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2008. 10. 9 史上最大の危ないアポロン大作戦【完結編】 〜後半:私が愛したアポロン〜
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【この記事は10月8日の記事の続きです。】 →つづき と、ここで再び山田先輩から電話が。 山田『もしもしっ!?もしもし藤村ッ!?お前っ一体黒川に何されたっ!?どうして二人で雑踏の中、踊り狂ってるんだッ!?』 もう、山田先輩からしたら、 5分前まで『黒川のキンタマ握り潰す!』ってトーンだった私が、突然、 私「アポロン様がいらっしゃった!!アポロン様がいらっしゃったぁーっ!!山田先輩っ!アポロンなんです!!見えるでしょ!?私の前にいるのはアポロンなんですっ!!」 山田『正気に戻れぇえ〜〜ッ!!お前の目の前にいるその干からびたセミの抜け殻みたいな男はどう見ても黒川だ!!アポロンじゃないっ!!』 そうじゃないっ!そうじゃないのよっ! 私のアポロンは…!ああっ、私の愛するアポロンは…! 美しい言葉で人間に真理を問いかける存在よ! 激しい一瞬の光を人の心に焼き付ける存在よっ!! 黒川は今、それをやったのっ! この渋谷の雑踏の中で!たった5分間の間に!! アポロンの最も愛すべきその本質を…私に体現してみせたのよっ!! こんなこと誰にも出来ないよ!! ああっ黒川…!この一瞬!確かにお前はアポロンだった!! 私の愛するアポロンだったわ…!! 私「いい夢をありがとう、アポロン…!そして黒川さん…!」 黒川「いえ…すみません。こんなのは本当にたまたま出来ただけです…!僕は、ただこういう言葉遊びが好きなだけで…。それに、皆さんは忘れていると思いますが、僕の専門は黒魔術や神秘学というよりもギリシャ哲学ですし。」 え?そうだっけ? 黒川「…だから、以前藤村さんが、『哲学者ソクラテスのアポロンが好き』と仰った時、すぐにこのアポロンの事を言っているとピンと来たんです!」 私「……」 黒川「ギリシャ哲学をやってる僕としても、そのアポロンは一番忘れがたい存在です!アポロンの謎かけから、哲学は始まったんですから!だから僕も、一度でいいから、このシーンをやってみたい!そう思ったんです!…勝手なことをして本当に申し訳ありません!」 ……黒川…!! お前さあ!「いつも大学ではハブられております」って言ってたけどさあ!! 「二人組作って〜」っていうシーンではいつも一人であまってるって言ってたけどさあ!! お前をハブってる連中にこんなことが出来るのかよ!! こんな素晴らしい事がそいつらに出来るのかよっ! 私、嫌いよっ!お前のことをハブる連中はみんな嫌いっ!! 私「――……黒川さん。」 黒川「はい?」 私「…次のアポロンの誕生日に気をつけろ。私は必ず復讐するからな。」 黒川「…え!?ア、アポロンの誕生日…!?」 ――ソクラテスは『アポロンを裏切るくらいなら死を選ぶ』と言って死刑になった。 だけど、その判決が出たときは、ちょうどアポロンの誕生日が間近だったのよ。 アテナイでは、アポロンの誕生日の一ヶ月前からは、誰であろうとも死刑を執行することは許されない。 だから、ソクラテスの死刑は一ヶ月間伸ばされたのよ! 私「だから、アポロンの誕生日を忘れるな!!その日お前が朝起きて部屋のドアを開けた瞬間!500人の裁判員が座ってっからな!そんでお前の裁判始まるからね!!」 ソクラテスの裁判みたいに! 私「私が『お前はアポロンを信じていない!』って言うから!!」 黒川「そしたら僕は言いますよ!『私はアポロンを信じている!その証明として、私はアポロン自身を証人に立てる!』」 私「『神を証人にするとは、おこがましいにもほどがある!』つってあなたに死刑判決を下したら!」 黒川「――『ハーデスの法廷で、アイアコスやミーノスやラダマンティスやトリプトレモスが…必ずや我々の上に正しい判決を下すであろう!』」 私「ウフフフ…!」 黒川「アハハハ…!!」 山田「――お前ら…なんで笑いながらグルングルン回ってるのよ…?」 振り向くと、スタバからこっちに来た山田と西野が、 頭からでっけぇハテナ出したまま突っ立っていました。 西野「…いったいぜんたい、どこがアポロンなんだ…???俺にはいつもどおりの黒川にしか見えんぞ…」 いいえ!!違います、彼は!ああっ、彼は、
