藤村シシンぶろぐ


 

2010. 9. 4
      【前篇】学園パラレル・私立オリンポス学園
〜ギリシャ神話で青春しようぜ!for 黒川〜

♪キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜――ン…♪(チャイム音) 
 
ゼウス先生「――教科書12ページを開け。えー今日から太宰治の『走れメロス』に入る。では、まず最初の段落を……麗戸(れと)!麗戸アポロン!読んでみろ。」 
 
アポロン「はい。」 
 
 
 
アポロン「――『メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意し…』」 
 
 パサッ。←ヘルメスから紙飛行機が飛んでくる。 
 
アポロン「
『「王様は、人を殺します。」、「なぜ殺すのだ。」』(?――紙飛行機?)」 
 
ヘルメス
(中!開いて!) 
 
アポロン「…??――
『「悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居りませぬ。」、「たくさんの人を殺したのか。」…』……」 
 
 ガサガサッ 
 
 
 
アポロン「……
『「おどろいた。国王は乱心か?」』「今日、放課後何して遊ぶ?」だと?」 
 
ゼウス先生「ん?どこ読んでる?」 
 
アポロン「…あ!いえ、何でもありません!、
『「いいえ、乱心ではございませぬ。…』(お前っ!授業中だぞ!?変な手紙をよこすな!) 
 
ディオニー(…なになに?今日の放課後の話?俺も入れろよ!また土手で缶蹴りやりたいなー!昨日やって楽しかったし!) 
 
アポロン
(お前は誘ってないだろ!?) 
 
ヘルメス(ええー缶蹴り…?僕イヤです。どうせまたアレスがしょっぱなから川の対岸まで缶をけっ飛ばしたり、アポロンがどこからともなく馬に乗って現れて、やぶさめの要領で缶を見事射抜いたり、反則ギリギリの事されますよ) 
 
 
アポロン「そんなん言うなら、お前だってホウ酸団子ばらまいて、食ったアレスを死に至らしめようとしたり!!
私のクツにあらかじめ細工してつま先に磁石を仕込み、缶が永遠に私のクツから離れないようにしただろうが!! 
 
――…って、あっ。」
 
 
 
ゼウス先生
「麗戸。廊下に立ってろ。」 
 
アポロン「ち、違います先生!この不良どもが私の邪魔をしてきたんです!私は悪くありません!」 
 
ヘルメス「はあ!?あなた、親友に罪をなすりつける気ですか!?」 
 
アポロン「親友も何も、我々はおととい入学式で会ったばかりの赤の他人だろうが!き、昨日の缶蹴りにも私は無理やり付き合わされただけで!」 
 
ヘルメス「なんですって!?」 
 
 
アレス
「ZZZ…う〜ん、俺もう食べられないよお〜…むにゃむにゃ」 
 
ディオニー
「あーまじジャンプ面白れぇ。」 
 
 
ゼウス先生
「というかその辺の席の奴ら、全体的に廊下に立ってろ。」 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・ 
(廊下。) 
 
アポロン「――はあ…。お前、舞谷(まいや)ヘルメス、とか言ったな。どうして私の所にふざけた手紙を飛ばしてきたのだ?」 
 
ヘルメス「だって、僕とあなたは4席も離れてるんですよ。迅速に手紙を回すにはこうするしかないじゃないですか。」 
 
アポロン「お前……そんなに私と話したいのか。」 
 
ヘルメス「べ、別にそういうわけではないですけど。でも、貴方はなんか面白そうだな、って入学式の時から…」 
 
アポロン「しかし『紙飛行機』は一方的で非合理的な連絡手段だな。」 
 
ヘルメス「…すみません」 
 
 
アポロン
「だから次からは糸電話で話そう。――それでいいな?」 
 
ヘルメス「!!…そうと決まれば、さっそく購買で紙コップ二つ貰って来ましょう!」 
 
アポロン「ちょッ…私たちは今、立たされているんだが……
うわっ腕を引っ張るなって!おいっ!ヘルメスーーーーッ!!」 
 
 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
アポロン「――さて。先ほど帰って来た中間テストについてだが。というか正確にはアレス、貴様の赤点だらけのテストについてだが。 
…単刀直入に聞く。 
 
歴史のテストで、
『本能寺の変が起こった年は?』――この問題に対して『いちごパンツ』と解答したのは何故だ。」
 
 
 
アレス「だって…、だって、ディオニュソスが、『本能寺は「いちごパンツ(=1582年)」って語呂合わせで覚えろ』、って言ってたんだもん…!俺、ちゃんとそれは覚えてたんだぞ!でも、でも肝心のいちごパンツが何を意味するのか分からなくなって…」 
 
ディオニー「それでとりあえず回答欄に『いちごパンツ』を書いた、と。ばっかだなあー!」 
 
ヘルメス「そう言う貴方もひどいですよ。 
 
『平安時代、平安京において、朱雀大路の最も南側にあった建造物は何か。』 
 
――
『マクドナルド 平安京店』(答:羅城門)
 
