藤村シシンぶろぐ


 

2009. 9. 9
      みんなの「アポロン表現」を堪能してみよう +絵師バトン

こんな団鬼六プレイみたいなアポロンの隣だと何の説得力もないんですが、アポロンを描くたびに思い浮かぶ言葉があります。 
それはアポロンの見た目を表現した一節なのですが――  
 
――アポロンの姿は、まさに彼が発する言葉と同じく完全だった。 
 善そのものが有する高貴さと純粋さ、権力であると同時に秩序の体現。 
 そして叡知と軽蔑がにじむ憂愁の表情。 
  ――これらのすべての完璧な調和。』
 
 
 
…多分この男…生まれてこのかた一度も口内炎とかなったこと無いぞ…!!ってレベルでしょ!?アポロン!? 
「アポロンの姿は〜(略)〜これらすべての完璧な調和」……ムチャだろ。こんなの。アポロンのハードル上げすぎだろ!? 
 
これはハルダーという学者の言葉なのですが、しかし!彼のアポロン賛美はこんなもんじゃ終わらない…。 
彼はつづけて曰く、 
 
 『人間が衣服をまとうのは、己の体の欠点や弱点を覆い隠すためだ。 
  アポロンはそのような肉体を嘲弄する覆いを必要としない。 
  彼は全裸という衣服をまとっているのだから。』
 
 
ハルダー先生、もう勘弁して下さい!! 
「アポロンは全裸という衣服をまとっている」…かつて人間の肉体に対してこれ以上の賛辞があっただろうか。いやない。 
要するにアポロンだったら、「お客様、当店ではノーネクタイでのご入店はご遠慮頂いております…」ってレベルのフレンチレストランも
全裸で入店できると!そういう事か!? 
どんだけだよ!アポロン!!どんだけ美男子なんだよ!!
 
 
もうひとつ、古代ギリシャの詩人の表現を引用させていただくならば、 
 
『アポロンが二、三歩歩いただけで、まわりに光がパァーッと散った!』 
 
…ミラーボールかお前は!?って話だ!こんな表現されるのミラーボールかアポロンだけだろ!!
 
本気!!みんなアポロンを表現する時はもう完全に本気!! 
 
 
 
こういう風にいろんな人の「アポロン表現」を聞くのがとても面白いので、 
「アポロンってどういう人?アポロンのアイデンティティを一言で表してみて。」という質問を黒川さんにぶつけてみたことがあります。彼の意見はこうでした。 
 
黒川さん「う〜ん……アポロンは、
『決して恋をしない人』です」。 
 
曰く、「恋」というのは、自分の欠けている部分を相手で満たそうとする「完全への欲求」だと。 
だから、すでに完全であるアポロンは誰にも恋をしない。 
 
 
――哲学科の人のアポロン観は本当に美しいぜ!! 
なんだろう…哲学から見るアポロンは、究極の哲学者みたいなイメージですね。 
「理想」とか「理性」の体現みたいな気高い人! 
哲学者プラトン曰く、 
 
 『白鳥は死を予感すると、最期に生涯で最高の歌を高らかに歌うという。 
  主人であるアポロンのもとへ帰ってゆけるのが嬉しいのだ。 
  しかし死を恐れる人間は、白鳥は命乞いをしているのだとありもしないことを言う。』
 
 
 
黒川
「ああ…僕も白鳥になっていつかアポロンのもとへ帰りたい…!」 
 
エエエッ!!??だったらお前その気持ち悪い暗黒のTシャツなんとかしろよ!! 
それともそれは「みにくいアヒルの子」作戦で、最終的には美しい白鳥になって羽ばたくつもりなのか!?
 
――うーんこういう発言を聞いても、本当に哲学科のアポロンは…白鳥のようにけがれない存在なんだなと思う! 
 
 
 
一方の史学科の私はというと…アポロンはとても「冷徹な人」だと感じます。 
 
というのも、ギリシャ史においてとても有名なあるアポロンの言葉があって、それが本当に冷たくも印象的に感じるからです。 
それは、
歴史上もっとも重要なアポロンの神託!そう、ギリシャがペルシャ軍を破るきっかけを与えたアポロンの言葉だ! 
 
