なつきのつれづれ日記
2014. 8. 20. Wed
誕生日を祝ってくれる人
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2014年 8月
2014. 8. 20. Wed
誕生日を祝ってくれる人
むかーし、と言っても5年ほど前だが―ウチをよく利用するひとりのお客様がいた。
年齢は昭和ヒトケタ生まれ。現役時代は典型的な企業戦士だったのだが、あまりの家庭の顧みなさに定年と同時に奥様に離婚を言い渡され、出て行かれてしまったそうだ。それでも、子供もいないからいいやとしばらくは気楽に過ごしていたのだが、やがて認知症がはじまってしまい、そうなるとそれまで周りにいた人がすーっといなくなってしまったそうだ。
というのも、この方の症状はいわゆる「まだらぼけ」なのである。なので、しっかりしている時はしっかりしているのだが、そうでない時はもう手がつけられないほどになってしまうらしい。で、今ほど認知症に対する理解が進んでなかった時代なので、周りの人も
”何この人。言ってることが昨日と今日で全然違うんだけど。”
みたいな感じで愛想を尽かしてしまったというのが真相そうだ。そんなわけで、私が知るころにはこの方は4、5匹の猫と共にアパートで独り暮らしをしていた。だが―
実はこの方、ものすごく臭いんです。どのくらい臭いかと言うと、この方が店内に入る少し前になると臭いがただよってきて、
”あ、いらっしゃるな”
とわかるとか、あと、いらっしゃったらすぐに窓を全開にするのですが、帰った後もあたりに臭気が残り、他のお客様に
「ねえ、なんか臭いんだけど何のにおい?」
と聞かれるとか、とにかくすごい臭いなんです。ところで―
実は私、この方の家に1度だけ行ったことがあります^^;書類にハンコもらうのを忘れて、もらいに行ったのがその理由ですが・・・・
中はまさに人外魔境でした。ゴミ袋と雑誌を束ねた束が胸くらいの高さまで積み上げられて玄関まであふれかえっておりました。でも、居室から玄関まで出られる幅員は確保しているらしく、ちゃんと玄関先まで出てきてくれました。ちなみに、幸い(?)なことに中には入ってません。うまく玄関先で失礼することができたけど・・・・いやーあそこは頼まれても中に入りたくないね。もちろん中はすごく臭かったです。で、私にも臭いが移ったらしく、職場に戻ったら
「ちょっとコジマさん臭いんだけどー!」
「私が悪いんじゃありません〜!」
とかってちょっとしたパニックになってました。
・・・・と、ここまでですでに非常に長くなってますが、こういったバックグラウンドを飲み込んでからでないとこの後の話が生きてこないと思うので、まあお付き合い願います。
その日もそのお客様はやってきました。用件は
「貯金通帳をなくした」
とのこと。で、データを調べるとこの方は過去すでに通帳を7回なくしておりました。
”ちょっと〜、今日で8回目じゃん。なくしすぎだよも〜”
”まあ、認知症気味だというならしょうがないけど〜”
と内心あきれつつもさらにデータを調べて行くと、その日のちょうど前の日がこの方の誕生日でした。で、私は
「あ、○○さん昨日お誕生日だったんですね。おめでとうございます・・・・・まあ、これから通帳の再発行手続きに入りますので、そちらへおかけになって5分くらいお待ちくださいませ。」
と言って淡々と処理を進め、やがて
「できました。10日くらいしたら自宅に通帳が届きますので、ご確認くださいませ。」
と呼び寄せました。
で、しまうものをしまって帰り支度を整え、最後窓口を離れようとするその時、この方は
「誕生日おめでとうなんて20年ぶりくらいに言われた。」
とボソッと言って帰って行きました。
※ ※ ※
日頃は
”誕生日おめでとう”
と言われても
「30過ぎたら別に誕生日迎えても大してうれしくないよ。」
とか、
「死ぬのに1年近づいただけさ。」
なんて意味もなくつっぱったりしてたものですが―
”誕生日おめでとう”
と言ってくれる人がいるというのは実はすごく幸せなことなのかもしれないと思いました。
そんなわけで私も昨日で40歳の折り返し地点。まだまだ長い旅の途中です―
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