス「…俺は、神になりたてで、俺に捧げられている花はこれしかないんだ。」 
 
ハーデス「……」 
 
ディオニュソス
「いや、これから俺に捧げられる花もすべてあなたに譲る。だから、頼む、母さんを返してくれ!!」 
 
ハーデス「……フ」 
 
ディオニュソス「!」 
 
ハーデス「…お前は本当に面白い男だな。ギンバイカだと?…
こんな真夏の花を私に贈ろうというのか?」 
 
ディオニュソス「花は嫌いか?」 
 
ハーデス「…花は好きだ。私が嫌いなのは夏だよ。ペルセポネーがそばに居ないからな。…夏の花など、私にとって何の意味がある?」 
 
ディオニュソス「…いや、ギンバイカはお前にこそ必要だ。お前にとっての夏が、少しでも喜ばしい季節になるように。」 
 
 
ハーデス「……。…地上に返るがいい、ディオニュソス。母とともにな。」 
 
ディオニュソス「…!!!ありがとう、ハーデス!!」 
 
――そして、ディオニュソスは母セメレーと共に天上でなかよく暮らした。 
その代わり、このギンバイカの花は、 
ハーデスのものとなったのだった。 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
男→男にお花を贈る、ってめずらしいなぁ、しかも相手ハーデス様…と思いましたが、よく考えたらコレ単なる賄賂じゃね? 
 
でもまさかハーデス様も、奥さん以外の人からお花を贈られるたぁ思ってなかっただろう! 
ディオニュソスは親孝行すぎるし、冥界の主は情にもろ過ぎるね!! 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 
●クルミ(ディオニュソス+アルテミス) 
 
 
――酒神ディオニュソスが初めて恋をしたのは、ラコニアの少女カリュアだった。 
しかし、彼女は病弱で、ディオニュソスの必死の介護もむなしく、すぐに死んでしまった。 
ディオニュソスは彼女をクルミの木に変えると、その幹を抱きながら、 
彼女が死んだその場所で、何日も何日も泣き続けたのだった―― 
 
アルテミス「…ディオニュソス、ねえ、ディオニュソスってば」 
 
ディオニュソス「………」 
 
アルテミス
「…ディオニュソスってば!木なんか抱えて一体どうしたの?それに目から精液が出てるけど。それ、新しい芸か何かなの?」 
 
ディオニュソス
「…君は相変わらずデリカシーの無いひとだな。これは精液でもカウパーでもない…涙だ。」 
 
アルテミス「でも、神は涙を流さないわよ」 
 
ディオニュソス「…俺は元々人間だったから…死ぬほど悲しければ涙を流すさ。…分かったら放っておいてくれ…」 
 
アルテミス「放ってなんておけないわ。この場所は私の神域なの。あなたみたいのが転がってたら迷惑よ。」 
 
ディオニュソス「……そうかよ…。もうすぐ、どくから…もう少しこの場所で泣かせてくれないか…」 
 
アルテミス
「…ねえ、本当にどうしたの、ディオニュソス?いつものあなたならここで面白いギャグの一つや二つかましてくるじゃない。今日のあなた全然面白くないわ。一体どうしたのよ?」 
 
 
ディオニュソス
「…本っ当に君はデリカシーのカケラも無いな!!見て分からないか!?愛する人が死んでしまったんだよ!俺の大好きな人が…っうわぁあ〜〜ん!!全部言わせないでくれよぉーー〜〜!!うわぁああー〜〜アルテミスぅううーーー!!」 
 
アルテミス「…ちょ、ちょっと!まとわりつかないでよ!!本っ当に女々しいわね、あなたって人は!!ほら、もう泣かないで!!鼻かんで!」 
 
ディオニュソス「うう…だって…!俺、初恋だったんだ…!!」 
 
アルテミス「初恋だからどうしたのよ!!
アポロンだってもう少し早く立ち直ったわよ!?」 
 
ディオニュソス「…ふんっ…どうせ…俺はアイツと違って半人前の神だよ…!」 
 
アルテミス「…アポロンはね、ダフネーを月桂樹に変えて、自分の木にしたわ。それで立ち直ったのよ。」 
 
ディオニュソス「……」 
 
アルテミス「だから、あなたも、そのクルミを自分の木にしなさいよ。それで永遠に一緒にいられるから。ね?」 
 
ディオニュソス「……、いいや…。アルテミス…お願いがあるんだけど、このクルミの木……君の木にしてくれないか? 
 
