藤村シシンぶろぐ


 

2009. 10. 4
      【前半:黒川誕生日の死闘!】『木の壁』を探せ!決死の横浜借景

――紀元前480年、9月。 
時はギリシャ連合軍とペルシア軍の戦争の真っただ中。 
ペルシア軍の圧倒的な戦力の前に、アテナイ(アテネ)軍の勝利は絶望的であった。「このままギリシアは征服されしまうのではないか…?」 
 
だが、そんな絶望の闇に光を射かける一つの言葉があった。それこそが
ギリシャの未来を永遠に変えたアポロンの予言!! 
 
 「ケクロプスの丘と聖なるキタイロンの狭間に抱かれる土地、 
  ことごとく敵の手に陥るとき、 
  ゼウスにより賜りし『木の壁』に寄り添え。 
  
この『木の壁』こそ、アテナよ、 
  遥かに見はるかしたまうゼウスが汝と汝の子らを救うべく授けし 
  唯一不落の砦となろう――!!」
 
 
 
――この神託から約2500年後の、今日9月! 
アテネの姉妹都市であるこの横浜で!
 
さあ、黒川さん!再び解読してもらおう、歴史上もっとも輝かしきアポロンのこの言葉の意味を!! 
今、この時、この場所で!再現してみせてくれ!アポロンの神託が指し示した奇跡を!!
 
 
さあ、今再び舞台の幕をあげよう――!!
 
 
 
【前半:黒川誕生日の死闘!】『木の壁』を探せ! 
〜決死の横浜借景〜
 
 
――9月13日、午後12時50分。横浜。 
 
 
10分ほど早く予定の場所についた私は、これまでの成り行きを思い起こしていた。 
 
そう、【9月23日の日記】のとおり、黒川を誕生日にベコベコにへこますつもりが、先手先手をとられて、逆に横浜に追い詰められてしまったことを。 
 
…しかし、同時に私は思いついていたのだ。 
「9月」、「横浜」。 
この限られた駒で、逆に黒川を追い詰める一手を。 
 
『…今回は、黒川さんの言う通りにします。 
  9月13日、1時。横浜のみなとみらい駅でお会いしましょう。』 
 
黒川『今回は僕の不戦勝ですね。』
 
 
…さあ来い。何の疑いもせずに。 
お前の魂に刻みつけてやる!敗北の二文字を…!!
 
 
…そして、ついに決戦の時がやってきた―――。 
 
 
――午後1時、横浜・みなとみらい駅。 
 
 
黒川『…もっしも〜し!?藤村さんですか?黒川ですー!今みなとみらいの駅に着きましたー!!改札口に向かってるところです!』 
 
私「……」 
 
黒川『いやぁ〜悪いですねぇ!僕の横浜観光につき合わせちゃって…、横浜は初めてなのでもうホントに楽しみで…あ、今、改札出ました〜!あれ?藤村さん、どのあたりにいます?藤村さ〜ん?』 
 
「……黒川さん。1時にみなとみらい駅で待ち合わせ、と言いましたが、あれは嘘です。」 
 
 
黒川
『……は?』 
 
「私はみなとみらい駅にはいません。
横浜のまったく別の場所にいます。」 
 
黒川『は?えっ…?…すみません、意味が分からないのですが…。というかすさまじく嫌な予感がしてきたのですが…。』 
 
その予感、見事的中します!! 
 
 
黒川さん。私とゲームをしましょう。 
 
黒川「!!?!?バカな…!!横浜に誘い出したのは僕の方ですよ!?この状況であなたに一体どんな手が残されているというんですか!?」 
 
――それを今からご覧にいれてやるわ! 
お前を敗北させる逆転の一手をな!! 
 
 
 
私「黒川さん、知ってましたか?
この横浜がアテネの姉妹都市だということ。」 
 
黒川「…!?い、いえ、知りませんでしたが…」 
 
私「でも、これは知ってるでしょ?
そのアテネで、今から約2500年前の9月に、何が起こったか。」 
 
黒川「!?…何を言っているんです…!?何なんです!?
いいから貴女の居場所を教えて下さい!今どこにいらっしゃるんですッ?!』 
 
 
…それを今からはいずり回って捜してもらうんだよ!黒川!お前にな…!! 
 