  「――アテナよ、そなたがいかほど言葉を費やし、 
   その賢しき才覚を用いて嘆願しようとも、 
   ゼウスの御心を動かすことは叶わぬぞ。 
 
   汝が愛するギリシャは、ペルシャの軍の神により滅ぼされるであろう。 
 
   だが我は、汝と汝の子らのため、ここに再び鋼にも比すべき 
   硬く破れぬ言葉を告げてとらせよう! 
 
 
   ケクロプスの丘と聖なるキタイロンの狭間に抱かれる土地、 
   ことごとく敵の手に陥るとき、…」 
 
 
――ここから続く言葉で、ギリシャはペルシャを打ち破ることができたのですが(その言葉は来る対黒川戦で使う計画なので、ネタバレを避けるためにここでは書きませんが!(笑))、 
私思うんですが、
…アポロン本当に冷たくないか!?ギリシャに対してさ! 
この一個前の言葉なんて本当にひどくて、 
 
アポロン「お前らギリシャ人はどうぜペルシャに負けるのだ、分かったら早く私の神殿から出て行け!汚らわしい」 
 
くらいの辛辣な言葉なのですが、 
言われたギリシャの伝令が、もうアポロンになんとか追いすがって、 
 
伝令「いいえ!出て行きません!アポローンの君、あなたが我々にもっと良い言葉を仰ってくださるまで、私はここを一歩も動きません!!」 
 
っつってのアポロンの「アテナよ、そなたがいかほど言葉を費やし、その賢しき才覚を用いて嘆願しようとも〜」だからね!
どんだけツンデレなんだよ!!?お前がツンツンしてる間にギリシャ滅ぶぞ!?って話でしょ!? 
 
アテナはギリシャを守るために必死になっている感じなのに、アポロンは 
「別に?ギリシャなんか滅んでも全然いいし。私関係ないし。それよか今日の私の髪型どう思う?」ってトーンですごく無関心な態度なんだよね!なんだその態度!? 
いや、ここだけじゃなくて、アポロンの言葉は全体的にギリシャに冷たい…と思う。 
 
 
――そんなわけで、私にとってのアポロンは…
とても冷たい人です。 
ギリシャ神話(=過去、=物語)の中ではすごく情熱的なのに、 
古代ギリシャ人が実際に現実で相対していたアポロンは本当に冷たい人!! 
あの神話の中の情熱をどこに置いてきてしまったんだ? 
ってくらいに冷めているように見えて悲しい!
 
 
「誰にも恋しない人」。確かにそう思うけど!だけど本当にくやしいのは、
アポロンは誰にも恋しないかもしれないけど、この時代は、世界中の人がアポロンに恋してた!!ってことだ!! 
 
誰にも恋しないくせに、誰もが彼に恋するような、そんな人!! 
絶対許せないだろ、そんな男!! 
 
だからこそ…
だからこそ!!私はアポロンが失恋してグッチャグチャになってる所が見たい!!口内炎ができてるところも見たいし、縄でがんじがらめて縛られてメッチャクチャになってる所が見たいんだ!!!
 
 
…つったら黒川さんに苦笑いから笑いをとった表情をされたのでここまでしとくけど!(笑) 
でもいろんな人のアポロン観を聞くのは本当に面白いです。 
っていうのも
みんなアポロンに自分の「理想の人間像」を重ねるんですよ!黒川さんは「誰にも恋しない、何にも心惑わされない」ような人物を理想だと思っているし、私は「誰からも愛される」人物を理想だと思っている。と思う。 
山田先輩は「勇敢で思慮深く、光明そのもの」だと言っていました。みんなほんと性格出るぞこれ!!(笑) 
 
 
 
…ってまあこんな話をしてる場合ではなく、しばらくサイトをあけている間に、最高のアポロンを描く女・紅さんにお会いしたり、黒川さんの誕生日大戦にいろいろ進展があったりしたのですが、それはまた次回書きます! 
 