アルテミス「えっ?」 
 
ディオニュソス「彼女はこの場所で生まれ育ったんだ。君の聖域であるこの場所で…。俺が一緒に連れていくより、この場所に根を下ろした方が幸せだと思う。…だから、どうか彼女を君の木にして欲しい。」 
 
 
――アルテミスは、ディオニュソスの願いを聞き入れ、 
クルミとなったカリュアを自分の木にした。 
そして、カリュアが死んだまさにその場所には、 
アルテミス・カリュアティデス(クルミのアルテミス)の神殿が今でも建っているのだ。 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 
――ディオニュソス、お前がいるべき場所はギリシャ神話じゃない、中世騎士物語だ。 
ってレベルでいい男だろ…ディオニュソス!!
 
そりゃあ、男らしさは無いけど!女々しいけど!!だけど、アポロンとの比較で考えるとさ…! 
アポロンは強引、っていうか!たとえば、
「彼女は、アポローンの君の暴力に屈して、すでに純潔を失っていたが…」なんていう文章を見ちゃうと、やっぱりちょっと嫌なものを感じてしまうじゃないか!相手アポロンでも!! 
だけど、ディオニュソスは全然そんなことしないもんね!! 
 
あーディオニュソスの良さ、っていうのはさあ!神になった後もいつまでも人間だったことを忘れなかった、ってことじゃないかと思う! 
「自分も弱い立場だった」ってことを忘れないから、いつも弱い立場の人たち、女とか子供とかに優しいんじゃないかな! 
本当に魅力的だと思うわ!! 
 
反対にアポロンは、自分が神であることにプライド持ってて、すぐ
「人間なんか!」って言っちゃう。だけど、それは人間に惹かれてることの裏返しで、心の奥底では、人間がうらやましいと思ってる。それはそれですごく魅力的なんだよなあ!! 
 
 
――そして、アルテミスは男嫌いなのに、ディオニュソスはOKなんだ? 
ディオニュソスも何かあるたびにアルテミスを頼るし、 
住んでる場所(野山、未開の地)も同じだし、気の合うご近所さんという感じなのでしょうか。 
アルテミス+ディオニュソスすげえ好きです!! 
多分アルテミスはアポロンといるより楽しいだろ(笑)。 
 
 
 
…最後にハーデス様とシャクヤクの話を書こうと思ったのですが、残念ながらお時間がきてしまったので、また次回! 
ちょっと実生活の方があわただしいので、1、2週間ネット落ちするかもしれません! 
 
拍手ありがとうございます!! 
コメントも、大変励みになっております! 
拍手のお返事はメニューの「re」のところです。5月30日分までありますぜ!
  
 



藤村シシン
古代ギリシャ・ギリシャ神話研究家。
高校で出会ったアニメ『聖闘士星矢』がきっかけでこの道へ。東京女子大学大学院(西洋史学専攻)修了。

◆著書『古代ギリシャのリアル』(実業之日本社)。◆ NHKカルチャー講座講師。◆2020年オリンピック採火式NHK生中継内、古代ギリシャ語同時翻訳。 ◆平成28年 東京国立博物館『特別展・古代ギリシャ』公式応援サポーター。 ◆UBIソフト『アサシンクリード・オデッセイ』公式コラボ ◆古代ギリシャナイト主催。 など。

お仕事のご依頼 euermo★gmail.com
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書籍『古代ギリシャのリアル』発売中。




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