 
 
アレス「ワハハ、お前面白いな!」 
 
ディオニー「サンキュー!お前もな!アハハ」 
 
アポロン「バカ者――ッ!!笑い事ではないわーーっ!!貴様らが赤点とったせいで、この学年首席・アポロンと、次席・ヘルメスが貴様らの勉強を面倒みさせられる羽目になったのだぞーーーっ!!少しは反省しろーーっ!!」 
 
ヘルメス「…貴方方が追試を見事合格するまで、夏休みは来ないと思ってください。」 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 
アレス「っしゃあああーー!やっと追試も全部合格したぁああ!夏休みだぁあーーーーッ!!」 
 
ヘルメス「やれやれ…。アポロン、夏休みはどういう予定?」 
 
アポロン「ん?そうだな、生徒会の雑務を済ませて、あとは弓道部の練習と、医学書も少し読んで、バイオリンの練習もやりたいし…」 
 
ヘルメス「いえ、そうじゃなくて。夏休み、何して遊びます?」 
 
アポロン「……。…すまん…、私は休日に友人と遊んだ経験が、ない。夏休みというと、友達とはどんな事をするものなのだ?」 
 
ヘルメス「あきれた…。夏休みに友達とする事と言えば、18度に設定したクーラーの中で、泊まりで夜通しバイオハザードやったり!猥談したりするものに決まってるでしょう!!」 
 
アポロン「そうなのか?――では、来るか?私の家に。」 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
(アポロン宅。) 
 
ヘルメス「……まさかあなたの家がこんな豪邸だとは知りませんでした…
お風呂はライオンの口からお湯がジャバジャバ出てるし、テーブルはものすごく長いヤツだし…綺麗な双子のお姉さんもいるし…」 
 
アレス「すげーー!お前のベッド、トランポリンみたいにフカフカだ〜!!ワーーイ!」 
 
アポロン「ちょっ…ベッドの上で跳ねるな!小学生かお前は!!」 
 
 
ヘルメス「――さて。じゃあさっそく……出してもらいましょうか。」 
 
アポロン「出すって…何を?」 
 
ヘルメス「何って。
エロ本に決まってるでしょう。あるんでしょ?『プレイボーイ』とか、『エロトピア』とか?」 
 
アポロン「…は、はあ!?」 
 
ディオニー「今すぐ吐かねーと
『アイツの姉ちゃん誰にでもヤらせるらしいぜ。』ってある事ない事吹聴すんぜ」 
 
アポロン「アホかお前!アルテミスは処女だ!!」 
 
 
ヘルメス「ベッドの下には無いですね…本棚か?」 
 
アポロン「お、おいっ!勝手に探るなっ!」 
 
アレス「…でも本棚は真面目な本ばっかりだな!『ファーブル昆虫記』に『プラトン全集』……
あれ?この『プラトン全集』、3巻だけ背表紙の色びみょうに違くね?」 
 
 
ヘルメス
「ややっ!?この本を押すと本棚が横にズレて奥に秘密の階段が!!」 
 
アポロン
「ウワーーー!!帰れ!!お前ら帰ってくれーーッ!!!」 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 
――そんなある日の夏休み明け。 
 
ディオニー「みんな聞いて〜〜〜!おれ今度、全国演劇コンクールに出れることになったんだ!!
一人芝居で『走れメロス』やるんだ!」 
 
ヘルメス「すごいじゃないですか!」 
 
アレス「面白そうじゃん!頑張れよ!」 
 
 
アポロン「―― お前が『走れメロス』だと?無理に決まってる。」 
 
ディオニー「なんだと?」 
 
アポロン「いいか。『走れメロス』は古代ギリシアのピタゴラス教団がモデルになっているのだ。彼らが最も大切にしたのは『友情』。 
 
――しかし貴様ときたら
運動会で味方裏切って敵陣につくわ、肝だめし大会の時は私を置いて逃げ出すわ、まったく友達がいが無いだろうが。そんな奴が友情の芝居だと?」 
 
ディオニー「…っ」 
 
アポロン「だいたい、演劇部に所属していながらなぜ独り芝居なのだ?さては、ハブられでもしたか貴様?このクラス委員長・アポロンが助けてやっても…」 
 
ディオニー「…うるっさい!何なんだよお前…!!俺はな、生まれた時から母ちゃん死んじゃってるし!バイトしながらじゃないと一人じゃ生活できないんだよ!他の演劇部のみんなとは練習時間合わないんだよっ!!」 
 