 
私「…『アテナよ、そなたがいかほど言葉を費やし、 
    その賢しき才覚を用いて嘆願しようとも、 
    ゼウスの御心を動かすことは叶わぬぞ。』」 
 
 
黒川「!?」 
 
「『されど我はここに再び汝のために、 
   鋼にも比すべき硬く破れぬ言葉を告げてとらせよう――!!』」
 
 
黒川「!!?その言葉は…!アポロンの神託…!?」 
 
私「『ケクロプスの丘と聖なるキタイロンの狭間に抱かれる土地、 
   ことごとく敵の手に陥るとき、 
   遥かに見はるかしたまうゼウスにより賜りし『木の壁』に寄り添え。 
 
   
この木の壁こそ、アテナよ、ゼウスが汝と汝の子らを救うべく授けし 
   唯一不落の砦となろう――!!』」
 
 
 
黒川
「…アポロンの『木の壁』の予言か!?紀元前480年、サラミスの海戦の時の!?待って下さい、まさか、あなた……!?」 
 
そのまさかだ!! 
 
「私は今、『木の壁』の前にいる!!この『木の壁』とは何か?さあ、それを解読してここを探し出してもらおう!古代ギリシャ人がそうしたように!!」 
 
アポロンの予言が導く『木の壁』を探し当ててみせろ! 
かの神託から約2500年後の今日9月!! 
アテネの姉妹都市であるこの横浜で!
 
そしてもう一度演じてみせろ!! 
ギリシャに勝利を与えたアポロンの予言の奇跡を!!
 
 
 
黒川
「……一体何を仕掛けてくるのかと思ったら…僕もナメられたものですね。『木の壁』が何を指しているかを僕が知らないとでも思うんですか?ちょっと待ってなさい、速攻であなたを捕まえに行きますよ!それじゃ。」 
 
 
――と言って一端電話を切る黒川。 
フッ、私こそなめられたものだ!! 
これはお前が考えるほど簡単な問題じゃあない。 
 
そう、『木の壁』が何を指しているのか…。2500年前のギリシャ人は悩みに悩んだ。 
ある者はこう言った。 
「『木の壁』とはパルテノン神殿のことを指しているに違いない。」 
というのも、かつてパルテノン神殿は木でできていたからだ。 
 
「…神託はパルテノン神殿を指している。だから我々は神殿に籠城してペルシャと戦うべきだ。」 
 
 
 
↑横浜にもこういうパルテノン神殿っぽいところはある。 
でも、私はここにはいない。 
 
そう、『木の壁』はパルテノン神殿のことじゃない。 
『木の壁』というのは……!!
 
 
 
 
プルルルル… 
――黒川からリダイアル!! 
 
黒川
「…『船』ですよね!?『木の壁』とは『船』のことだ!!アテナイ人は木の船に乗り込んで、ペルシャと戦った!!」 
 
…そう、ここまでは簡単。 
だけど、私の本当の罠はここからだ!! 
 
黒川
「『船』を探せばいい、…簡単だ、と思ったのですが……。ちょっと待って下さい!!ここは横浜!港町じゃないですか!! 
 
そこらじゅうに何百という船が停泊してるし、船のモチーフの建物、場所、イベント!!無数にある!!一体どの『船』です!!?」
 
 
 
…そう、それこそが私の謎かけの本質! 
お前にはその何千何万もの船の中から、私のいるたった一つの『船』を見つけ出してもらう!!
 