今日はもうひとつ、
「キンイロの日々」の碧木ぱおさんから 
「絵師バトン」を回していただきましたので回答したいと思います! 
ぱおさんからというのが本当に嬉しすぎる…。 
本当に金色のバトンだぜ…!どうもありがとうございます! 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 
そんなわけで、
『絵師バトン』です。 
 
●お名前は? 
藤村シシンです。 
 
●差し支えなければ年齢を 
ミケランジェロは21歳の時に完璧なディオニュソス像を作ったというのに、私ときたらこの歳になっても満足に絵も描けやしねえ…でおなじみの二十代前半です。 
 
●何歳から絵を描き始めて何年目ですか? 
けっこう昔から描いていました。 
 
●利き手はなんですか? 
右です。 
 
●男性と女性、描きやすいのは? 
私が「描きやすい」と思うのは木か柱くらいで、人間なんか性別にかかわらず描きづらいよ! 
 
●長髪と短髪、描きやすいのは? 
絶対長髪です。長髪が好きだから! 
 
●右向きと左向き、描きやすいのは? 
私の方から見て左向きです。 
 
●正面と横顔、描きやすいのは? 
横顔。顔半分しか描かなくていいからラクじゃん! 
 
●苦手だったり、苦労するパーツは何ですか? 
人間。 
 
●アナログ派?デジタル派? 
本気で描こうと思う絵は、清書まではアナログです。サイトに上げる絵ならそこからデジタルです。 
 
●絵(下書き)はどこから描き始めますか? 
目かな。 
 
●自覚している描き癖は? 
背景でごまかそうとする(笑)。 
 
●ペン入れ時の特徴やコツは? 
いや〜ペン入れは苦手です。私は、人より小指の根元の関節が曲がりにくいので、どうしてもペンが安定しなくて線がガタガタになっちゃうんですよね…。 
 
●カラーの時の特徴やコツは? 
カラーについてはたくさん言いたいことがあるな…。 
私の父も絵を描くのが好きなのですが、彼は色盲なので色つきの絵は描きたくても描けない。でも、 
 
「色なんか見えなくても、墨が一色あればこの世界のすべてが描ける!」 
 
っつって水墨画をやっています。 
 
↑ちなみにこういう絵です
(ごめん、テキトーに書いてた竹しかスキャナーに入らなかった…掛け軸とかだともっといい感じなんですが……) 
 
でもさあ、私、思うんですけど、 
私がどれだけ綺麗な色の絵具を使って夕日を描いたとしても、父が墨一色で描いた夕日の鮮やかさには敵わないんですよね!! 
なぜなんだ!本当に許せない!(笑) 
 
私の絵はたいがいテキトーですが、カラーの時は色を乱暴に扱うことだけはしたくない。もっと自分の選んだ色に責任を持って、もっと各々の色を生かせるように描きたいと…そしていつかはあの墨の夕日の鮮やかさを超えたいと!そう思っています。 
別にコツでも特徴でもないんですが(笑)、そういう風に思っている時は割とうまく塗れるので…。 
 
●仕上がりまでの時間はどれくらい? 
 
…私はものすごく時間がかかります…。 
というのも、「失敗してやり直し」が異常に多いんだ…。 
今、トップにある絵も、 
 
 
 
色つけ3回も失敗してるぜ!! 
「お前何回このアポロン塗らせる気だよ!!」と自分で突っ込んだ。
 
2回失敗したところで、あまりにも赤系がうまくいかないので、これはむしろ青なんじゃないか?と思い、途中まで塗ったところで
「いや、やっぱり青はない。」…この悩んで色縫ってる時間がすさまじいロスなんですよね!! 
しかも結局赤でも青でもなく黄色だった…。 
 
●BGMは何を聴きますか? 
伊集院光のラジオ!は基本です!笑うたびに線がふるえちゃうけど(笑)。 
音楽なら描きたい絵の雰囲気に合ったものをかけています。今トップにあるアポロンとアルテミスの絵なら、 
 
 ♪「Viva La Vida」-Coldplay 
 ♪「Krafty」-New Order 
 ♪「My! My! Time Flies!」-Enya 
 ♪「Jesus Was A Cross Maker」-Judee Sill 
 
あたりをよく聴いていました。 
 
●愛用画材を教えてください 
コピックのエアスプレーと、水彩絵具のホルベイン。モデリングペースト。 
 
●好きな色、よく使う色は? 
好きな色は白です。よく使う色は特にない気がする…。でも灰色は好きではないのであんまり使いたくないです。 
 
●好きなモチーフは? 
ノスタルジックなもの。懐かしさを感じるものが好きです。廃墟の白い柱に巻きついているツタとか、木漏れ日の中の風景とか、麦畑の中の一軒の家とか…「遠い昔にこの場所に立った(立ちたいと思った)ことがある」風景。 
 
●今の自分の絵に満足してますか? 
全然! 
 