アポロン「あ…」 
 
ディオニー「いいよなお前は!大金持ちのお坊ちゃんでさ!!学校の送り迎えも、ダックスフンドかよってくらい長ーいリムジンでさ!!何入ってんだよあの胴体ん中!」 
 
アポロン「……あれは私特注の風呂付きリムジンで…」 
 
ディオニー「はあ!?風呂付きリムジン!?俺なんかびんぼーすぎて、水道はおろか下水道まで止められてんだぞ!!?それなのに…それなのに…うわぁああ〜〜〜ん!!」 
 
ヘルメス「あっ、待って、ディオニュソス!……あーあ、行っちゃった。どうするんですか。」 
 
アレス「追いかけろよ、アポロン。俺、バカだけどさ…今のは謝りに行った方がいいと思うんだ。」 
 
アポロン「…な、なぜ私が?絶対イヤだ。ふんっ!」 
 
ヘルメス「いくじなし!もーどうなっても知りませんよ、僕!」 
 
 
 
――そんな中、男子トイレでお酒のビンが発見される。 
もちろん、犯人はアポロンとケンカしてヤケ酒飲んだディオニュソスだった。 
 
ゼウス先生「トイレで酒を飲んだのは、ディオニュソス、お前だな?」 
 
ディオニー「……っ。」 
 
ゼウス先生「謹慎1カ月は免れないと思え。」 
 
ディオニー(ちくしょう…!!せっかく演劇コンクール本戦に出れるところだったのに…!!) 
 
 
 
アポロン
「――先生、それは私がやりました!」 
 
 
ディオニー「…えっ…?」 
 
アポロン
「犯人はディオニュソスではありません!このアポロンです!私がトイレで酒を飲みました!!」 
 
ディオニー「……!!」 
 
ゼウス先生「納得いかんな。模範生のお前が飲酒…?」 
 
 
ヘルメス「…先生、僕がアポロンをそそのかしたんです!
僕と、アポロンで、お酒を飲みました!!」 
 
アポロン(ヘルメス…!馬鹿、お前どうして…!) 
 
ヘルメス
(付き合うぜ、親友!) 
 
 
 
アレス
「――良くわかりませんが、俺も酒を飲みました!!」 
 
 
アポロン&ヘルメス「「!アレス…!!」」 
 
アレス
(俺抜きで祭り始めよーったってそうはいかないぜ!) 
 
ディオニー「お前たち…!!どうして…どうしてだよっ!?どうして俺の代わりに罪を…」 
 
アポロン
(今停学食らったら、出られないだろ?コンクール。…頑張れ、お前なら優勝できる!) 
 
ディオニー「…!!」 
 
 
ゼウス先生「…本当にお前たち三人が飲酒したんだな。停学処分になるぞ。分かってるんだな?」 
 
3人「「「はい!」」」 
 
 
 
ディオニー「………待って下さい…違います…。
違います!俺です!俺がやりました!!その三人はやってません!!」 
 
 
アポロン「!!馬鹿、どうして…!」 
 
ディオニー「…お前の言う通りだ、アポロン。友を大切にしない者に、『走れメロス』を演じる資格はない…」 
 
アポロン「!」 
 
ディオニー「…
『だが、まだ陽は沈まぬ!メロスが帰って来た!約束のとおり、いま、帰って来た!殺されるのは、私だ。メロスだ!彼を人質にした私は、ここにいる!』 
 
アポロン「…『おお、友よ』…っ」 
 
ディオニー「
『ありがとう、友よ。ありがとう。』」 
 
 
ゼウス先生「…
『おまえらは、わしの心に勝ったのだ。どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。』」 
 
ヘルメス&アレス「「
『万歳!王様万歳!』」」 
 
ゼウス先生「
『どうか、わしの願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほし』……って、私を乗せるな。貴様の演劇に。」 
 
ディオニー「…ちっ!ダメかあ…」 
 
ゼウス先生「…だがお前のその周りを巻きこむほどの演劇の才能。コンクールに出場させないのはあまりに惜しい。」 
 
ディオニー「え…」 
 
 
ゼウス先生「――貴様ら4人に処分を言い渡す。
罰として、トイレの清掃3カ月。停学はナシだ。」 
 
 
4人「「「「…やっったぁあああ〜〜〜!!」」」」 
 
→後半に続く。
  
 



藤村シシン
古代ギリシャ・ギリシャ神話研究家。
高校で出会ったアニメ『聖闘士星矢』がきっかけでこの道へ。東京女子大学大学院(西洋史学専攻)修了。

◆著書『古代ギリシャのリアル』(実業之日本社)。◆ NHKカルチャー講座講師。◆2020年オリンピック採火式NHK生中継内、古代ギリシャ語同時翻訳。 ◆平成28年 東京国立博物館『特別展・古代ギリシャ』公式応援サポーター。 ◆UBIソフト『アサシンクリード・オデッセイ』公式コラボ ◆古代ギリシャナイト主催。 など。

お仕事のご依頼 euermo★gmail.com
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書籍『古代ギリシャのリアル』発売中。




★よく出てくる宿敵「黒川君」については
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