 
 
 
黒川「…そんな…ヒントは!?ヒントは無いんですか!?だって、どう考えても、アポロンの神託だけでは『船』以上の絞り込みはできない…!!」 
 
「…それは黒川さんの悪い癖です。」 
 
黒川「えっ?」 
 
私「すぐ自分の頭の中だけで答えを出そうとする。今だってきっと駅の案内板の前から動いてもいないでしょ?…だけど、答えはそんな所にはありません。黒川さんの頭の中、その案内板、そんな所をいくら探してもムダです。」 
 
黒川「じゃあ、いったいどこにヒントがあるんですか!?」 
 
「私はすでにヒントを出してあります。そしてこの横浜の町じゅうに答えはあります!何千もの船の中から、私のいるたった一つの船を導く答えが!」 
 
黒川「……!?」 
 
まずはそこから出ることだ! 
そして目に見えるすべての物を観察するんだ!! 
 
「私はアポロンに導かれし『木の壁』であなたをお待ちしております。あ、ちなみに
3時までに来ないと手遅れになるので、なるべく急いで来て下さい。それじゃ。」 
 
黒川「えッ!?ちょっと待って、『手遅れ』ってどういう…」 
 
  
――ブツッ。 
 
 
…ああ!気持ちいい〜ッ!! 
今頃あの男どうしていいか分からずにうろうろしてるだろ絶対!! 
あああ〜〜快感ッ!!快ッ感ッ!! 
ちなみに、これから行く予定の「海のエジプト展」のチケットは私が持っている。 
あいつは私の居場所を探し当てるしか道はないのだ!! 
 
「木の壁」、「船」、「3時までに来ないと手遅れ」。 
 
色んなヒントが頭をぐるぐる回ってると思うが、果たしてお前は一番重要なヒントに気づけるだろうか? 
 
そう、私が一番最初に黒川さんに与えたヒント、そして一番重要なヒントはこれなのよ。 
 
「9月13日、午後1時」!!  
  
これはなんとなく決めた待ち合わせ日時じゃない!!  
この意味に気付けば!私のいるこの場所がどこだかが分かる!
  
 
すなわち!横浜の街を少し歩けば、いたるところにこの文字が掲げてあるはずだ!!
 
 
 
 
「日本丸の帆を広げる日・9月13日。 
広げる時間:10:30〜11:30。 たたむ時間:15:00〜16:00」
 
 
日本丸は「日本丸メモリアルパーク」で公開展示されてる昔の帆船。 
そして今日、お昼3時までの3時間だけは、普段閉じられているこの船の帆が広げられる! 
横浜には無数の船がある、しかし、古代ギリシャの船のように帆を持っている船はわずかしかない! 
 
そしてその中で今日、帆が広げられるのはこの一隻しかないの!!
 
 
 
 
ああ、どうか黒川さん、思い出して!! 
アテナイの人々は町にひきこもって籠城したんじゃない! 
街を出て勇敢に海で戦ったんだ!風に帆を立てて!!
 
 
私はここで!ゼウスが与えし『木の壁』、日本丸の前で!黒川、お前を待つ!! 
 
さあ、早く来ないと手遅れになるぞ!! 
3時が来て船の帆が閉じられてしまったら!一番重要なヒントを失ってしまうわよ!!
 
 
「…1時14分…。」 
 
この2時間弱……さあ勝負だ、黒川さん!!導き出してみろ!私のいるこの『船』を!! 
 
 
――後半へ続く! 
 
  
 



藤村シシン
古代ギリシャ・ギリシャ神話研究家。
高校で出会ったアニメ『聖闘士星矢』がきっかけでこの道へ。東京女子大学大学院(西洋史学専攻)修了。

◆著書『古代ギリシャのリアル』(実業之日本社)。◆ NHKカルチャー講座講師。◆2020年オリンピック採火式NHK生中継内、古代ギリシャ語同時翻訳。 ◆平成28年 東京国立博物館『特別展・古代ギリシャ』公式応援サポーター。 ◆UBIソフト『アサシンクリード・オデッセイ』公式コラボ ◆古代ギリシャナイト主催。 など。

お仕事のご依頼 euermo★gmail.com
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書籍『古代ギリシャのリアル』発売中。




★よく出てくる宿敵「黒川君」については
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