アポリュオーン・エスティ・ソス。 アポローン・エスティ・ソス。 私を殺す者…私のアポロン。 ……… ――とまあ…今考えれば、黒川さんからただ珍奇な文章が書かれたハンカチをもらっただけのような気がしますが…あの時は本当に感動したのよ!なんかすごく内輪の話なので、見てくださっている人には伝わりにくくて申し訳ありませんが…! なんていうか、恥ずかしい話… 私、このところアポロンの事で落ち込んでいまして。 黒川さんに、「今何してます〜?」って電話もらった時も、 「今は…部屋にあるアポロンの像の…オチンチンを見ながら泣いてます。」 ってことがあったりして。 だから、なんだかんだ言って黒川さんはアポロンを使って私を励ましてくれたんだなと思います。 本当にありがとう黒川さん!! ちなみに、「彼はあなたを殺す者」から、一字とるだけで「アポロンはあなたのもの」になるっていうのは…これはもう、本当に本当にすごいのよ! ギリシャ語の性質を完全に自分のものにしてないと組めない文章なのよっ!! 「殺す者」っていう普通名詞から、「アポロン」っていう固有名詞に代わることで、「あなたの」が独立して「あなたのもの」になるし!主語が「彼」から「アポロン」に代わるしさっ!! 本当にすごい!こんなの世界中で黒川くらいにしかできないんじゃないの!? っていうカンジで、才能の無駄使いもいいとこだと思います。 しかも、「アポロンに愛される」って、すなわち「アポロンに殺される」ってことだしな…。深い!すごい深いよ、この言葉!さっすがギリシャ哲学の人間だよ!! あと、ハンカチ自体も…なんか一枚の布切れから作って、レースとかも自分で縫いつけたみたいです。本当に才能の無駄使いです!! ああ、黒川さん…!! 大学で「二人組作って〜」ってなった時は、いつも一人で余ってるって言ってたけど、 黒川「人数は偶数のはずなのに、なぜかいつも僕は余る。」 っつってたけど!! 一人で余って落ち込んだ時は、私が絶対行く!! 人数が奇数だろうが、素数だろうが虚数だろうが、絶対に私がお前を余らせねえよ!! ――そんなわけで、ここまで読んでくださった方、どうもありがとうございます。そして、どうかこれだけは分かってほしい。実際の黒川はもっとすばらしかった。私の文章力不足で再現しきれずに本当に残念です。 ちなみに、この後、時間あったから四人で「ミレイ展」に行ったりもしたのですが、その話はまた後日、機会があれば。 あ、「絶対やれる!ギリシャ神話」、撮っておいたやつ今から見ます〜!(ネタバレとかお心遣い下さったKさん、どうもありがとうございます!私、みなさんの感想読んでから見たりするのも好きなので、ネタバレとかのご心配は大丈夫ですよっ!お心遣いありがとうございます!) 拍手ありがとうございます!お返事は次回の日記に書きます!
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藤村シシン古代ギリシャ・ギリシャ神話研究家。 高校で出会ったアニメ『聖闘士星矢』がきっかけでこの道へ。東京女子大学大学院(西洋史学専攻)修了。
◆著書『古代ギリシャのリアル』(実業之日本社)。◆ NHKカルチャー講座講師。◆2020年オリンピック採火式NHK生中継内、古代ギリシャ語同時翻訳。 ◆平成28年 東京国立博物館『特別展・古代ギリシャ』公式応援サポーター。 ◆UBIソフト『アサシンクリード・オデッセイ』公式コラボ ◆古代ギリシャナイト主催。 など。
お仕事のご依頼: euermo★gmail.com (*をアットマークに変えて送って下さい)
書籍『古代ギリシャのリアル』発売中。
★よく出てくる宿敵「黒川君」については →【黒川wiki】をご参照下さい。
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