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2012. 2. 2 【前半】新春かくし芸大会:藤村人形一座 『ソクラテスの弁明』
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演出:藤村シシン 美術:藤村シシン 照明:藤村シシン 小道具:藤村シシン 大道具:藤村シシン 劇場:机の上 舞台装置:ありあわせの物 新春かくし芸大会 「 藤 村 人 形 一 座 」
子供たち「「「あ!いたいた!プラトン先生ぇ〜!!」」」 子供たち「ねえねえ、プラトン先生の先生が、むかし死罪になったって本当!?」 プラトン「雁首そろえて来おったな、ジブリ勢が。…ではなかった――なんだなんだ、お前たち。やぶから棒に。」 子供A「今、大人たちが言ってたんです!」 子供B「プラトン先生の先生は、アポロンっていう偉い神様を『ぼうとく』したんだって!それで『さいばん』で死刑になったんだって!」 子供C「そんな悪い奴が、先生の先生だなんて、嘘ですよね!?」 プラトン「……子らよ。確かに私の師はアポロンに関してはちょっと頭おかしかったが、それは事実であって、真実ではない。――私の師は、アポロンにかけられた謎かけを解こうとしたのだ…命をかけてな。」 子供B「謎?なぞなぞ??」 子供C「その神様の謎かけって?どうして謎を解いたら死刑になるの?ねえねえ教えてよ!先生!」 プラトン「そうだな…では、少し語ろうか、私の師の話を。――子供たちよ、私の近くに来なさい。 さあ、どこから語ろうか。わが師ソクラテスの人生を。 神に問われた謎とはなんだったのか。 ――まずはここから物語を始めよう。 もし、アポロンにこんな謎をかけられたら…君たちならどうするだろうか? 今、再び耳を傾けよう――ソクラテスの弁明に。」
原作:プラトン 【ΑΠΟΛΟΓΙΑ ΣΟΚΡΑΤΟΥΣ】 アポロギア・ソークラトゥース <ソクラテスの弁明>
?「――おお〜!ここが天下のデルフォイ!神託のおん神アポロンの聖地!!」 ソクラテス「今日こそアポロン神に『誰がこの世で一番の知者か』を伺おう。」 ?「俺はアポロン様は『ソクラテス』と答える、に賭けるぜ。あんた以上に頭いい奴はこの世に居ないからな!」 ソクラテス「いや、それは絶対にない。わしが賢くない事は、自分が一番分かっとる。…………。」 ソクラテス「……ところで、お前誰じゃったっけ。夏休みの金曜ロードショーで良く見る顔だが…。」 「カイレポンです。あなたの親友の。」 ソクラテス「おお、そうじゃったそうじゃった。親友のカイレポンな。すまん、となりのナントカに良く似ていたもんだがら…」 カイレポン「ソクラテス…正直言って、まともな人形は君とプラトンしか出て来ない。慢性的な人材不足で、後は寄せ集めの有象無象ばかりだ。許せ。 ――まあそんな話はいいとして、」 ソクラテス「そうそう、誰が一番の知者か、アポロン神に伺うのだったな。行くぞ。」 カイレポン「三脚台に座す神託のおん神、アポロンよ!ピュティアの巫女の口を介し、我々にお言葉をお授け下さい!!」 『………』 カイレポン「アテナイのカイレポンが、アポローンの君にお尋ねいたします。『この世に、ソクラテス以上の知者はおりますでしょうか?』」 ……『誰もおらぬ。』 カイレポン「ほらみろ!やっぱりソクラテスが一番の知者だって、アポロン様も仰ってる!」 ソクラテス「…アポロン、神託のおん神よ。それは真なのですか?私よりも賢い者は誰もおらぬと?」 『………』 『偽りの言葉を持たぬアポローンが確かに告げよう―― 人間の中ではソクラテスよりも自由な者はおらず、 正しい者はおらず、 節度ある者はいない。 全ての人のうちでソクラテスこそ最も賢き人。』 ソクラテス「いいえ、それはウソです。アポローンの君。」 カイレポン「ちょッッ!!おまっっ!!!バ、バカ!ソクラテス!!何言ってんだお前は!?口を慎め!相手はアポロンだぞ!?」 ソクラテス「私が知者ではない事は、私自身が一番分かっとる。だから神の方が間違っていると言ったのだ。」 カイレポン「口を慎めって!アポロンの言葉は疑ってはいけない!」 ソクラテス「何故だ。」 カイレポン「何故って…アポロンだからさ!神は嘘をつかない!絶対にだ!ここは動かせない!!」 ソクラテス「いいか、よく考えろ。 神は『私以上に賢い者はいない』と言った。 しかし、私は自分が賢くない事を知っているのだ。 ――ほらな?おかしいではないか。」 カイレポン「お前の前提がおかしいんだよ!!相手は神なんだぞ!?」 ソクラテス「――もしや…、神は私に何か謎かけをしているのだろうか。 この神託には何か隠された意味があるのだろうか。 