●どんな絵描きを目指してますか? 
人の心を揺さぶれるような…。誰かを涙させたり、幸せにできるような絵が描ける人。 
もうちょっと具体的に言うと、物語性のある絵が描ける人。こう、一枚の絵からその未来と過去の情景が浮かぶような、そして絵の外の世界も想像させるような…。絵を見ただけで一連の詩が浮かぶような…。そんな絵が描きたい!一生に一枚でいい! 
 
私が今までそんなふうに感動した絵は、たとえば、「ソクラテスの死」とかです。 
 
ソクラテスが毒杯をあおって死ぬシーンですが、何がすごいって、この情景は絵の一番左でうつむいて座っているプラトンの回想シーンなんですよね!! 
プラトンが師ソクラテスの死んだ情景を思い出している絵。一枚の絵の中で現在と過去、生と死、静と動が調和していて本当にすごい。 
 
あと題名が出てこないんですが、ルーブル美術館が焼け落ちている絵。まわりの美術品がすべて燃えてしまっている中で、唯一残ってるアポロン(=芸術の象徴)の像を一人の画家がスケッチしている、という絵。本当に切なくも芸術の気高さが表れているような気がして感動したなあ…。 
 
●お疲れ様でした。次の項目からイメージする絵を描かれる絵師さんを当てはめてください。名前を出された人が次のバトン相手です。 
みなさん原稿等でお忙しい&すでに回っていると思うので、名前は好き勝手に上げさせていただくが、もちろん強制とかじゃあないですぜ! 
 
カッコいい→星彦さん
(主にアポロン) 
可愛い→上野
(上野絵の小物とか欲しい) 
オシャレ→そらのはなこさん
(洋服も小物もサイトも) 
個性的→小島ちゃん
(絵も文章も)、ポピヨドンさん(世界観が) 
萌え→小蝶さん
(特に優しげなハーデス様が) 
色気→紅さん
(特にギリシャ神話の面々の) 
魅惑→田中色居さん
(塗り方とか) 
 
 
今ぱっと思いつく方々はこんな感じです! 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 
拍手どうもありがとうございます!! 
そしてコメントもどうもありがとうございました!いつも大変はげみになっております!お返事は「re」のところにあります。
(〜8月19日) 
いつも返信が遅くなってすみません。「もう本当にお前はのんびり屋だな〜」と温かい目で見守って頂けると大変うれしいです!
  
 



藤村シシン
古代ギリシャ・ギリシャ神話研究家。
高校で出会ったアニメ『聖闘士星矢』がきっかけでこの道へ。東京女子大学大学院(西洋史学専攻)修了。

◆著書『古代ギリシャのリアル』(実業之日本社)。◆ NHKカルチャー講座講師。◆2020年オリンピック採火式NHK生中継内、古代ギリシャ語同時翻訳。 ◆平成28年 東京国立博物館『特別展・古代ギリシャ』公式応援サポーター。 ◆UBIソフト『アサシンクリード・オデッセイ』公式コラボ ◆古代ギリシャナイト主催。 など。

お仕事のご依頼 euermo★gmail.com
(*をアットマークに変えて送って下さい)


書籍『古代ギリシャのリアル』発売中。




★よく出てくる宿敵「黒川君」については
【黒川wiki】をご参照下さい。



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2009. 9. 30 …余談ですが、アポロンがアル....
2009. 9. 28 …話の途中ですが、【黒川から....
2009. 9. 23 【プレゼントのラッピング作業....
2009. 9. 21 【実況】今日こそアポロンを見....
2009. 9. 09 みんなの「アポロン表現」を堪....

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