うむ、そうだ。そうに違いない! 私は今、神から謎めいた暗号を受け取ったのだ! これは私と神の一対一の謎解き対決…!そういうわけか、アポローンよ!面白い!!」 カイレポン「お、おい、何でそんな話に…っ!?」 ソクラテス「だが私は、相手が例え神であろうと容赦なく否定する。 『神は嘘をつかない。』――私が今からそれに対する反証をあげてやる! 『私より賢い者はいない』――アポロンはそう仰った。では、たった一人でも私より賢い者をここに連れてくれば、神託の虚偽を暴ける!!アポロンの嘘を暴く!!簡単な話じゃ!!」 カイレポン「ソ、ソクラテス…!なんと恐れ多い事を!!」 ソクラテス「行くぞ!カイレポン!わしがアポロンを論破してボッコボコに吊るしあげてやるわ!!ヒョーッヒョッヒョッヒョ!!」 カイレポン「アワワワワ」 ・ ・ ・ プラトン「――正直この流れは、弟子の私でもどうかしちゃったんじゃないかと思った。 とにかく、ソクラテスは町中で探した。自分より賢いと思われる人を。 知識人を訪ねて行っては問いかけた。 『善とは何か?』、『徳とは何か?』、『美とは?』。 ――しかし、誰一人として正確に答えられる者はいなかった。…」 子供A「じゃあ、ソクラテスよりも賢い人は、見つからなかったの!?」 子供B「それじゃ、謎解きの行方はどうなったの?!先生!」 子供C「続きを聞かせて!!」 プラトン「……ある日、ソクラテスの行為は『神への冒涜』として告訴された。 当然だ。民衆には理解できなかったのだ。「神からかけられた謎に挑む」という行為が。 今まで誰一人として、アポロンの神託に反論しようなどという者はいなかった。 そう、誰一人として、アポロンと正面からは向き合おうとした者は居なかったんじゃ…。」 ・ ・ ・ 裁判長「――静粛に!これより開廷する!!」 裁判長「被告人、ソクラテス。アポロンはじめ、国家の神を信仰していない罪――すなわち贖神罪による告訴が出されている。 まずは原告・メレトス!告発演説を―――、 ってお前本気で誰だ。一度も見たことない顔だな…」 メレトス「おれにもわからない。」 メレトス「――それはいいとして、さて、アテナイ人諸君!このソクラテスが、政治家や知識人をたずね歩いては、問答を繰り返している事は諸君も知っての通りだ。しかし、その理由はあろうことか、神の神託に反論するためだというではないか! この男が国家の定めた神を信じていないのは明白!私は、ソクラテスを公法上の罪である贖神罪で訴えます!以上です、サガ裁判長!」 裁判長「――では被告ソクラテス!反対演説を!」 ソクラテス「――アテナイ人諸君。私は今言われたような不正は何一つしておらぬ。確かに、私は知識人をたずねては、自分より賢い者かどうかを試そうとした。――神の神託に反証をあげるためだ。」 ソクラテス「しかし、問答してみてわしは気付いた。 本当の知者など誰一人いないと。 みな、知ったかぶりをしているだけのバカばかり。 むしろ、自分が何も知らない、という事を知っている点で私の方が知者である、と。 ――私はそこでようやく悟った。神託の真の意味を。 つまり、私は知らないという事を知っている。 この点で、神は私を誰よりも賢き人だ、判じたのだ。 ――これが神が私にかけられた謎かけだったのだ…。 ゆえにアテナイ人諸君、私は今は誰よりも神を信じている。誰よりも…。盲信ではなく、理性によって誰よりも深く神を信じている。 ソクラテス「ああ、アポローンの君…。確かに貴方の言葉は正しかった。しかし、私も貴方の謎を解きましたぞ。」 メレトス「嘘っぱちだ!そんなのはただの詭弁だ!!その神託を共に聞いたというカイレポンももうこの世にはいない!」 ←今は亡きカイレポン メレトス「裁判長!私は証人の出廷を求めます!!ソクラテスの潔白を証明できる証人を!――もちろん、そんな者は一人もいないだろうがな!!」 ※次の日の日記に続きます!
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藤村シシン古代ギリシャ・ギリシャ神話研究家。 高校で出会ったアニメ『聖闘士星矢』がきっかけでこの道へ。東京女子大学大学院(西洋史学専攻)修了。
◆著書『古代ギリシャのリアル』(実業之日本社)。◆ NHKカルチャー講座講師。◆2020年オリンピック採火式NHK生中継内、古代ギリシャ語同時翻訳。 ◆平成28年 東京国立博物館『特別展・古代ギリシャ』公式応援サポーター。 ◆UBIソフト『アサシンクリード・オデッセイ』公式コラボ ◆古代ギリシャナイト主催。 など。
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